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条件監視と予知保全のためのデータの前処理

データの前処理は、予知保全アルゴリズム開発のワークフローの第 2 段階です。

多くの場合、データをクリーニングして条件インジケーターの抽出が可能な形式に変換するには、データの前処理が必要です。データの前処理には以下が含まれます。

  • 外れ値および欠損値の削除、オフセットの削除、およびトレンド除去

  • フィルター処理や平滑化などのノイズ削減

  • 時間領域と周波数領域間のデータの変換

  • 短時間フーリエ変換や次数領域への変換などのより高度な信号処理

データの前処理は、条件監視と予知保全のためのデータ アンサンブルで説明されているように、Predictive Maintenance Toolbox™ アンサンブル データ ストアで管理する測定データやシミュレーション データの配列または table に対して実行できます。一般に、データの前処理は、システム性能の劣化とともに予測可能な形で変化する量である条件インジケーターの、有望な候補を特定するための解析よりも前に行います (監視、故障検出、予測のための条件インジケーターを参照)。前処理の手順と条件インジケーターの特定手順は一部重複することがあります。しかし通常は、前処理はクリーンな信号や変換された信号につながり、これをさらに解析して信号情報を条件インジケーターに集約します。

対象のマシンおよびデータの種類について理解することで、使用する前処理の方法を決定しやすくなります。たとえば、ノイズを含む振動データをフィルター処理する場合、有用な特徴を示す可能性の最も高い周波数範囲がわかっていると、前処理の手法の選択に役立ちます。同様に、ギアボックスの振動データを次数領域に変換すると便利なことがあります。後者は、回転速度が経時的に変化する場合の回転機に使用されます。ただし、この同じ前処理は、剛体である車両のシャーシからの振動データには役立ちません。

基本的な前処理

MATLAB® には、配列や table 内のデータの基本的な前処理に便利な関数が数多く用意されています。これには以下に用いる関数が含まれます。

  • データのクリーニング (fillmissingfilloutliers など)。データのクリーニングはさまざまな手法を使用して不良なデータや欠損データの検索、削除、置換を行います。

  • データの平滑化 (smoothdatamovmean など)。平滑化を使用してデータ内の望ましくないノイズや大きい分散を排除します。

  • データのトレンド除去 (detrend など)。データからトレンドを取り除くことにより、トレンド周りのデータ内の変動に解析の焦点を当てることができます。トレンドが意味をもつこともありますが、体系的な効果に起因することもあり、解析の種類によってはトレンドを取り除くことでより良い洞察が得られます。オフセットの削除は、もう 1 つの類似タイプの前処理です。

  • データのスケーリングまたは正規化 (rescale など)。スケーリングはデータの範囲を変更し、たとえば、さまざまな単位のデータを扱う場合などに便利なことがあります。

よく使われるもう 1 つのタイプの前処理は、信号の有用な部分を抽出して他の部分を破棄することです。たとえば、信号から何らかの起動過渡の一部である最初の 5 秒分を破棄し、定常状態動作のデータのみを保持する場合があります。この種類の前処理を実行する例は、Simulink を使用した故障データの生成を参照してください。

MATLAB の基本的な前処理コマンドの詳細については、データの前処理 (MATLAB)を参照してください。

フィルター処理

フィルター処理は信号からノイズや不要な成分を取り除くもう 1 つの方法です。フィルター処理は、データのどの周波数範囲で、条件監視や予測に役立つ特徴が最も現れやすいのかわかっている場合に便利です。基本的な MATLAB 関数 filter を使用して、伝達関数をもつ信号をフィター処理することができます。designfilt を使って、filter で使用するフィルターを、パスバンド、ハイパス、ローパス、および他の一般的なフィルター形式で生成できます。これら関数の使用の詳細については、デジタル フィルターとアナログ フィルター (Signal Processing Toolbox)を参照してください。

Wavelet Toolbox™ ライセンスがある場合、ウェーブレット ツールを使ってさらに複雑なフィルター方法を利用できます。たとえば、データをサブバンドに分割し、各サブバンドのデータを個別に処理して、これらを再度組み合わせて元の信号の変更版を作成することができます。このようなフィルターの詳細については、フィルター バンク (Wavelet Toolbox)を参照してください。また、Signal Processing Toolbox™ の関数 emd を使用して、混合信号を分解し、異なる時間-周波数動作をもつ成分に分離することも可能です。

時間領域の前処理

Predictive Maintenance Toolbox および Signal Processing Toolbox には、機械システムの振動を時間領域で調査し特徴付けることのできる関数が用意されています。これらの関数を使用して、条件インジケーターの前処理または抽出を行います。以下に例を示します。

