モーターのモデル化とシミュレーションとは?

Simulink^® および Simscape Electrical は、モーターのモデル化とシミュレーションにおいて複数の忠実度レベルをサポートしており、モーターのサイズ設定や電気自動車のトラクションモーター制御設計などさまざまな用途に対応しています。多様なレベルのモーターモデル忠実度により、エンジニアは特定の用途で必要とされる適切なレベルの詳細を選択できます。

システム設計のためのモデル化

システム設計におけるモーターのモデル化とシミュレーションは、さまざまな動作条件でモーターの性能を把握して、モーターの動作範囲でのエネルギー消費を予測することを目的としています。このシナリオでは、エンジニアは次のような簡略化されたシステム動作のダイナミクスを使用します。

• パルス幅変調 (PWM)、またはパワー エレクトロニクスのスイッチングなし
• エネルギーベース、定常状態等価、および効率マップのモデル化

この簡略化されたモーターモデリング手法では、幅広いトルクと速度により汎用的なモーターを表現する Motor & Drive (System Level) ブロックを使用できます。これにより、システムのモデル化とシミュレーションが容易になると同時に、モーターの全体的な動作を捉えるトルクと速度の包絡線を得られることで、損失を正確に予測しながらシミュレーションの高速化を実現します。

モータードライブ設計のためのモデル化

制御システム設計は、産業用モータードライブのアプリケーションにおいて、電気モーターの速度、トルク、およびエネルギー消費の管理で重要な役割を果たします。精度を維持しながら、制御設計を優先させてシミュレーションの高速化を実現するために、エンジニアは以下が組み込まれたモーターモデルを使用して、最適化された信頼性のあるモーター制御システムを開発します。

• 理想的なスイッチング
• 集中定数モデリング
• トルク-電流の線形関係

集中定数モーターモデリングを容易にするために、Simscape Electrical には、メーカーのモーターデータを含む事前にパラメーター化されたモーターブロックが用意されています。メーカーのデータが利用できない場合は、Motor Control Blockset™ により機器テストを実行してモーターのパラメーター値を推定できます。

トラクション モーター アプリケーションのモデル化

正確で忠実度の高いモーターモデルを使用すると、トラクションモーターのエネルギー損失により車両の航続距離が短くなる場合の電気自動車アプリケーションの非線形動作を再現できます。線形集中定数モーターモデルを使用する場合とは異なり、エンジニアは、回転子の位置、鎖交磁束、電流、およびトルク間の非線形マッピングを含む有限要素法 (FEM) によるモーターのシミュレーション結果を組み込むことができます。空間高調波など追加の FEM データを使用することで、最高忠実度のモーター シミュレーションを実現でき、トルクリップル低減アルゴリズムの開発を促進し、モーター制御効率を最適化できます。トラクションモーター制御システムを正確に表現するために、エンジニアは以下を使用します。

• 非理想的スイッチング – 電力用半導体の物理ベースモデリング。
• 飽和 – 電流や回転子角度への非線形依存性。
• 空間高調波 – コギングおよび鎖交磁束における高調波に起因するトルクリップルなど。

高忠実度モーターモデリングを活用すると、制御エンジニアは Simulink のシミュレーションを使用して極端な動作条件を調査できます。妥当性確認を目的としてモーターモデルの高忠実度モーターモデリングおよびコシミュレーションを実現するために、エンジニアは ANSYS Maxwell、Motor-CAD、および JMAG-RT などのサードパーティツールから FEA データを Simscape Electrical の FEM-Parameterized モーターブロックにインポートできます。

MATLAB と Simulink を使用したモーターのモデル化とシミュレーションの詳細については、Simscape Electrical および Motor Control Blockset を参照してください。