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RayTracing
説明
RayTracing
オブジェクトは、3 次元環境のジオメトリを使用して伝播パスを計算する伝播モデルです[1][2]。RayTracing
オブジェクトを使用して、レイ トレーシング モデルを表現します。
このレイ トレーシング モデル:
Shooting and Bounicng Rays (SBR) 法またはイメージ手法を使用してレイ トレーシング モデルを作成できます。
作成
関数 propagationModel
を使用して RayTracing
オブジェクトを作成します。
プロパティ
レイ トレーシング
Method
— レイ トレーシング手法
"sbr"
(既定値) | "image"
レイ トレーシング手法。次のいずれかの値として指定します。
"sbr"
— Shooting and Bounicng Rays (SBR) 法を使用します。これは、最大 10 回のパス反射と 2 回のエッジ回折をサポートします。SBR 法では、正確な幾何学的精度で伝播パスのおおよその数を計算します。SBR 法の方がイメージ手法よりも一般に高速になります。このモデルは、自由空間損失、材料との相互作用による反射損失と回折損失、およびアンテナの偏波からパス損失を計算します。"image"
— イメージ手法を使用します。これは、最大 2 回のパス反射をサポートします。イメージ手法では、正確な幾何学的精度で伝播パスの正確な数を計算します。モデルは、自由空間損失に加え、材料やアンテナの偏波による反射損失からもパス損失を計算します。
MaxNumReflections
プロパティを使用してパス反射の最大数を指定します。MaxNumDiffractions
プロパティを使用してエッジ回折の最大数を指定します。
イメージ手法と SBR 法の両方で同じパスが検出される場合、そのパスに沿った点は、単精度浮動小数点値のマシン精度の許容誤差内で同じになります。イメージ手法と SBR 法の違いの詳細については、伝播モデルの選択を参照してください。
データ型: char
| string
AngularSeparation
— 発射された光線間の平均角度
"medium"
(既定値) | "high"
| "low"
| 範囲 [0.05, 10] の度単位の数値スカラー
発射された光線間の平均角度。"high"
、"medium"
、"low"
、または範囲 [0.05, 10] の度単位の数値スカラーとして指定します。数値を指定した場合、レイ トレーシング アルゴリズムによって、指定した値よりも低い値が使用される場合があります。
この表では、オプション "high"
、"medium"
、および "low"
の動作について説明します。
オプション | 数値換算の近似値 | 数値の範囲 | 発射される光線の数 |
---|---|---|---|
"high" | 1.0781 | [0.9912, 1.1845] | 40.962 |
"medium" | 0.5391 | [0.4956, 0.5923] | 163.842 |
"low" | 0.2695 | [0.2478, 0.2961] | 655.362 |
SBR 法によって検出されるパスの数の精度を向上させるには、AngularSeparation
の値を減らします。AngularSeparation
の値を小さくすると、MATLAB® が解析を実行するのに必要な時間が長くなります。
MATLAB セッションで AngularSeparation
の特定の値を初めて使用するとき、MATLAB はセッションの間、その値に関連付けられた測地線球面をキャッシュします。その結果、AngularSeparation
のその値を最初に使用する際は、同じセッション内で続けて使用する場合よりも時間がかかります。測地線球面の詳細については、Shooting and Bounicng Rays 法を参照してください。
ヒント
回折を使用してレイ トレーシングを実行する際、または関数 coverage
を使用してカバレッジ マップを作成する際、より低い角距離と反射の最大数を選択することで、計算を高速化することができます。
依存関係
この引数を有効にするには、Method
プロパティの値を "sbr"
(既定) にしなければなりません。
データ型: single
| double
| int8
| int16
| int32
| int64
| uint8
| uint16
| uint32
| uint64
| char
| string
MaxNumReflections
— パス反射の最大数
2
(既定値) | 範囲 [0,10] の整数
レイ トレーシングを使用して検索するパス反射の最大数。整数として指定します。サポートされる値は、Method
プロパティの値によって異なります。
