Main Content

Raised Cosine Transmit Filter

レイズド コサイン FIR フィルターを使用した信号の内挿によるパルス整形の適用

  • Raised Cosine Transmit Filter block

ライブラリ:
Communications Toolbox / Comm Filters
Communications Toolbox HDL Support / Comm Filters

説明

Raised Cosine Transmit Filter ブロックは、レイズド コサイン有限インパルス応答 (FIR) フィルターを使用して、入力信号を内挿することによってパルス整形を適用します。この FIR フィルターは、([Filter span in symbols]×[Output samples per symbol] + 1) 個のタップ係数をもちます。ブロックのアイコンはフィルターのインパルス応答を示します。詳細については、アルゴリズムを参照してください。

すべて展開する

Raised Cosine Transmit Filter ブロックと Raised Cosine Receive Filter ブロックは、レイズド コサイン (RC) フィルター処理のために設計されています。各ブロックは、ルート レイズド コサイン (RRC) フィルターまたはレイズド コサイン フィルターを信号に適用できます。フィルターのロールオフ係数とスパンは可変です。

Raised Cosine Transmit Filter ブロックと Raised Cosine Receive Filter ブロックは、それぞれ送信側および受信側で使用するためにカスタマイズされています。送信フィルターは出力信号をアップサンプリング (内挿) します。受信フィルターは、入力信号がアップサンプリングされていることを想定し、構成済みのブロックの設定に基づいて、出力信号をダウンサンプリング (間引き) します。

群遅延で説明されているように、Raised Cosine Transmit Filter ブロックと Raised Cosine Receiver Filter ブロックの各々で伝播遅延が発生します。

doc_rrcfiltercompare.slx モデルは、一対のルート レイズド コサイン フィルターを使用して、送信側と受信側の間でフィルター処理を均等に分ける方法を示しています。互いに対応するルート レイズド コサイン フィルターのペアを使用することは、単一の通常のレイズド コサイン フィルターを使用することと等価です。フィルターは同じ区間を共有し、シンボルごとに同じ数のサンプルを使用しますが、上のパスの 2 つのフィルター ブロックでは平方根の形状になり、下のパスの単一のフィルター ブロックでは標準的な形状になります。

モデルを実行し、アイ ダイアグラムおよびコンスタレーション ダイアグラムを観察します。2 つの方式の性能はほぼ同じです。実際のルート レイズド コサイン フィルターはインパルス応答が制限されているため、2 つのカスケードに結合されているルート レイズド コサイン フィルターの応答と 1 つのレイズド コサイン フィルターの応答の間には、わずかな違いがあります。

QPSK 変調信号に対し、ルート レイズド コサイン フィルター処理を適用します。フィルター処理された信号の分散を計算します。フィルター処理前後の信号をプロットします。

cm_tx_rrc_filter モデルでは、バイナリが QPSK 変調された後、オーバーサンプル レートが 8、ロールオフ係数が 0.2 に設定されたルート レイズド コサイン フィルターでフィルター処理されます。

信号レベルは、オーバーサンプリング レート分の 1 だけ減少します。QPSK 変調信号の電力は 1 であり、送信 RRC フィルター処理によって 8 倍のレートで信号がオーバーサンプリングされるため、送信フィルター処理の後ろにあるVarianceブロックによって計算される分散レベルは約 1/8 になります。

Computed variance = 0.1248

送信/受信ルート レイズド コサイン (RRC) フィルター処理を入力信号に適用することにより、レイズド コサイン整合フィルター処理を変調後の信号に適用します。入力信号電力を調整して正しい SNR を計算する方法、および遅延を調整して正しい誤り率を計算する方法を示します。

cm_tx_rx_rrc_filter モデルは、Random Integer Generatorブロックを使用して、ランダムな整数から成るフレームを出力します。このデータ フレームは、QPSK Modulator Basebandブロック、Raised Cosine Transmit FilterAWGN Channelブロック、Raised Cosine Receive Filter、およびQPSK Demodulator Basebandブロックに渡されます。QPSK 復調の実行後、各Error Rate Calculationブロックは、送受信フィルター処理による受信信号の遅延を考慮した場合とそうでない場合について、ビット エラー レートを計算します。

このモデルは、コールバック関数 PreLoadFcn を使用して、ブロック パラメーターを構成する変数を初期化します。詳細については、モデル コールバック (Simulink)を参照してください。このモデルでは、フィルターのオーバーサンプリングに基づいて AWGN の入力信号電力レベルを設定するパラメーター、およびフィルターの遅延に基づいて誤り率計算パスの遅延を設定するパラメーターの構成を示します。

