グリッド・タイ・インバーター

グリッド・タイ・インバーターは、直流 (DC) を交流 (AC) に変換し、外部電源 (太陽光発電所など) の電気を電力網に投入できるようにするパワー エレクトロニクス デバイスです。グリッド・タイ・インバーターの中心となるのは、電力変換を行い、電力出力を促すためにパワー エレクトロニクスを調整するデジタル コントローラーです。

グリッド・タイ・インバーターの開発を行うエンジニアは、電力の変換と投入が安全かつ効率的に行われるようにデジタル制御を設計および実装します。デジタル コントローラーでは、以下の設計目標が特に重要です。

  • グリッドコードを遵守し NERC ガイドラインを満たす、安定した AC 電力出力の生成
  • さまざまな条件下における電力出力の最大化
  • 電力網の故障時におけるインバーターと電力網の接続の維持
  • 電力網の停止時における単独運転防止機能の提供

Simulink®Simscape Electrical™ を使用すると、グリッド・タイ・インバーター用のデジタル コントローラーの設計プロセスを高速化できます。

このコントローラーの設計プロセスは、電気システムのシミュレーションを使用した制御の設計と最適化、プラントとコントローラー向けのコード生成、ハードウェアインザループ (HIL) シミュレーションを使用した制御ハードウェアのテストという 3 つの主な段階で構成されます。

制御設計の段階、コード生成の段階、ハードウェアインザループ テストの段階の 3 ステップを示した図。

グリッド・タイ・インバーターのコントローラーの設計、シミュレーション、テストのワークフロー。

電気システムのシミュレーションを使用した制御の設計と最適化

Simulink と Simscape Electrical を使用すると、グリッド・タイ・インバーターの概略図モデルを作成し、パワー エレクトロニクス シミュレーションを実行できます。出力電圧を調整するための PID 制御などのインバーター制御アルゴリズムを設計および調整できます。最大電力点追従 (MPPT) アルゴリズムを使用すると、さまざまな条件下でインバーターの電力出力を最大化できます。また、故障による電力網の電圧低下時にコントローラーが無効電力のサポートを提供できるよう、フォルトライドスルー (FRT) アルゴリズムを設計することもできます。

グリッド・タイ・インバーターのデジタル制御手法に対して、IEEE® 1547-2018 などのさまざまなグリッドコードの遵守をテストすることで、対象のグリッドコードに完全に準拠しているかを確認できます。Simulink と Simscape Electrical には、電力システムのシミュレーションと最適化を実行する機能が用意されています。インバーターモデルを外部電源のモデル (太陽光発電プラントなど) および電力網モデルと接続することで、電力プラント、インバーター、電力網を含む電力システム全体をモデル化し、シミュレーションできます。

接続されたコンポーネント (左からソーラーパネルのコンポーネント、三相インバーターのコンポーネント、電力網のコンポーネント) を示した概略図ベースの Simulink モデル。

Simulink および Simscape Electrical での一般的なパワー エレクトロニクス トポロジを使用した太陽光発電 (PV) プラント、グリッド・タイ・インバーター、グリッドシステムの概略図ベースのモデル化。

Simscape™ のログを使用すると、インバーターの出力の特性など、モデルのシミュレーション結果を簡単に可視化できます。

相電圧と相電流の経時的変化を示した 2 つの正弦波サブプロットを含むプロット。

三相ソーラー インバーター モデルの相電圧と相電流のシミュレーション出力。

プラントとコントローラー用のコード生成

コントローラーのモデル化とシミュレーションの後、Embedded Coder® を使用してコントローラー用に最適化された欠陥のない C コードを生成できます。Embedded Coder 用のハードウェア サポート パッケージを使用すると、コードをサポート対象のマイクロ コントローラーに簡単に展開できます。また、Simulink Coder™ と HDL Coder™ を使用すると、プラント用の C および HDL コードの生成も可能です。生成されたコードは、Simulink Real-Time™ を実行するマルチコア CPU と FPGA を備えた Speedgoat® リアルタイム ターゲット マシンに展開できます。

HIL シミュレーションを使用した制御ハードウェアのテスト

マイクロ コントローラーと Speedgoat ターゲット マシンにコードを展開すると、パワー エレクトロニクス ハードウェアインザループ (HIL) テストを行って、正常な状態と故障状態におけるインバーターのデジタル制御を徹底的にテストできます。

Simulink モデル、シミュレーション出力のスイッチング動作、パワー エレクトロニクス制御設計のテスト用のハードウェアの設定を並べて示した説明図。

パワー エレクトロニクスのスイッチング ダイナミクスを含むハードウェアインザループ (HIL) テスト。

HIL シミュレーションにより、運用環境のハードウェアをリアルタイム システムに置き換えることができます。それにより、テストにかかるコストを軽減できるほか、高電圧がかかっている運用環境の電気システムで発生しうる損害や危険の回避にも役立ちます。HIL テストを使用することで、特に故障状態におけるグリッド・タイ・インバーターのデジタル制御のテストを簡単、迅速、安全に自動化できます。


製品使用例および使い方

ビデオ:

ユーザー事例:

例:


ソフトウェア リファレンス

参考: シミュレーション ソフトウェア, モデル化とシミュレーション, 電動化向け Simulink, PID 調整, 組み込みコード生成向け MATLAB および Simulink, Simulink Real-Time によるリアルタイム シミュレーションとテストでサポートされている Speedgoat ハードウェア, ドループ制御, グリッドフォーミング インバーター