Method
が"image"
の場合、サポートされる値は0
、1
、および2
です。Method
が"sbr"
の場合、[0, 10] の範囲の値がサポートされます。
MaxAbsolutePathLoss
— 最大絶対パス損失
Inf
(既定値) | 正の数値スカラー
最大絶対パス損失 (dB 単位)。正の数値スカラーとして指定します。このプロパティを使用すると、絶対しきい値に基づいて伝播パスを破棄することができます。たとえば、このプロパティを 100
に指定すると、パス損失が 100 dB を超えるパスを破棄できます。既定値は Inf
で、絶対しきい値に基づいて伝播パスを破棄しません。
MaxAbsolutePathLoss
プロパティと MaxRelativePathLoss
プロパティは連携して機能します。パス損失 pl
をもつ伝播パスの場合、pl
が MaxAbsolutePathLoss
と MaxRelativePathLoss
+ plsr
のいずれか低い方より大きい場合、レイ トレーシング モデルはパスを破棄します。ここで、plsr
は最も強い光線のパス損失です。
MaxRelativePathLoss
— 最大相対パス損失
40
(既定値) | 非負の数値スカラー
最大相対パス損失 (dB 単位)。非負の数値スカラーとして指定します。このプロパティを使用すると、最も強い光線に対する相対的なしきい値に基づいて伝播パスを破棄できます。既定値は 40
で、最も強いパスより 40 dB を超えて弱いパスが破棄されます。
MaxRelativePathLoss
プロパティと MaxAbsolutePathLoss
プロパティは連携して機能します。パス損失 pl
をもつ伝播パスの場合、pl
が MaxAbsolutePathLoss
と MaxRelativePathLoss
+ plsr
のいずれか低い方より大きい場合、レイ トレーシング モデルはパスを破棄します。ここで、plsr
は最も強い光線のパス損失です。
CoordinateSystem
— 地図とサイト位置の座標系
"geographic"
(既定値) | "cartesian"
サイト位置の座標系。"geographic"
または "cartesian"
として指定します。"geographic"
を指定する場合、BuildingsMaterial
プロパティと TerrainMaterial
プロパティを使用して材料タイプを定義します。"cartesian"
を指定する場合、SurfaceMaterial
プロパティを使用して材料タイプを定義します。
データ型: string
| char
建物の材料
BuildingsMaterial
— 地理的建物の表面材料
"auto"
(既定値) | "concrete"
| "brick"
| "wood"
| "glass"
| "metal"
| "perfect-reflector"
| "custom"
地理的建物の表面材料。次のいずれかの値として指定します。
"auto"
— シーンを規定する OpenStreetMap® ファイルまたは地理空間テーブルから取得した建物材料を使用します。ファイルまたはテーブルで材料が指定されていない場合、すべての建物でコンクリートを使用します。ファイルまたはテーブルにおいて、レイ トレーシング解析でサポートされていない材料が指定されている場合、サポートされていない材料の代わりにコンクリートを使用します。ファイルまたはテーブルをサイト ビューアーにインポートした場合、Site Viewer オブジェクトのMaterials
プロパティのクエリを実行することで材料名を確認することができます。 (R2023b 以降)"concrete"
— コンクリート"brick"
— れんが"wood"
— 木材"glass"
— ガラス"metal"
— 金属"perfect-reflector"
— 完全導体"custom"
— カスタム材料。BuildingsMaterialPermittivity
プロパティとBuildingsMaterialConductivity
プロパティを使用して、材料の実数の比誘電率と伝導率を指定します。
モデルは、この材料タイプを使用して、建物の表面との相互作用を含むパス損失を計算します。詳細については、一般的な材料に対する ITU 比誘電率と伝導率の値を参照してください。
依存関係
BuildingsMaterial
を有効にするには、CoordinateSystem
プロパティの値が "geographic"
でなければなりません。
データ型: char
| string
BuildingsMaterialPermittivity
— 建物の表面材料の実数の比誘電率
5.31
(既定値) | 非負のスカラー
