MATLAB と Simscape Electrical を活用したパワーエレクトロニクス回路設計
Simscape Electrical は、エンジニアが設計の初期段階に回路トポロジーの検討、コンポーネントのサイズ決定、目的に応じた設計案の比較評価 (トレードスタディ) を行うことで、重要な意思決定に必要な情報を得られるようにします。メーカー定義の部品ライブラリやコンポーネントのインポート機能に加えて、電源、電気・電気機械負荷、能動/受動コンポーネント、事前構築済みコンバーター、制御系テンプレートを含む広範な回路素子ライブラリを利用することで、設計検討を迅速かつ柔軟に行うことができます。MATLAB に直接統合することで、変数や制約を考慮しながら、設計空間を素早く探索して絞り込むことができます。
MATLAB と Simscape Electrical を活用すると、電力コンバーターやインバーターを開発するエンジニアは、以下が可能になります。
Simulink のシステムレベルのシミュレーションを活用することで、より多くの設計オプションを検討して、トレードオフを比較できるようになったため、プロジェクトの設計フェーズにより多くの時間を割くことができました。その結果、修正にそれほど手間や費用がかからない段階で設計エラーや統合に関する問題を洗い出すことができました。
Simscape Electrical は、電力コンバーターの設計初期段階における体系的な設計検討とトレードスタディに向けて、主に以下の 2 つの利点を提供します。
これらの機能を組み合わせることで、自動化とモデル精度をプロジェクト要件に合わせて調整できる統合環境を実現します。
MATLAB を使って Simscape Electrical モデルの最適化やトレードスタディを実行することで、回路シミュレーション中に複数の目標を同時に検討できます。コスト、電力品質、帯域幅といった要因を優先しながら、最小効率または必要なゲインや位相余裕などの厳格な制約の適用が可能です。
Simscape Electrical は、特定の設計基準に対応するために、さまざまなモデル詳細度でコンポーネントを提供しています。これにより、同一のワークフロー内でシステムレベルの設計と詳細設計の両方の意思決定が可能になります。
シナリオ:
パワーエレクトロニクス半導体の忠実度レベル:
バッテリー、モーター、IC などにも、複数レベルのモデル忠実度が適用されます。適切な忠実度を選択することは、利用可能なデータの範囲内で実用的なモデルを構築する際に重要で、詳細の一部がわからなくても反復設計を可能にします。さらに、複雑な要素を抽象化することでモデル作成、保守、シミュレーションの効率を高めることができます。
Simscape Electrical は、メーカー定義のコンポーネントモデルを以下の 3 つの方法でサポートしています。
Simscape Electrical には Infineon® と Wolfspeed のコンポーネントデータが含まれており、適切なベンダーデータがあれば、任意のディスクリート デバイスの代表モデルを構築できるツールも用意されています。こうした機能により、電気、熱、制御の各領域にわたり、一貫性のある検証済みモデリングが可能になります。
Simscape Electrical は、既存のハードウェア設計ワークフローに適合しており、その多くは最終設計ファイルの生成に EDA やレイアウト設計ソフトを使用します。こうした連携を支援するために、Simulink ではコシミュレーションとモデルエクスポート機能を提供し、さまざまな設計環境での利用を可能にしています。PSpice や SIMetrix などの回路シミュレーションツールとのコシミュレーションにより、異なるプラットフォームの強みを同時に活用できます。回路モデルを C コードや HDL/Verilog コードとしてエクスポートすることで、EDA ツールでの利用を可能にし、SystemVerilog と統合して Simscape Electrical で作成されたモデルを EDA 環境内で実行できるようにします。
電力コンバーターの設計において、パッケージングとレイアウトは非常に重要です。Simscape Electrical は、忠実度レベルごとに詳細な損失計算を提供します。
Simscape Electrical は、Cauer や Foster といったネットワークを用いる熱モデリングを提供し、伝導、対流、放射による熱伝達のシミュレーションを可能にします。モデルには、液冷や二相冷却、熱交換器などの高度な詳細を含めることもできるため、回路設計時にアクティブ冷却の電力需要を考慮しながら、放熱戦略を評価することが可能です。
モーターやソレノイドなどの電気機械コンポーネントは、集中定数モデルから、インポートされた FEA 低次元モデル (ROM) まで、さまざまな忠実度レベルでモデリングできます。これらのモデルには、空間高調波や磁気飽和など、電気モーターで見られる非線形挙動を含む詳細な特性を組み込むことができます。必要に応じて熱挙動を追加することで、電気・機械分野にまたがる包括的な解析に対応できます。
Simscape Electrical を使って、電気と熱の領域をつなぐ統合電力システムモデルを作成しました。その結果、ミッションレベルのシミュレーション中に全体像が把握できるようになりました。太陽電池アレイを回転させるモーターをモデル化しなければならない場合でも、機械系コンポーネントを組み込む機能があります。
電力コンバーター開発では、補償器ループと物理回路設計が相互に作用しており、同時に開発することで良い結果が得られます。Simulink を活用すると、設計の初期段階からシステムレベルのシミュレーションを用いて、この相互作用を検討し、古典制御と高度な制御の両方を適用することができます。
Simulink を活用することで、エンジニアは以下のことが可能です。
制御設計と回路レベルのモデリングの統合により、エンジニアは制御性能とハードウェアのトレードオフを同時に評価することで、設計後期の変更を削減し、システム全体の堅牢性を高めることができます。
Simscape Electrical のコンポーネントを使用すると、故障のモデリング、注入、解析が可能になります。個々のコンポーネントにはあらかじめ定義された故障が含まれているため、専用の故障ブロックを使用することで、システムの任意の場所に開回路や短絡を注入することが可能です。故障は、シミュレーション条件、ユーザー入力、または特定のシミュレーション時間によって引き起こされます。シミュレーション環境では、こうした挙動が故障として識別されるため、すべての故障シナリオを専用の故障ウィンドウで管理することで、体系的な徹底した仮想故障評価が可能になります。この機能は、必要に応じて仮想故障モード影響解析 (FMEA) にも拡張可能です。
Simscape Electrical は、周波数ベースの解析と時間領域シミュレーションの両方をサポートしています。この機能は、電力品質、入力インピーダンス、ノイズ抑制、制御ループ設計の研究に不可欠です。Simscape Electrical ライブラリにあらかじめ用意されているコンバーターブロックを使用する場合、平均値モデルがモデル内に導出・統合されているため、解析的な周波数応答や伝達関数が手軽に利用できます。平均値モデルが適用できないような不連続性を含む自作トポロジーに対しては、Simulink Control Design の周波数応答同定ツールが利用可能です。これにより、小信号解析や平均値モデルの導出を手作業で行う必要がなくなります。周波数応答データは、制御や最適化などのアルゴリズムと統合したり、システム同定ツールと組み合わせて低次元の時間領域モデルを生成したりすることができます。手作業による数式解析は不要です。
MATLAB と Simulink は、ISO 26262 や IEC 61508 といった機能安全規格への準拠に向けた体系的なハードウェア設計ワークフロー内で要件のトレーサビリティを実現する包括的な環境を提供します。テキストベースの要件を回路モデル、シミュレーション、テスト結果に直接紐づけるデジタルスレッドの作成には、Simulink Requirements、Simulink Test、Simscape Electrical を使用します。
Requirements Toolbox を使用する前は、要件が正しいかどうかはハードウェアの試験段階になるまで分かりませんでした。要件をモデルに紐づけることで、各要件がどのように実装されているかや、それらの関係性を理解できるようになります。
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