ビームフォーミング

ビームフォーミングとは

ビームフォーミングは、電波(または音波、超音波)を特定の方向に向けて送信、または特定の方向から受信する技術です。単体のアンテナでは、アンテナの種類にもよりますが、一般的に信号は全方位に放射されます。ビームフォーミングを利用することでそのアンテナの指向性を制御することができます。特定の方向に電波を集中的に送信することにより、高品質な信号をより確実に届け、そのエリアの他の送受信機との干渉を避けられる点がメリットとして挙げられます。

ビームフォーミングの原理

ビームフォーミングを実現するためにはフェーズドアレイアンテナを使用します。複数のアンテナ素子を規則に沿って配列し、位相を調整する事により電波の指向性を制御します。ビームフォーミングを行うためのフェーズドアレイアンテナの基本構成を以下に示します。

ビームフォーミングの基本構成

アンテナ素子の配列の仕方は、図の様に直線に並べる直線アレイのほかにも長方形(正方形)に並べる平面アレイ、曲線上に並べるコンフォーマルアレイ等があり、用途に合わせて選択します。上記の図で左から電波がある角度で到来する場合に、素子2では、素子1よりも到達時間が少し遅れるため位相差が生じ、伝播損失と信号経路の違いにより振幅が変化します。この振幅は後段のアンプで、位相は位相器で調整され、同一方向から到達する信号は強め合うよう調整されます。この指向性の調整をアナログ(RF)信号で行なう方法は、アナログビームフォーミングと呼ばれています。

一方で、下図に示すように、RF信号をIFまたはベースバンド信号にダウンコンバートした後に、ADコンバータでデジタルに変換し、信号処理で位相/振幅を制御して、ビームを調整する方法はデジタルビームフォーミングと呼ばれています。

デジタルビームフォーミング

ビームフォーミングの活用

ビームフォーミングは、電波、超音波、音波で周波数は異なりますが、アレイ素子を使って、下記のような幅広い分野で活用されています。特に、近年の無線通信分野では、第5世代移動通信(5G)向けに、アクティブアンテナでビームフォーミングを行い、多数のユーザーの同時接続が可能となるMassive MIMO技術の開発が進んできています。

  電波 超音波・音波
アレイ
  • フェーズドアレイアンテナ
  • 超音波センサアレイ
  • マイクロホンアレイ
業界/適用機器
  • 航空宇宙・防衛 - 各種レーダー
  • 通信、電機 - 無線基地局機器、無線LAN機器
  • 自動車 - 車載レーダー(ADAS)
  • 気象 - 気象レーダー
  • 航空宇宙・防衛 - ソナー(水中)
  • 自動車 - 近距離障害物検知装置
  • 医療 - エコー(超音波診断装置)
  • 漁業 - 魚群探知機(ソナー)
  • 電機 - 自動ドアセンサ

MATLAB/Simulinkを使ったビームフォーミング

近年ますます複雑化が進む無線通信システムには、アンテナ設計、デジタル通信、RFといった異なる技術要素が共存し、それぞれの要素がシステムの性能に影響を及ぼし合います。そのため、ビームフォーミングを適用した高精度なアンテナ設計を実現するには、アンテナ部分のみでなく、RF・アナログ特性の影響を十分に考慮しながら、システム全体の設計を進めていくことが重要です。

MATLAB®/Simulink®は、デジタル信号処理のアルゴリズム開発において広く使われており、アナログ・デジタル双方の特性を盛り込んだシミュレーションをサポートします。RF/アナログからデジタル設計までを統一した環境で行うことにより、早い段階で問題点を見つけることができ、設計期間の短縮に繋がります。

また、アレイ設計やビームフォーミングアルゴリズムを強力にサポートするPhased Array System Toolbox™は、ビームフォーミングの既存アルゴリズムである、MVDRビームフォーミング、LCMVビームフォーミング、Frostビームフォーミングを提供しています。早期に既存アルゴリズムで試し、独自のアルゴリズムを組む場合のリファレンスとして活用することができます。

ビームフォーミングのシミュレーション例

上記のような、デジタル・RF/アナログのシミュレーションに限らず、MATLAB/Simulinkを利用すると、アンテナ設計、アレイアンテナ設計、レーダー設計、通信設計を含むシステム全体のシミュレーションを統一された環境で行うことが可能です。システム全体のシミュレーションを実機(プロトタイプ)検証より前に行うことで、手戻りの少ない開発を実現します。下記の各製品が、無線通信システムの設計をサポートします。

レーダー、通信機器を含むシステム全体のシミュレーション



ソフトウェアリファレンス

参考 : 無線通信, 第5世代移動通信(5G)