建物の表面材料の実数の比誘電率。非負のスカラーとして指定します。実数の比誘電率は、真空の絶対誘電率に対する材料の複素絶対誘電率の比の実数部として表されます。モデルは、この値を使用して、建物の表面との相互作用を含むパス損失を計算します。既定の値は 1.9 GHz におけるコンクリートに対応します。
依存関係
BuildingsMaterialPermittivity
を有効にするには、CoordinateSystem
プロパティを "geographic"
に設定し、BuildingsMaterial
プロパティを "custom"
に設定しなければなりません。
データ型: double
BuildingsMaterialConductivity
— 建物の表面材料の伝導率
0.0548
(既定値) | 非負のスカラー
建物の表面材料の伝導率。非負のスカラーとしてジーメンス毎メートル (S/m) 単位で指定します。モデルは、この値を使用して、建物の表面との相互作用を含むパス損失を計算します。既定の値は 1.9 GHz におけるコンクリートに対応します。
依存関係
BuildingsMaterialConductivity
を有効にするには、CoordinateSystem
プロパティを "geographic"
に設定し、BuildingsMaterial
プロパティを "custom"
に設定しなければなりません。
データ型: double
地形材料
TerrainMaterial
— 地理的地形の表面材料
"concrete"
(既定値) | "brick"
| "water"
| "vegetation"
| "loam"
| "perfect-reflector"
| "custom"
地理的地形の表面材料。次のいずれかの値として指定します。
"concrete"
— コンクリート"brick"
— れんが"water"
— 水"vegetation"
— 植生"loam"
— 壌土"perfect-reflector"
— 完全導体"custom"
— カスタム材料。TerrainMaterialPermittivity
プロパティとTerrainMaterialConductivity
プロパティを使用して、材料の実数の比誘電率と伝導率を指定します。
モデルは、この材料タイプを使用して、地形表面との相互作用を含むパス損失を計算します。詳細については、一般的な材料に対する ITU 比誘電率と伝導率の値を参照してください。
依存関係
TerrainMaterial
を有効にするには、CoordinateSystem
プロパティを "geographic"
に設定しなければなりません。
データ型: char
| string
TerrainMaterialPermittivity
— 地形材料の実数の比誘電率
5.31
(既定値) | 非負のスカラー
地形材料の実数の比誘電率。非負のスカラーとして指定します。実数の比誘電率は、真空の絶対誘電率に対する材料の複素絶対誘電率の比の実数部として表されます。モデルは、この値を使用して、地形表面との相互作用を含むパス損失を計算します。既定の値は 1.9 GHz におけるコンクリートに対応します。
依存関係
TerrainMaterialPermittivity
を有効にするには、CoordinateSystem
プロパティを "geographic"
に設定し、TerrainMaterial
プロパティを "custom"
に設定しなければなりません。
データ型: double
TerrainMaterialConductivity
— 地形材料の伝導率
0.0548
(既定値) | 非負のスカラー
地形材料の伝導率。非負のスカラーとしてジーメンス毎メートル (S/m) 単位で指定します。モデルは、この値を使用して、地形表面との相互作用を含むパス損失を計算します。既定の値は 1.9 GHz におけるコンクリートに対応します。
依存関係
TerrainMaterialConductivity
を有効にするには、CoordinateSystem
プロパティを "geographic"
に設定し、TerrainMaterial
プロパティを "custom"
に設定しなければなりません。
データ型: double
表面材料
SurfaceMaterial
— 直交マップ表面の表面材料
"auto"
(既定値) | "concrete"
| "plasterboard"
| "ceilingboard"
| "chipboard"
| "floorboard"
| "brick"
| "wood"
| "glass"
| "metal"
| "water"
| "vegetation"
| "loam"
| "perfect-reflector"
| "custom"
直交マップ表面の表面材料。次のいずれかの値として指定します。
"auto"
