モーター制御

モーター制御を使用する用途

モーターは省エネルギー性能の良さや環境への負荷低減という観点により、近年は多彩な分野でモーターが使用されています。もともとエネルギー変換効率の良いモーターですが、制御と組み合わさることで更なる性能向上を目指しています。また、使い勝手の良さから機器の電動化に拍車がかかっており、モーター制御を利用した製品は拡大の一途です。

制御の対象

制御という言葉自体は様々な所で使われますが、モーター制御と言うと、主に以下の3つを指します。

  • モーターの電流(トルク)制御:モーターの電流を制御して任意のトルクを発生させる。
  • モーターの速度(回転数)制御:モーターの速度を制御して低速から高速まで滑らかに動かす。
  • モーターの位置(回転角度)制御:負荷の位置やモーターの角度を制御して任意の位置や角度に 持する。

このように、モーターを目標とする状態になるように制御します。その制御方式もモーターの種類により異なりますが、一般的なモーター制御のフィードバック構成をブロック図で示すと以下のようになります。

モーターの一般的なフィードバック制御のブロック図

上の図で示した3つの制御(位置、速度、電流)が入った代表例として、ボールねじ駆動システムがあげられます。これは、モーターの回転運動がボールねじを介することで直線運動に変換するもので、主な用途としてロボットや工作機械の搬送・位置決めに使用されています。

ボールねじ駆動による位置制御モデル

このようにモーターの状態や制御対象の動作を確認し、目標とするそれぞれの指令値に対してフィードバック制御を構築することで、モーター制御を実施します。

モーターの種類と特徴

モーターの種類は、大別してDCモーターとACモーターがあります。この違いは、モーターを駆動させる電源の違いになります。DCモーターは直流の電源で駆動し、ACモーターは交流の電源で駆動します。

<モーターの種類>

  • DCモーター:直流モーター
  • ACモーター:交流モーター(単相・3相)

<電源の種類>

直流/交流(単相・3相)電源の電流・電圧信号

<主な特徴>

一般的にDCモーターは、トルク制御性能が優れており、早くて安定した応答が得られます。ACモーターはインバーターがなかった時、その性格上、早くて安定した応答を得られにくいと言われていましたが、ベクトル制御方式で制御するようになり、DCモーターと同等かそれ以上の性能を得ることが出来るようになってきました。また、DCモーターは整流限界という、ブラシと整流子の摩耗により大型化が困難ですが、ACモーターはその制約がないため、大型化が可能です。

モーター制御のシステム構成

3相交流ACモーターを使用して負荷を制御するシステム構成図を、以下に示します。制御装置で意図通りに負荷を動作させるよう、センサを活用しながら駆動回路を使って最適なモーター制御を行います。以降で、各構成要素に対して説明をします。

3相交流ACモーターを使用したシステム構成図

  • インバーター

直流からACモーターを駆動するには、直流を3相交流に変換するインバーターを使用します。インバーターを使用することで、電圧と周波数をコントロールし、目標の回転速度とトルクでモーターを駆動させることが出来ます。多くのインバーターは直流から交流を生成する際、なるべく正弦波に近い電圧(または電流)を出力するためにPWM制御を使用して信号を生成します。

  • 制御装置

一般的に制御装置は、マイコン+周辺回路で構成されます。センサからの情報を取得し、モーターが最適な動作になるように駆動回路に対して指示をします。3相の交流波形を使用してモーターを制御する技術では、ベクトル制御を使用するのが一般的で、そのロジックはマイコンに実装されて、目標とする動作になるように指令値を制御します。

  • ベクトル制御

ベクトル制御とは、モーターに流れる電流を検出し、モーターのトルクになる電流と回転子に磁界を発生させるための電流(励磁電流)に分解して、それぞれの電流成分を独立して制御する方式。モーターの最大トルクを得られるように、固定子のU,V,W相に流した電流が作る磁界のベクトルを合成して、回転子の永久磁石のq軸方向に磁界を与えます。これにより、モーターの回転磁界の磁束の方向と大きさをベクトル量として制御出来るようになります。このような方法で、モーターのトルクをベクトル制御で直接制御出来るようになったため、精密な速度制御や位置制御などに使われるようになりました。

固定子と回転子によるdq軸への座標変換

以下に、ベクトル制御ロジックの概略図とモデルを示します。

ベクトル制御ロジックの概略

ベクトル制御を使ったモータシステムモデル

  • センサ

モーター制御は、回転子(永久磁石)の位置(角度)に合わせて行います。そのため回転子の位置を知る必要があります。位置を知るためにはセンサを使ってモーターの位置情報を把握します。

制御方式によって使用するセンサは異なりますが、代表的なセンサを以下に示します。

種類 主な用途 特徴
ホール素子 120度通電制御 比較的安価。熱に弱い
レゾルバ

ベクトル制御

高精度、優れた耐久性

ただし、センサレスベクトル制御方式の場合は、センサを用いません。インバーターからモーターへ出力する電流と電圧から位置を推定する方法になります。

モーター制御の実装

モーター制御ロジックを設計し、シミュレーション上で動作確認した後は、制御モデルを対象のハードウェアに実装します。制御するモーターの個数が少なければ一般的にマイコンに実装いたしますが、最近は、ロボットの制御などで数十個単位のモーターを同時に制御する必要性が出てきております。そのような場合、FPGAを使用し周辺のペリフェラルと一緒に開発するという方法があります。また、プロセッサとFPGAを1チップに集約したプログラマブルSoCが注目を集めており、ソフトウェアとハードウェアの協調設計が可能です。 以下に、SoCの概念図とそのモデルを示します。

Soc概念図

ARM/FPGA実装用コントローラによるモーター制御モデル

MATLAB環境によるモーター制御開発

MATLAB®環境を活用した、モーター制御開発の一般的なステップを以下に示します。

  • プラント(制御対象)モデル構築:インバーターや負荷も含めモーターモデルを作成
  • 制御モデル構築:制御モデルを作成
  • システム評価:作成したプラントモデルと制御モデルを結合しシステムレベル評価
  • ターゲット実装:制御モデルをマイコンやFPGAへ実装
    ※また、安価なボードとしてArduinoやRaspberry Piにも対応

それぞれのステップで最適なツールを選択し、開発の上流からシミュレーションを活用することで、開発効率や品質を向上させることが可能になります。




ソフトウェア リファレンス

DCブラシ付きモーター

誘導モーター

ブラシレスDCモーター(永久磁石同期モーター)

アプリケーション

参考: PWM(パルス幅変調), FPGA 設計と協調設計, Simscape Power Systems, Embedded Coder, HDL Coder, モーター制御のビデオ, パワー エレクトロニクス シミュレーション, field-oriented control, ブラシレスDC (BLDC)モーター制御, Clarke変換とPark変換