ベクトル制御とは
ベクトル制御 (磁界方向制御、FDC) は、誘導機、永久磁石同期機 (PMSM)、ブラシレス DC (BLDC) モーターなどのさまざまなモーターのフルトルクおよび速度範囲を高性能に制御するために使用される制御手法です。定格速度を超える速度の場合、弱め界磁制御を適用したベクトル制御が使用されます。
以下のブロック線図は、次のコンポーネントを含むベクトル制御のアーキテクチャを表しています。
- 2 つの比例-積分コントローラーで構成された電流コントローラー
- 外側のループに使用されるオプションの速度コントローラーと電流指令値発生器
- 静止座標系と同期回転座標系を相互に変換するための Clarke 変換、Park 変換、逆 Park 変換
- vα コマンドと vβ コマンドを固定子巻線に適用されるパルス幅変調信号に変換するための空間ベクトル変調器アルゴリズム
- 起動とシャットダウンのロジックを含む保護機能と補助機能
- センサーレス制御が望ましい場合に、回転子の角度位置を推定するオプションのオブザーバー
ベクトル制御を設計するモーター制御エンジニアは、以下のタスクを行います。
- 2 つの PI コントローラーを使用した電流ループ用のコントローラー アーキテクチャを開発
- 速度および位置を制御する任意の外側のループに使用する PI コントローラーを開発
- 性能要件を満たすために、すべての PI コントローラーのゲインを調整
- PWM の制御のための空間ベクトル変調器を設計
- センサーレス制御を使用する場合の、回転子の位置と速度を推定するためのオブザーバー アルゴリズムを設計
- 最適な d 軸電流指令 (id_ref) および q 軸電流指令 (iq_ref) を生成するためのアンペアあたりの最大トルクまたは弱め界磁制御アルゴリズムを設計
- 計算効率に優れた Clarke 変換、Park 変換、および逆 Park 変換を実装
- 故障検出および保護ロジックを設計
- さまざまな動作条件でコントローラーの性能を検証し妥当性を確認
- マイクロコントローラーまたは FPGA に固定小数点または浮動小数点のコントローラーを実装
Simulink を使用したベクトル制御設計により、マルチレートのシミュレーションを使用して制御アルゴリズムを設計、調整、および検証し、ハードウェアでのテストの前にモーターのすべての動作範囲で設計エラーを検出して修正することができます。プロトタイプによるテストの量を削減し、ハードウェアではテストできない故障状態に対して制御アルゴリズムのロバスト性を検証することができます。
Simulink のシミュレーションを使用して、以下を行うことができます。
- 同期と非同期の三相マシンなどのさまざまなタイプのモーターをモデル化。単純な第一原理の集中定数モデルから、ANSYS®Maxwelll®、JMAG®、Femtet®などの FEA ツールからインポートすることによって作成した高忠実度の磁束ベースの非線形モデルまで、さまざまなレベルの忠実度でモデルを作成し、それらのモデルを切り替えることができます。
- 電流コントローラー、速度コントローラー、および変調器をモデル化。
- インバーターのパワーエレクトロニクスをモデル化。
- ボード線図や根軌跡などの線形制御設計手法および自動 PID 調整などの手法を使用して、制御システムのゲインを調整。
- 起動、シャットダウン、エラーのモードをモデル化し、安全な動作を確保するディレーティングと保護ロジックを設計。
- 回転子の位置と速度を推定するオブザーバーのアルゴリズムを設計。
- d 軸電流指令 (id_ref) および q 軸電流指令 (iq_ref) を最適化して、電力損失の最小化、回転子の定格速度以上での動作、およびパラメトリックな不確かさがある状況下での正確な動作を確保。
- I/O チャネルの信号調整および処理アルゴリズムを設計。
- モーターとコントローラーの閉ループ シミュレーションを実行し、正常および異常の動作シナリオでシステム性能をテスト。
- ラピッド プロトタイピング、ハードウェアインザループ テスト、運用環境への実装向けに、ANSI、ISO、またはプロセッサに最適化された C コードおよび HDL を自動生成。
製品使用例および使い方
ユーザー事例
ソフトウェア リファレンス
ベクトル制御に関するよくある質問
ベクトル制御(FOC、またはフィールド指向制御)は、誘導機、永久磁石同期機(PMSMs)、ブラシレスDC(BLDC)モーターを含むさまざまなモータータイプに対して、全トルク・速度範囲で良好な制御性能を得るために用いられる制御手法です。
FOCは誘導機、永久磁石同期機(PMSMs)、およびブラシレスDC(BLDC)モーターに使用されます。
主な構成要素には、2つの比例–積分コントローラーを持つ電流コントローラー、Clarke変換、Park変換、および逆Park変換、スペースベクトル変調器、保護および補助機能、ならびにセンサーレス制御用のオブザーバが含まれます。
センサーありのFOCは位置センサーからの回転子角位置の直接測定を使用するのに対し、センサーレスのFOCはオブザーバアルゴリズムを用いて回転子の位置と速度を推定します。
FOCでは、静止座標系と回転同期座標系間で電気量を変換するためにClarke変換、Park変換、および逆Park変換が使用されます。
エンジニアはPIコントローラーを含むコントローラーアーキテクチャを開発し、コントローラーゲインを調整し、スペースベクトル変調器を設計し、センサーレス制御のためのオブザーバアルゴリズムを実装し、故障検出および保護ロジックを設計し、動作条件全体での性能を検証します。
Simulinkはマルチレートシミュレーションを可能にし、制御アルゴリズムの設計、チューニング、検証、各種モータータイプやパワーエレクトロニクスのモデル化、制御ゲインの調整、閉ループシミュレーションの実行、および組み込みターゲットへの実装のためのコード自動生成を行えます。
弱め界磁制御は定格速度を超える速度域でFOCとともに使用されます。
参考: Simscape Electrical, PID 制御, モーター制御, MPPT アルゴリズム, ブラシレス DC モーター制御, バッテリー マネジメント システム (BMS), Clarke 変換および Park 変換, 空間ベクトル変調, 弱め界磁制御, 誘導モーターの速度制御