— シーンを規定するファイルから取得した表面材料を使用します。glTF™ ファイルの場合、ファイルから取得した材料を使用します。ファイルで材料が指定されていない場合、またはレイ トレーシング解析でサポートされていない材料がファイルで指定されている場合、代わりにコンクリートを使用します。STL ファイルおよび三角形分割オブジェクトの場合はコンクリートを使用します。ファイルをサイト ビューアーにインポートした場合、Site Viewer オブジェクトのMaterials
プロパティのクエリを実行することで材料名を確認することができます。 (R2023b 以降)"concrete"
— コンクリート"plasterboard"
— 石こうボード"ceilingboard"
— 天井板"chipboard"
— 合板"floorboard"
— 床板"brick"
— れんが"wood"
— 木材"glass"
— ガラス"metal"
— 金属"water"
— 水"vegetation"
— 植生"loam"
— 壌土"perfect-reflector"
— 完全導体"custom"
— カスタム材料。SurfaceMaterialPermittivity
プロパティとSurfaceMaterialConductivity
プロパティを使用して、材料の実数の比誘電率と伝導率を指定します。
モデルは、この材料タイプを使用して、表面との相互作用を含むパス損失を計算します。詳細については、一般的な材料に対する ITU 比誘電率と伝導率の値を参照してください。
依存関係
SurfaceMaterial
を有効にするには、CoordinateSystem
プロパティを "cartesian"
に設定しなければなりません。
データ型: char
| string
SurfaceMaterialPermittivity
— 表面材料の実数の比誘電率
5.31
(既定値) | 非負のスカラー
表面材料の実数の比誘電率。非負のスカラーとして指定します。実数の比誘電率は、真空の絶対誘電率に対する材料の複素絶対誘電率の比の実数部として表されます。モデルは、この値を使用して、表面との相互作用を含むパス損失を計算します。既定の値は 1.9 GHz におけるコンクリートに対応します。
依存関係
SurfaceMaterialPermittivity
を有効にするには、CoordinateSystem
プロパティを "cartesian"
に設定し、SurfaceMaterial
プロパティを "custom"
に設定しなければなりません。
データ型: double
SurfaceMaterialConductivity
— 表面材料の伝導率
0.0548
(既定値) | 非負のスカラー
表面材料の伝導率。非負のスカラーとしてジーメンス毎メートル (S/m) 単位で指定します。モデルは、この値を使用して、表面との相互作用を含むパス損失を計算します。既定の値は 1.9 GHz におけるコンクリートに対応します。
依存関係
SurfaceMaterialConductivity
を有効にするには、CoordinateSystem
プロパティを "cartesian"
に設定し、SurfaceMaterial
プロパティを "custom"
に設定しなければなりません。
データ型: double
例
SBR 法およびイメージ手法を使用した伝播パスのモデル化
SBR 法とイメージ手法を使用して、シカゴにおける反射伝播パスを表示します。
シカゴの建物を含むサイト ビューアーを作成します。OpenStreetMap® ファイルの詳細については、[1] を参照してください。
viewer = siteviewer("Buildings","chicago.osm");
建物の上に送信機サイトを作成し、別の建物の近くに受信機サイトを作成します。
tx = txsite("Latitude",41.8800, ... "Longitude",-87.6295, ... "TransmitterFrequency",2.5e9); show(tx) rx = rxsite("Latitude",41.8813452, ... "Longitude",-87.629771, ... "AntennaHeight",30); show(rx)
レイ トレーシング伝播モデルを作成します。MATLAB® は、RayTracing
オブジェクトを使用してこのモデルを表現します。イメージ手法を使用し、最大 1 回の反射を伴うパスを計算するように、モデルを構成します。次に、伝播パスを表示します。
pm = propagationModel("raytracing","Method","image", ... "MaxNumReflections",1); raytrace(tx,rx,pm)
このレイ トレーシング モデルでは、送信機から受信機への伝播パスが 1 つあります。
SBR 法を使用し、最大 2 回の反射と最大 1 回の回折を伴うパスを計算するように、レイ トレーシング モデルを更新します。伝播パスを表示します。
pm.Method = "sbr";
pm.MaxNumReflections = 2;
