DC-DC コンバーター制御

DC-DC コンバーター制御とは

DC-DC コンバーターは、直流 (DC) をある電圧レベルから別の電圧レベルに変換するパワー エレクトロニクス回路です。DC-DC コンバーターには、降圧型 (ステップダウン)、昇圧型 (ステップアップ)、昇降圧 (ステップアップとステップダウンの両方が可能)、より複雑なシングルエンド一次インダクタンス コンバーター (SEPIC) など、さまざまなトポロジがあります。DC-DC コンバーター制御では、サイリスタ、MOSFET、IGBT、ダイオードなどの半導体パワーデバイスの高速スイッチングを行い、エネルギー貯蔵素子 (インダクタやコンデンサ) を周期的に充放電させることで、高効率な電圧変換を実現します。DC-DC コンバーターは現代の電子機器に不可欠な要素であり、さまざまなコンポーネントで必要な幅広い DC 電圧範囲内において、バッテリーやその他の直流電源を使用できるようになります。これらのコンバーターの制御方法は、所望の出力電圧を維持し、さまざまな負荷条件にわたって効率的な電力マネジメントを実現するために不可欠です。

DC-DC コンバーター コントローラーの設計

パワー エレクトロニクス エンジニアは、MATLAB® 製品および Simulink® 製品を使用して、同じシミュレーション環境でアナログ電子部品とデジタル制御アルゴリズムをモデル化できます。エンジニアは、負荷条件や入力電圧の変動がある中で出力電圧や電流を制御する必要がある場合に、DC-DC コンバーターのデジタル制御を選択します。電力段と制御アルゴリズムの閉ループのシミュレーションにより、コントローラーを実装する前に設計の選択肢を評価および検証できます。

次のような重要な設計タスクの一環としてシミュレーションを使用することで、DC-DC コンバーター制御システムのロバスト性を確保しながら、設計仕様を満たすことができます。

  • 電圧制御用フィードバック コントローラーの設計
  • コントローラー設計と同時に RLC コンポーネントを最適化
  • 半導体スイッチの定常および動的特性の推定
  • 動的性能と電力品質の解析
  • 組み込みマイクロプロセッサまたは FPGA 上でのデジタル コントローラーのプロトタイピングと実装
電力段と昇圧コンバーターを制御するデジタル コントローラーを示すブロック線図。

昇圧コンバーター制御の Simulink ブロック線図。

Simulink を使用することで、DC-DC コンバーター制御システムの設計、妥当性確認、および実装が可能で、ハードウェアテスト開始時に意図したとおりに動作することを確認できます。以下を行うことができます。

  • 標準的な回路コンポーネントまたは事前構築済みのコンバーターブロックを使用して、電力段をモデル化する。
  • さまざまなモデル詳細度でのコンバーターモデルをシミュレーションする: システムダイナミクスの平均化モデル、スイッチング特性のビヘイビアモデル、および寄生成分と詳細設計のための詳細な非線形スイッチングモデル。
  • 電圧モード制御や電流モード制御など、さまざまなコントローラー アーキテクチャを設計、シミュレーション、および比較する。
  • AC 周波数スイープや擬似ランダム バイナリ シーケンス (PRBS) などの手法および他のシステム同定手法を使用した、スイッチング効果を含む非線形コンバーターモデルに対して、ボード線図および根軌跡を使用した対話型のループ整形などの古典制御手法を使用する。
  • 自動調整ツールを使用した単一または複数のフィードバックループにおけるコントローラーゲインを自動調整する。動作点の変動を考慮したゲインスケジューリング コントローラーを設計する。
  • ハードウェア プロトタイプで検証する前に、ハードウェアインザループ (HIL) の設定で電力コンバーター制御のリアルタイム実行をテストする。
  • テストケースを生成することにより、制御設計における一般的なエラーを特定して修正し、高価なハードウェア プロトタイプへの潜在的な損害を防止する。
  • マイクロ コントローラーへの実装用に最適化され安定した C/C++ 制御コード、または FPGA プログラミングや ASIC プロトタイピング用に合成可能な HDL コードを生成する。

エンジニアは、MATLAB、Simulink、および Simscape Electrical™ を使用して、同じ環境で DC-DC コンバーター制御アルゴリズムの設計、シミュレーション、およびテストを行うことができます。詳細なモデル化により、さまざまなシナリオでコンバーターのパフォーマンスを評価し、結果をリアルタイムで可視化できます。

Embedded Coder® を使用すれば、コントローラーの量産コードを生成し、ハードウェアインザループ テストを実行して、さまざまな動作条件下での DC-DC コンバーターの性能を評価できます。この手法により、設計者はリスクを軽減し、パフォーマンスを最適化し、構想から市場投入可能なソリューションまでの道のりを加速できます。

MATLAB および Simulink による DC-DC コンバーター制御の設計方法については、Simulink Control Design™Control System Toolbox™、および HDL Coder™ を参照してください。


参考: モデル化とシミュレーション, Simulink Design Optimization™, Simulink Real-Time™, パワー エレクトロニクス シミュレーション, Dual Active Bridge