Sandia National Laboratories がハワイのマイクログリッドと太陽電池システムのシミュレーションを実行
課題
新しい太陽光発電施設から安定した電力供給を行うためのバッテリ容量と制御システムを検討すること
ソリューション
Simulink と Simscape Electrical を使用して、太陽光発電を取り入れたマイクログリッド送電システムのモデル化およびシミュレーションを実行
結果
- モデルの開発期間を 80% 短縮
- 適切なバッテリ サイズの選択でコストを削減
- 実際のデータでシミュレーションの精度を検討
Hawaii Clean Energy Initiative の主な目標は、2030 年までにハワイ州のエネルギー需要の 70% を満たすように、エネルギーの効率性を向上し、再生可能なエネルギーの生産を増やすことにあります。このイニシアチブの一環として、Castle & Cooke Company は、Maui Electric Company が電力を提供しているラナイ島に 1.2 メガワットの太陽光発電 (PV) ソーラー ファームを建設しました。
PV システムを設置するにあたって、Maui Electric は Sandia National Laboratories と協力して、既にラナイ島に電力を提供していたディーゼル発電機との統合が確実かつ効率的に実行できるように確認を行いました。Sandia は Simulink® と Simscape Electrical™ を使用してラナイ島のマイクログリッドのモデルを作成し、シミュレーションを行ってさまざまな構成や制御のオプションを検討しました。
Sandia の技術者である Ben Schenkman 氏は次のように述べています。「Simscape Electrical では多くのシステム コンポーネントのモデルが用意されているので、当社で構築しなければならないものはほとんどありませんでした。また、Simulink 環境に簡単に実際のデータを導入でき、モデル化、シミュレーション、検証のプロセス全体を非常に効率的に進めることができました。」
課題
Sandia では太陽光による発電が低下または停止した場合に、送電システム全体の安定を保つためにどの程度のバッテリ容量が必要かを見極めたいと考えていました。太陽電池アレイが雲で陰ると発電量は低下します。このためバッテリは、ディーゼル発電機が負荷を補えるようになるまで電力を提供できるだけの容量がなければなりません。しかし、バッテリの容量が大きすぎると、ラナイ島の Maui Electric の顧客は何万ドルもの不要なコストを負担しなければならなくなります。
費用対効果と信頼性の高いソリューションを特定するために、Sandia ではマイクログリッドをモデル化し、さまざまな制御方法、日照条件、バッテリ サイズを使用してシミュレーション結果を比較する必要がありました。
Sandia ではこの評価をわずか 3 か月で完了しなければならないため、モデルをすばやく作成しなければなりませんでした。また、モデルを将来の変化に合わせて調整できることも主な必要条件でした。Schenkman 氏は次のように述べています。「新しい発電機や、ウィンド ファームなどの他の再生可能なエネルギー源の導入も計画されていましたが、まだその詳細は分かっていませんでした。このため、Maui Electric が将来再利用できるように、柔軟で他のエンジニアが簡単に理解できるモデルを作成しなければなりませんでした。」
ソリューション
3 名のエンジニアで構成される Sandia のチームは Simulink と Simscape Electrical を利用して、ラナイ島のマイクログリッドを構成する監視制御システム、太陽電池アレイ、パワー インバーター、バッテリ、従来型の発電機、ならびにシステムの負荷をモデル化し、シミュレーションを行いました。
Simulink では、Simscape Electrical からの 1 台の発電機と単純な一定電流負荷を使用して、ラナイ島の既存システムの簡素化したモデルが作成されました。
Maui Electric からは、太陽電池アレイをモデル化するために、負の負荷を使用したシステムの Siemens® PSS®E モデルが提供されました。Simulink モデルを検証するために、Sandia のエンジニアは Simscape Electrical の Three-Phase Dynamic Load ブロックを追加して負の負荷を再現し、Simulink でシミュレーションを実行して、その結果を PSS/E の結果と比較しました。
次に、Simulink でモデルを微調整し、必要なバッテリの容量と制御システムを追加しました。基本的な太陽光発電モデルは、日射条件、電圧制御式電流電源、ローパス フィルターを組み込んだより現実的なモデルに置き換えられました。また、3 相 d-q 制御バッテリ電源、4 象限インバーター、追加の負荷、より高度な制御システムも追加されました。
さまざまな制御パラメーターやバッテリ サイズを検討するため、Sandia ではラナイ島のセンサーで収集された実際の日射データを取り入れて、Simulink でシミュレーションを実行しました。
Sandia の研究者は MATLAB® を使用してセンサーからのデータをさらに詳しく解析して、より詳細な日照プロファイルを作成し、将来の太陽光発電モデルの精度の向上に役立てる予定です。
バッテリの設置が進む中、Sandia の研究者は、高度なマイクログリッド制御システムを研究開発する社内プロジェクトの基礎として、ラナイ島の Simulink モデルを使用しました。
この研究開発プロジェクトでは、Simulink Coder™ を使用してモデルから C コードが生成され、Opal-RT eMEGAsim を使用してリアルタイム シミュレーションが行われました。
このシミュレーションでは、高度な制御システムと電力の需要にすばやく対応できる発電機を使用することで、FACTS 機器を追加する必要はないことが証明されました。現在 Sandia では、太陽光発電と風力発電システムの設置計画が進められています。
結果
- モデルの開発期間を 80% 短縮. Schenkman 氏は次のように述べています。「Simulink と Simscape Electrical を利用することで、手書きでコードを作成すれば 2 週間はかかるモデルを 1 日か 2 日で開発できました。」
- 適切なバッテリ サイズの選択でコストを削減. Schenkman 氏は次のように述べています。「当初の見積もりでは、ラナイ島のシステムには 700 キロワット時のバッテリが含まれていました。しかし Simulink のシミュレーションによって、半分のサイズのバッテリで十分なことと、柔軟FACTS機器は必要のないことが判明しました。これらを合わせると、合計で 20 万ドル以上のコストを節約できました。」
- 実際のデータでシミュレーションの精度を検討. Schenkman 氏は次のように述べています。「Simulink 環境では、コマンド 1 つで実際のセンサー データを取り込むことができます。これによって、プロジェクトの早期段階でモデルの開発と定量的な検証を行うことができ、シミュレーションが正確であることを確認できます。」