pm.MaxNumDiffractions = 1;
raytrace(tx,rx,pm)
更新されたレイ トレーシング モデルは、送信機から受信機までの伝播パスをより多く示します。
付録
[1] OpenStreetMap ファイルは、クラウドソーシングによる世界中の地図データへのアクセスを提供する https://www.openstreetmap.org からダウンロードされたものです。このデータは Open Data Commons Open Database License (ODbL) https://opendatacommons.org/licenses/odbl/ によりライセンスされています。
レイ トレーシングを使用したモデル カバレッジ
シカゴの建物を指定してサイト ビューアーを起動します。OpenStreetMap® ファイルの詳細については、[1] を参照してください。
viewer = siteviewer("Buildings","chicago.osm");
建物の上に送信機サイトを作成し、別の建物の近くに受信機サイトを作成します。
tx = txsite("Latitude",41.8800, ... "Longitude",-87.6295, ... "TransmitterFrequency",2.5e9); show(tx)
レイ トレーシング伝播モデルを作成します。MATLAB® は、RayTracing
オブジェクトを使用してこのモデルを表現します。最大 2
回の表面反射と最大 1
回のエッジ回折を伴うパスを検出するように、モデルを構成します。既定では、モデルは SBR 法を使用します。
pm = propagationModel("raytracing", ... "MaxNumReflections",2,"MaxNumDiffractions",1);
カバレッジ マップを表示します。
coverage(tx,pm,"SignalStrengths",-100:5)
付録
[1] OpenStreetMap ファイルは、クラウドソーシングによる世界中の地図データへのアクセスを提供する https://www.openstreetmap.org からダウンロードされたものです。このデータは Open Data Commons Open Database License (ODbL) https://opendatacommons.org/licenses/odbl/ によりライセンスされています。
パス損失に基づいたパスの破棄
レイ トレーシング モデルでは、パス損失しきい値に基づいて伝播パスを破棄できます。
MaxRelativePathLoss
プロパティを使用して、最も強い伝播パスに対する相対的なしきい値を指定します。MaxAbsolutePathLoss
プロパティを使用して絶対しきい値を指定します。
シカゴの建物を含むサイト ビューアーを作成します。OpenStreetMap® ファイルの詳細については、[1] を参照してください。
viewer = siteviewer("Buildings","chicago.osm");
建物の上に送信機サイトを作成し、別の建物の近くに受信機サイトを作成します。
tx = txsite("Latitude",41.8800, ... "Longitude",-87.6295, ... "TransmitterFrequency",2.5e9); show(tx) rx = rxsite("Latitude",41.8813452, ... "Longitude",-87.629771, ... "AntennaHeight",30); show(rx)
レイ トレーシング伝播モデルを作成します。MATLAB は、RayTracing
オブジェクトを使用してこのモデルを表現します。最大 2
回の表面反射と最大 1
回のエッジ回折を伴うパスを検出するように、モデルを構成します。既定では、モデルは SBR 法を使用します。
pm = propagationModel("raytracing", ... "MaxNumReflections",2, ... "MaxNumDiffractions",1);
レイ トレーシング解析を実行します。既定では、モデルは最も強いパスより 40 dB を超えて弱いパスを破棄します。
raytrace(tx,rx,pm,"Type","pathloss")
相対パス損失に基づいたパスの破棄
RayTracing
オブジェクトの MaxRelativePathLoss
プロパティを変更して、最も強いパスより 50 dB を超えて弱いパスを破棄します。その後、再度レイ トレーシング解析を実行します。
pm.MaxRelativePathLoss = 50; raytrace(tx,rx,pm,"Type","pathloss")
伝播パスの破棄を回避するには、MaxRelativePathLoss
