Massive MIMOとは?

Massive MIMO:無線通信を高速化/安定化できる技術

Massive MIMO(massive multiple-input multiple-output マッシブマイモ)は、無線通信技術の一種です。Massive MIMOについて説明する前に、まず、MIMO (multiple-input multiple-output, マイモ, 多入力多出力)とは何かについて紹介します。

MIMOとは

MIMOは、多入力多出力とも呼ばれています。無線通信において、送信機と受信機で同時に送受信できる通信経路を増やし、時間あたりの通信量を増やすことができる技術を指します。結果として、MIMO技術を活用することで、無線通信を高速化させることができます。また、高速化させるだけでなく、デッドスポットと呼ばれる無線が届いていないエリアを縮小し、安定性と確実性を備えた環境を提供させるといったメリットがあります。

MIMO技術の利用イメージとして、例えば、昨今では在宅ワークの広がりによって無数の通信が飛び交う環境が広がりました。結果として、多数の無線が飛び交う中で「通信が切れやすい」「接続に時間がかかる」といった電波障害の被害を受けた方もいることでしょう。こういった電波障害を起こさないために、MIMOの技術は有効な対応策となります。

Massive MIMOとは

Massive MIMOは、言葉通りMIMOについて送受信アンテナの数を大量に増やした上で、通信経路の安定化と高速化を図る技術を指します。無線通信基地局では、スペクトルとエネルギー効率を向上させるために非常に多くのアンテナ端末を装備しています。通常、Massive MIMOシステムでは、1つのアンテナアレイに数十、数百、または数千のアンテナを備えています。

Massive MIMOのイメージ

Massive MIMOのメリット

  • セルエッジ(無線基地局の影響範囲の端の部分)のカバレッジ向上:限られた周波数帯で広範囲をカバーすることができるセルラー通信の観点では、エンドユーザーが基地局に近いほど信号が強くなります。エンドユーザーが基地局から遠くに離れるほど、信号が弱くなるセルエッジに近づくことになります。Massive MIMOは、通信を空間的にエンドユーザーに向けて集中させることで、セルエッジでの通信性能を向上させます。
  • スループットの向上:通信システムにおいて、スループットとは、単位時間で伝送できるデータ量です。MU-MIMOで空間多重化を使用すると、無線通信システムは、同じ時間周波数のリソースを使用して複数のユーザー機器(UE)と同時に通信することができます。この技術は、Massive MIMOと組み合わせて使用されることが多く、セルのスペクトル効率と全体のスループットを大幅に改善します。
  • ミリ波 (mmWave) の活用:使用する周波数が高くなると、電波は直進性が高くなり、到達距離も短くなります。ミリ波と呼ばれる周波数(24GHz以上)は、今まで主に活用していた周波数よりも高い周波数になり、パス損失により信号強度が急激に低下します。そのため、ミリ波伝送では、Massive MIMOを活用することで信号強度を高めることができます。ミリ波(最大52GHz)の新しい周波数が導入された5Gシステムによって、Massive MIMOはより重要な存在となりました。

Massive MIMO技術のイメージ

Massive MIMOの課題

  • モデリング、シミュレーション、テスト:5Gの導入により、Massive MIMOやミリ波のような技術が実現可能となった一方で、モデリング、シミュレーション、テストの課題が見えてきています。高い周波数を利用することで、より多くのデータを短い時間で伝送できるメリットがある一方で、到達範囲は短くなります。そのため、現場でデータを測定するには、今までよりも多くの地点での観測が必要です。また、気象条件にも通信システムの品質に影響が出やすくなるため、必要な条件のデータを現場で取得するのは非常に困難です。実験データと合わせて、様々な条件を再現できるシミュレーションを活用することで、より品質の高い通信システムを検討することができます。
  • 消費電力の増大:5Gミリ波の伝送に求められる範囲に達するため、Massive MIMOでは、多数のアンテナ端末が必要になる場合があります。ハイブリッドビームフォーミングなどの手法を活用することで、電力使用量を削減することができますが、このアンテナ需要の増加はシステムの全体的な電力とコストを増加させてしまいます。
  • チャネルの相反性:Massive MIMOは、送信と受信が同じ中心周波数で行われるタイムドメインデュプレックス(TDD)システム向けに設計されています。この方式では、送受信機のそれぞれが同チャネルの影響を受けるという特性が利用できるが、実機環境では、送受信で使用されるコンポーネントや経路が変わることから、TDDでは、キャリブレーションが必要となります。この要件は、Massive MIMOによって導入された多数のアンテナを密接して配置することによって悪化します。MATLAB®の無線通信関連プロダクトは、これらの課題の解決に役立ちます。

MATLABおよびSimulinkによるMassive MIMO

MATLABおよびSimulinkの無線通信関連プロダクトで実現できること

  • 複雑なアンテナ端末、Massive MIMOフェーズドアレイ、アブアレイの設計および合成
  • デジタルおよびRF領域にまたがるハイブリッド・ビームフォーミング・システムを高度に構築および分割
  • 5G NR CDL空間チャネル モデルを含む空間信号処理アルゴリズムとチャネル モデルの検証
  • 5Gシステムの標準ベースのシミュレーションを使用して、リンクレベルの設計を検証

遅延プロファイル: CDL-D. 位置送信機

参考: チャネルモデル, レーダーシステム