  • tsa — 時間同期平均化でノイズをコヒーレントに取り除き、包絡線スペクトルを使用して摩損を解析します。Simulink を使用した故障データの生成の例では、時間同期平均化を使用して振動データを前処理します。

  • tsadifference — 時間同期平均化 (TSA) 信号から、通常の信号、1 次側波帯、および他の特定の側波帯をその高調波とともに取り除きます。

  • tsaregular — 残差信号と特定の側波帯を取り除くことにより、TSA 信号から既知の信号を分離します。

  • tsaresidual — 既知の信号成分とその高調波を取り除くことにより、TSA 信号から残差信号を分離します。

  • ordertrack — 次数解析を使用して、回転機で発生するスペクトル成分の解析と可視化を行います。次数とその時間領域波形を追跡して抽出します。

  • rpmtrack — rpm を時間の関数として計算することにより、振動信号から rpm プロファイルを追跡して抽出します。

  • envspectrum — 包絡線スペクトルを計算します。包絡線スペクトルは、信号から高周波数の正弦波成分を取り除き、低周波数の変調に焦点を当てます。転動体ベアリングの故障診断の例では、このような前処理に包絡線スペクトルを使用します。

上記および関連する関数の詳細については、振動解析 (Signal Processing Toolbox)を参照してください。

周波数領域 (スぺクトル) の前処理

振動や回転するシステムでは、共振周波数の変化や新たな振動成分の存在といった周波数領域動作の変化によって故障の発生が示されます。Signal Processing Toolbox には、そのようなスペクトル動作を解析するための関数が数多く用意されています。多くの場合、これらは、条件インジケーターを抽出するための追加解析に先駆ける前処理として有用です。こうした関数には以下が含まれます。

  • pspectrum — 信号のパワー スペクトル、時間-周波数パワー スペクトル、またはパワー スペクトログラムを計算します。スペクトログラムには、強度の分布が時間とともにどう変化するかについての情報が含まれます。シミュレーション データを使用した複数クラス故障検出の例では、pspectrum を使用してデータの前処理を実行します。

  • envspectrum — 包絡線スペクトルを計算します。繰り返されるインパルスやパターンを引き起こす故障は、機械の振動信号に振幅の変調を与えます。包絡線スペクトルは、信号から高周波数の正弦波成分を取り除き、低周波数の変調に焦点を当てます。転動体ベアリングの故障診断の例では、このような前処理に包絡線スペクトルを使用します。

  • orderspectrum — 平均次数振幅スペクトルを計算します。

  • modalfrf — 信号の周波数応答関数を推定します。

上記および関連する関数の詳細については、振動解析 (Signal Processing Toolbox)を参照してください。

時間-周波数の前処理

Signal Processing Toolbox には、その周波数領域動作が時間とともに変化するシステムを解析するための関数が含まれています。このような解析は "時間-周波数" 解析と呼ばれ、システム性能の変化に関連する過渡信号や変化する信号の解析と検出に役立ちます。このような関数には、以下が含まれます。

  • spectrogram — 短時間フーリエ変換を使用してスペクトログラムを計算します。スペクトログラムは、信号の時間的にローカライズされた周波数成分と、その経時的変化を記述します。振動信号を使用した条件の監視と予知の例では spectrogram を使用して信号を前処理し、条件インジケーターの候補の特定に役立てます。

  • hht — 信号のヒルベルト スペクトルを計算します。ヒルベルト スペクトルは、スペクトル成分が時間とともに変化する信号の混合で構成される信号の解析に役立ちます。この関数は混合信号内の各成分のスペクトルを計算します。成分は経験的モード分解により判定されます。

  • emd — 信号の経験的モード分解を計算します。この分解は、ヒルベルト スペクトル内で解析された信号の混合を記述するもので、混合信号を分離して、システム性能の劣化につれて時間-周波数動作が変化する成分を抽出するのに役立ちます。emd を使用して hht の入力を生成できます。

  • kurtogram — 時間的にローカライズされたスペクトル尖度を計算します。これは、周波数領域で定常ガウス信号の動作を非定常または非ガウスの動作から区別することにより、信号を特徴付けます。包絡線解析のような他のツール用の前処理として、スペクトル尖度は最適な帯域などの重要な入力を提供できます (pkurtosis を参照)。転動体ベアリングの故障診断の例では、条件インジケーターの前処理と抽出のためにスペクトル尖度を使用します。

上記および関連する関数の詳細については、時間-周波数解析 (Signal Processing Toolbox)を参照してください。

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