プロパティを Inf
に設定します。
pm.MaxRelativePathLoss = Inf; raytrace(tx,rx,pm,"Type","pathloss")
絶対パス損失に基づいたパスの破棄
RayTracing
オブジェクトの MaxAbsolutePathLoss
プロパティを設定して、パス損失が 115
dB を超えるパスを破棄します。
pm.MaxAbsolutePathLoss = 115; raytrace(tx,rx,pm,"Type","pathloss")
付録
[1] OpenStreetMap ファイルは、クラウドソーシングによる世界中の地図データへのアクセスを提供する https://www.openstreetmap.org からダウンロードされたものです。このデータは Open Data Commons Open Database License (ODbL) https://opendatacommons.org/licenses/odbl/ によりライセンスされています。
詳細
Shooting and Bounicng Rays 法
Shooting and Bounce Rays (SBR) 法では、正確な幾何学的精度で伝播パスのおおよその数を求めます。この方法を使用して、最大 10 回のパス反射を伴うパスを検出できます。
SBR 法の計算量は、反射の数に応じて線形的に増加し、回折の数に応じて指数的に増加します。SBR 法の方がイメージ手法よりも一般に高速になります。
次の図は、送信機 Tx から受信機 Rx までの伝播パスを SBR 法で計算する方法を図解したものです。
SBR 法では、Tx を中心とする測地線球面から多数の光線を発射します。この測地線球面から、モデルはほぼ等間隔に光線を発射できます。
次に、この手法では Tx からのすべての光線をトレースします。反射、回折、屈折、散乱など、光線と周囲のオブジェクトとの間のさまざまな種類の相互作用をモデル化できます。SBR 法の現在の実装では、反射とエッジ回折のみが考慮されることに注意してください。
SBR 法では、発射される各光線について、受信球面と呼ばれる球面で Rx を囲みます。この球面の半径は光線がたどる距離と発射された各光線間の平均角度に比例します。光線が球面と交差すれば、モデルは光線を Tx から Rx までの有効なパスと見なします。SBR 法は、有効なパスを修正して、パスが正確な幾何学的精度を確保するようにします。
光線間の角度を減らして光線の数を増やすと、受信球面が小さくなります。その結果、場合によっては、多くの光線を発射したときに、パスが少なくなったり、異なったりすることがあります。この状況は、OpenStreetMap の建物や地形データから自動的に生成されたシナリオよりも、STL ファイルや三角形分割オブジェクトから作成されたカスタム 3D シナリオで発生する可能性が高くなります。
SBR 法では、倍精度浮動小数点の計算を使用してパスを検出します。
イメージ手法
イメージ法では、正確な幾何学的精度で伝播パスの正確な数を求めます。この方法を使用して、最大 2 回のパス反射を伴うパスを検出できます。イメージ法の計算量は、反射の数に応じて指数的に増加します。
次の図は、SBR 法と同じ送信機と受信機について、単一の反射光線の伝播パスをイメージ手法で計算する方法を図解したものです。イメージ手法では、平面反射面に対する Tx のイメージ Tx' を特定します。次に、この手法では Tx' と Rx を線分でつなぎます。この線分が平面反射面 (図の R) と交差すれば、Tx から Rx までの有効なパスが存在します。この手法では、これらの手順を再帰的に拡張して複数の反射でパスを調べます。イメージ手法では、単精度浮動小数点の計算を使用してパスを検出します。
一般的な材料に対する ITU 比誘電率と伝導率の値
ITU-R P.2040-1[3]と ITU-R P.527-5[4]には、一般的な材料の実数の比誘電率、伝導率、および複素比誘電率を計算するために使用されるメソッド、方程式、および値が記載されています。
ITU-R P.2040-1 で指定される建物の材料に対して計算される値の詳細については、
buildingMaterialPermittivity
を参照してください。ITU-R P.527-5 で指定される地形材料に対して計算される値の詳細については、
earthSurfacePermittivity
を参照してください。
参照
[1] Yun, Zhengqing, and Magdy F. Iskander. “Ray Tracing for Radio Propagation Modeling: Principles and Applications.” IEEE Access 3 (2015): 1089–1100. https://doi.org/10.1109/ACCESS.2015.2453991.