QPSK 変調信号の電力は 1 ですが、送信 RRC フィルター処理による信号のオーバーサンプリングによって、オーバーサンプル レートの分だけ信号レベルが低下します。正しいノイズ レベルを適用するには、フィルターによるオーバーサンプリングによって低下した信号レベルを考慮して、AWGN ブロックで入力信号電力を調整しなければなりません。Varianceブロックによって計算される分散は、オーバーサンプル レートが 1/8 のときに約 1 となります。

 Computed variance = 0.1250

Time Scopeは、"受信" 信号、"遅延がある" 信号、"遅延がない" 信号をプロットします。"遅延がある" 信号は "受信" 信号と位置が揃っていますが、"遅延がない" 信号は 10 サンプルだけシフトされています。誤り率の計算は、フィルターによる遅延を考慮した場合に正しい BER を示しています。

 Delay not accounted for: BER = 0.75
 Delay accounted for:     BER = 0.00452

拡張例

端子

入力

すべて展開する

入力信号。スカラー、列ベクトル、または KiN 列の行列として指定します。Ki は信号チャネルあたりの入力サンプル数、N は信号チャネルの数です。

データ型: double | single | fixed point

出力

すべて展開する

出力信号。スカラー、列ベクトルまたは行列として返されます。このブロックは、時間の経過により各チャネルをフィルター処理し、KoN 列の出力行列を生成します。出力信号のデータ型は、入力信号のデータ型と同じです。

  • Ko = Ki×L

  • N は信号チャネルの数。

  • Ki は信号チャネルあたりの入力サンプル数。

  • L[Output samples per symbol] パラメーターで指定する値。

データ型: double | single | fixed point

パラメーター

すべて展開する

ブロック パラメーターを対話的に編集するには、プロパティ インスペクターを使用します。Simulink® ツールストリップの [シミュレーション] タブの [準備] ギャラリーで [プロパティ インスペクター] を選択します。

メイン

フィルターの形状。[平方根] または [標準] として指定します。詳細については、フィルター特性を参照してください。

フィルターのロールオフ係数。範囲が [0, 1] のスカラーとして指定します。

シンボル内のフィルター スパン。正の偶数として指定します。このブロックは、理想的なレイズド コサイン フィルターの無限インパルス応答の長さを、このパラメーターの値と等しい長さをもつ FIR に合わせて切り捨てます。

シンボルあたりの出力サンプル数。1 より大きい整数値として指定します。レイズド コサイン フィルターのタップ数は、このパラメーターの値と [Filter span in symbols] パラメーターの値を乗算した値と同じです。

線形フィルター ゲイン。正のスカラーとして指定します。このブロックは、指定した線形フィルター ゲインの値により、正規化されたフィルター係数をスケーリングします。

入力処理の制御。以下のいずれかのオプションを指定します。

  • チャネルとしての列 (フレーム ベース) — ブロックは入力の各列を別々のチャネルとして扱います。

  • チャネルとしての要素 (サンプル ベース) — ブロックは入力の各要素を別々のチャネルとして扱います。

入力信号のアップサンプリングとフィルター処理を行うためのブロック処理レート。以下のいずれかのオプションとして指定します。

  • シングルレート処理を適用 — このオプションを選択すると、ブロックは入力サンプル レートを維持し、出力フレーム サイズを N 倍に増やすことで信号を処理します。

  • [Allow multirate processing] — このオプションを選択すると、ブロックは出力サンプル レートが入力サンプル レートより N 倍速くなるよう信号を処理します。

依存関係

[シングルレート処理を適用] を使用するには、[入力処理][チャネルとしての列 (フレーム ベース)] に設定しなければなりません。

[Coefficient variable name] パラメーターで指定した MATLAB® ワークスペース変数としてフィルター係数を保存するには、このパラメーターを選択します。

MATLAB ワークスペースで作成する係数変数の名前。

依存関係

このパラメーターは、[Export filter coefficients to workspace] を選択すると表示されます。

レイズド コサイン フィルター応答を解析するには、[フィルター応答の表示] ボタンをクリックします。MATLAB でフィルターの可視化ウィンドウが開きます。ブロック マスク パラメーターの設定を変更する場合は、このボタンを再度クリックしてウィンドウの新しいインスタンスを開き、新しいフィルター特性を表示します。前のフィルター可視化ウィンドウは開いたままになり、前のマスク設定が表示されます。モデルを閉じてもフィルター可視化ウィンドウのインスタンスは開いたままになります。

