SDV (ソフトウェア・ディファインド・ビークル) では、開発チームは、継続的なソフトウェアのリリース、ソフトウェア変更のリードタイム短縮、展開失敗の最小化などの新しい機能を構築する必要があります。同時に、プラットフォーム チームは、車両コンピューターとゾーンコントローラーのための新しいソフトウェア開発環境の作成、継続的インテグレーション/継続的デリバリー (CI/CD) システムの設定、およびシステム開発者とソフトウェア開発者による共同作業の促進を行う必要があります。MATLAB、Simulink、および Polyspace を使用すると、これらのチームは早期の妥当性確認、ソフトウェアの再利用、ツールの統合により自動車の要件を満たしながら、製品の提供を高速化できます。これらの製品の使用により、開発およびプラットフォーム チームは以下を行うことができます。

  • ターゲット プラットフォームに依存しないソフトウェア機能を設計し、AUTOSAR などの信号ベースおよびサービス指向のミドルウェアに展開
  • バーチャル車両とバーチャル ECU のシミュレーションを使用して、早期に継続的な妥当性確認を実施
  • 機能安全 (ISO® 26262)、品質 (Automotive SPICE®、A-SPICE)、およびセキュリティ目標の達成
  • CI/CD および DevOps 手法を使用して、ソフトウェアの統合とテストを自動化
  • 共同作業、シミュレーション、およびフリートデータ処理にクラウドを活用

信号ベースおよびサービス指向アプリケーションの設計、シミュレーション、展開

SDV は、信号ベース アプリケーションとサービス指向アプリケーションの両方を、車両コンピューターとゾーンコントローラーを備えた新しい電気/電子 (EE) アーキテクチャに統合します。このため、開発者は新しいサービス指向アーキテクチャ (SOA) と従来の信号ベースアーキテクチャをターゲットにする必要があります。

開発者は SOA を使用して、実行時に動的に検出、パブリッシュ、サブスクライブ、および再構成される柔軟性の高いモジュラーサービスを構築できます。これにより、機能レベルでのソフトウェア更新が可能になります。SOA は、AUTOSARDDS、および ROS などの業界標準や社内のフレームワークに広く組み込まれています。Simulink および System Composer を使用すると、以下を行うことができます。

  • AUTOSAR Classic と AUTOSAR Adaptive など、信号ベースアーキテクチャおよびサービス指向アーキテクチャのためのソフトウェア アプリケーションを作成
  • 商用または社内のミドルウェアを使用し、これらのソフトウェア アプリケーションを統合
  • アプリケーション ソフトウェアのコンポーネントとサービスをモデル化およびシミュレーション
  • これらのソフトウェア アプリケーションの量産向け C/C++ コードを自動生成

バーチャル車両シミュレーションによるシフトレフトのソフトウェア統合

OTA (over-the-air) ソフトウェア アップデートが頻繁に行われると、プロトタイプ ハードウェアを用いた新しいソフトウェア構成のテストは実行不可能になります。また、ソフトウェアリリースのリードタイム短縮のために、統合テストを自動化する必要もあります。ソフトウェア統合を、継続的インテグレーション パイプラインに統合された、バーチャル車両シミュレーションによるモデルインザループ (MIL) テストとソフトウェアインザループ (SIL) テストに移行することで、両方の課題に対処できます。Simulink、バーチャル ビークル コンポーザー、および Simulink Compiler を使用すると、以下を行うことができます。

  • バーチャル車両モデルのアセンブリを自動化
  • Simulink でモデルベースとコードベースのコンポーネントを含むバーチャル電子コントロールユニット (ECU) のシミュレーションを構築し、量産基本ソフトウェア (BSW) およびプロセッサ シミュレーション用のサードパーティツールに統合
  • バーチャル車両モデルとバーチャル ECU モデルを継続的インテグレーション パイプラインに展開

品質、安全性、セキュリティにおける目標の達成

SDV のソフトウェア アプリケーションは、安全性およびセキュリティの規格への準拠を確保しながら、品質目標を満たす必要があります。モデルベースデザイン (MBD、モデルベース開発) のリファレンス ワークフローにおいて MATLAB および Simulink を使用すると、開発チームは ASPICE プロセス標準、ISO 26262 機能安全規格、および UN-ECE WP.29 を含めた ISO 21434 サイバーセキュリティ標準により課されている目標を達成できます。モデル検証のための MATLAB 製品、Embedded Coder、および Polyspace コード検証は、ASIL A-D を定義する ISO 26262 に基づいて TÜV SÜD により事前に適格性が確認されています。これらの製品を使用すると、開発者は以下を行うことができます。

  • アーキテクチャ、設計、テスト、コードへの要件のトレース
  • ソフトウェアに重大なランタイムエラーがないことの証明
  • A-SPICE および ISO 26262 などの品質基準や安全規格を満たすためのモデルおよびコードの検証を自動化
  • モデルやコードの準拠確認および品質測定
  • CWE™、CERT®-C、MISRA™、ISO 21434 などの規格に照らして脆弱性と準拠性を確認することにより、ソフトウェア セキュリティを強化
品質、安全性、およびセキュリティのワークフロー。

プロセスの自動化およびデスクトップ コンピューターからクラウドへのスケーリング

自動化の大規模な実装は、ソフトウェア開発における作業量削減の鍵となります。CI/CD などの開発手法により、開発者に自動化がもたらされると同時に、再現性のあるプロセスを通じて信頼性も確保されます。さらに、クラウド技術では、ソフトウェアの作成とシミュレーションの高速化、大規模なデータセットの処理、および分散したソフトウェアチームの共同作業の促進によりスケーリングが可能になります。MATLAB と Simulink を使用すると、以下を行うことができます。

  • Jenkins®、GitLab® CI/CD, GitHub Actions、および Azure® Pipelines などの CI/CD システムとの統合
  • AWS® S3 や Azure Blob などのシステムにおけるクラウドベースのデータ処理、および必要に応じたスケーリング
  • MATLAB Parallel Server によるクラスターやクラウドへのシミュレーションのスケーリング
  • GPU を使用したニューラル ネットワークの学習の高速化
  • Git および SVN ソース管理を使用した共同開発作業

製品

SDV (ソフトウェア・ディファインド・ビークル)アプリケーションの開発で使用する製品について詳しくご紹介します。