[2] Schaubach, K.R., N.J. Davis, and T.S. Rappaport. “A Ray Tracing Method for Predicting Path Loss and Delay Spread in Microcellular Environments.” In [1992 Proceedings] Vehicular Technology Society 42nd VTS Conference - Frontiers of Technology, 932–35. Denver, CO, USA: IEEE, 1992. https://doi.org/10.1109/VETEC.1992.245274.
[3] International Telecommunications Union Radiocommunication Sector. Effects of building materials and structures on radiowave propagation above about 100MHz. Recommendation P.2040-1. ITU-R, approved July 29, 2015. https://www.itu.int/rec/R-REC-P.2040/en.
[4] International Telecommunications Union Radiocommunication Sector. Electrical characteristics of the surface of the Earth. Recommendation P.527-5. ITU-R, approved August 14, 2019. https://www.itu.int/rec/R-REC-P.527/en.
[5] International Telecommunications Union Radiocommunication Sector. Propagation by diffraction. Recommendation P.526-15. ITU-R, approved October 21, 2019. https://www.itu.int/rec/R-REC-P.526/en.
[6] Keller, Joseph B. “Geometrical Theory of Diffraction.” Journal of the Optical Society of America 52, no. 2 (February 1, 1962): 116. https://doi.org/10.1364/JOSA.52.000116.
バージョン履歴
R2019b で導入R2023b: BuildingsMaterial
、SurfaceMaterial
、SurfaceMaterialPermittivity
、および SurfaceMaterialConductivity
プロパティの既定値の変更
RayTracing
伝播モデル オブジェクトの BuildingsMaterial
プロパティおよび SurfaceMaterial
プロパティの既定値は "auto"
です。これまで、BuildingsMaterial
プロパティの既定値は "concrete"
、SurfaceMaterial
プロパティの既定値は "plasterboard"
でした。
また、RayTracing
伝播モデル オブジェクトの SurfaceMaterialPermittivity
プロパティおよび SurfaceMaterialConductivity
プロパティの既定値は、それぞれ 5.31
および 0.0548
になりました。以前のリリースでは、既定値はそれぞれ 2.94
および 0.0183
でした。
R2023a: レイ トレーシング モデルはパス損失に基づいてパスを破棄する
RayTracing
オブジェクトを使用すると、パス損失しきい値に基づいて伝播パスを破棄することができます。しきい値を指定するには、オブジェクトの MaxAbsolutePathLoss
プロパティと MaxRelativePathLoss
プロパティを設定します。
MaxRelativePathLoss
プロパティの既定値は 40
です。結果として、MaxRelativePathLoss
値を指定していない以前のリリースのコードは、次のような影響を受ける可能性があります。
相対パス損失しきい値に基づいて伝播パスが破棄されることを回避するには、レイ トレーシング オブジェクトの MaxRelativePathLoss
プロパティを Inf
に設定します。
R2022b: 発射された光線の間隔を SBR 法でのレイ トレーシング用にカスタマイズ
SBR 法を使用してレイ トレーシングを実行する場合、RayTracing
オブジェクトの AngularSeparation
プロパティを度単位の数値として指定することにより、発射される光線の間隔をカスタマイズできます。以前のリリースでは、AngularSeparation
プロパティはオプション "high"
、"medium"
、および "low"
のみをサポートしていました。
R2022b: SBR 法は正確な幾何学的精度で伝播パスを計算
SBR 法を使用して伝播パスを検出する際、MATLAB は各パスの幾何学的精度が正確になるように結果を修正します。以前のリリースでは、パスの幾何学的精度が近似的でした。
R2021b: 既定のモデリング手法は Shooting and Bouncing Rays 法
R2021b 以降、構文 propagationModel("raytracing")
を使用して伝播モデルを作成すると、MATLAB は "sbr"
に設定された Method
値と 2 つの反射を含む、RayTracing
モデルを返します (以前のリリースでは "image"
と 1 つの反射)。
イメージ手法を使用するレイ トレーシング伝播モデルを作成するには、構文 propagationModel("raytracing","Method","image")
を使用します。
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