データ型

固定小数点演算の丸めモードを選択します。固定小数点演算の結果を、データ型で表現できる値に正確にマッピングできない場合、このブロックは丸めモードを使用します。フィルターの係数は、このパラメーターには従いません。これらは常に [Nearest] に丸められます。詳細については、丸めモードまたは丸めモード: 最も簡潔 (Fixed-Point Designer)を参照してください。

固定小数点演算のオーバーフロー モードを選択します。フィルターの係数は、このパラメーターには従いません。これらは常に飽和します。

フィルター係数 (分子と分母) の語長と小数部の長さを指定します。

このブロックは FIR Interpolation ブロックを含むサブシステムです。このブロックの係数のデータ型を使用する方法を示す図については、Discrete FIR Filter (Simulink) ブロックのフィルター構造図を参照してください。

[継承: 入力と同じ語長] を選択すると、フィルターの係数の語長はブロックへの入力の語長と一致します。このモードでは、係数の小数部の長さは 2 進小数点のみのスケーリングに自動的に設定されます。このスケーリングは、与えられた係数の値と語長で最高の精度になります。

フィルター係数は [丸めモード] パラメーターおよび [整数オーバーフローで飽和] パラメーターには従わず、常に飽和して [最も近い正の整数方向] に丸められます。

データ型の指定に関する詳細については、データ型アシスタントを参照してください。

乗算出力の語長と小数部の長さを指定します。このブロックの乗算出力のデータ型を使用する方法を示す図については、Discrete FIR Filter (Simulink) ブロックおよび乗算のデータ型のフィルター構造図を参照してください。

  • [内部ルールによる継承] を選択すると、ブロックは内部ルールに基づきデータ型を継承します。このルールの詳細については、内部ルールによる継承を参照してください。

  • [継承: 入力と同じ] を選択すると、これらの特性はブロックへの入力の特性と一致します。

データ型の指定に関する詳細については、データ型アシスタントを参照してください。

アキュムレータの語長と小数部の長さを指定します。このブロックのアキュムレータのデータ型を使用する方法を示す図については、Discrete FIR Filter (Simulink) ブロックおよび乗算のデータ型のフィルター構造図を参照してください。

  • [継承: 内部ルールによる継承] を選択すると、ブロックは内部ルールに基づきデータ型を継承します。このルールの詳細については、内部ルールによる継承を参照してください。

  • [継承: 入力と同じ] を選択すると、これらの特性はブロックへの入力の特性と一致します。

  • [継承: 乗算出力と同じ] を選択すると、これらの特性は乗算出力の特性と一致します。

データ型の指定に関する詳細については、データ型アシスタントを参照してください。

出力の語長と小数部の長さを指定します。

  • [継承: 入力と同じ] を選択すると、これらの特性はブロックへの入力の特性と一致します。

  • [継承: アキュムレータと同じ] を選択すると、これらの特性はアキュムレータの特性と一致します。

  • [継承: 乗算出力と同じ] を選択すると、これらの特性は乗算出力の特性と一致します。

データ型の指定に関する詳細については、データ型アシスタントを参照してください。

ブロック ダイアログ ボックスで指定するデータ型が固定小数点ツールによってオーバーライドされないようにするには、このパラメーターを選択します。詳細については、固定小数点ツール (Fixed-Point Designer)を参照してください。

ブロックの特性

データ型

double | fixed pointa | single

多次元信号

いいえ

可変サイズの信号

はい

a 固定小数点出力は符号付きでなければなりません。

詳細

すべて展開する

ヒント

MATLAB ワークスペースへのフィルター係数のエクスポート

  • このブロックで設計するフィルターの係数を確認または操作するには、[Export filter coefficients to workspace] を選択します。[Coefficient variable name] パラメーターを、ブロックが MATLAB ワークスペースに作成する変数の名前に設定します。シミュレーションを実行すると、ブロックが変数を作成し、その変数が既にある場合は、以前の内容を上書きします。

アルゴリズム

すべて展開する

レイズド コサイン受信フィルターの特性は、Raised Cosine Receive Filter ブロックのものと同じですが、送信フィルター処理の場合、フィルターの入力応答の長さが [Output samples per symbol] パラメーターの値によって決まる点が異なります。

拡張機能

バージョン履歴

R2006a より前に導入