シミュレーションデータインスペクターでのシミュレーションデータの表示

シミュレーションデータインスペクターを使用して、シミュレーション時にログに記録したデータなど、設計プロセス全体を通して生成したデータを可視化できます。テストデータとその他の記録されたデータをシミュレーションデータインスペクターにインポートして、記録されたシミュレーションデータと一緒に検査および解析することもできます。シミュレーションデータインスペクターへのデータのインポートの詳細については、Import Data from Workspace or File into Simulation Data Inspectorを参照してください。

Simulink^® モデルでログに記録したシミュレーションデータは、シミュレーションデータインスペクターのログに記録されます。シミュレーションデータインスペクターにはいくつかのタイプのプロットがあり、これらのプロットを使用して、データの複雑な可視化を簡単に作成できます。詳細については、シミュレーションデータインスペクターを使用したプロットの作成を参照してください。

ログデータの表示

ログに記録された多くのタイプのデータは、モデルのシミュレーション時にシミュレーションデータインスペクターに自動的にストリーミングされます。シミュレーションデータインスペクターにストリーミングされたデータは、シミュレーション後にも使用可能です。その他のタイプのログに記録されたシミュレーションデータは、シミュレーションの一時停止時、停止時、または完了時にのみシミュレーションデータインスペクターで表示されます。そうしたタイプのログに記録されたデータを表示するには、[コンフィギュレーションパラメーター] ダイアログボックスを開き、[データのインポート/エクスポート] ペインで [ワークスペースデータのログをシミュレーションデータインスペクターに記録] を選択します。シミュレーションデータのログ記録の詳細については、シミュレーションデータの保存を参照してください。

シミュレーションデータのタイプ	シミュレーションの実行中および実行後に表示できるデータ	シミュレーションの一時停止、停止、または完了後に表示できるデータ
出力	`Dataset` 形式を使用してログに記録された出力データ	[ワークスペースデータのログをシミュレーションデータインスペクターに記録] パラメーターがオンになっているときに `Dataset` 以外の形式でログに記録された出力データ
信号データ	以下のいずれかの方法でログに記録された信号データ信号のログ Record ブロック To Workspace ブロック	[ワークスペースデータのログをシミュレーションデータインスペクターに記録] パラメーターがオンになっているときに以下を使用してログに記録された信号データ To File ブロックデータをワークスペースにログ記録するように構成された Scope ブロック
ステート	`Dataset` 形式を使用してログに記録された状態データ	[ワークスペースデータのログをシミュレーションデータインスペクターに記録] パラメーターがオンになっているときに `Dataset` 以外の形式でログに記録された状態データ
データストア	すべてのデータストアのデータ	該当なし

メモ

Structure または Array 形式を使用して状態および出力をログに記録する場合は、シミュレーションデータインスペクターに記録するデータの時間も記録しなければなりません。

シミュレーションデータインスペクターの [検査] ペインのテーブルには使用可能なデータが表示されます。信号をプロットするには、信号の隣のチェックボックスをオンにします。レイアウトを変更して、さまざまな可視化を追加し、シミュレーションデータを解析できます。

The Inspect pane of the Simulation Data Inspector shows a time plot of the alpha, rad signal for two runs.

シミュレーションデータインスペクターは、受信したシミュレーションデータをアーカイブを使用して管理します。既定では、新しいシミュレーションを開始するときに、以前の実行がアーカイブに移動します。アーカイブから信号をプロットすることも、アーカイブから作業領域に対象の実行をドラッグして戻すこともできます。

複素数データの表示

ライブスクリプトを開く

complexSignal モデルは 2 つの複素信号をログ記録します。Complex Square Wave 信号は Outport ブロックを使用してログ記録されます。Complex Sine Wave 信号は信号ログを使用してログ記録されます。モデルを開きます。

mdl = "complexSignal";
open_system(mdl)

The complexSignal model

モデルをシミュレートします。次に、シミュレーションデータインスペクターでシミュレーションデータをプロットします。

out = sim(mdl);
Simulink.sdi.plot(out);

複素信号の可視化方法は、シミュレーションデータインスペクターの [プロパティ] ペインを使用して制御できます。以下の複素数形式オプションから選択できます。

Magnitude
Magnitude-Phase
Phase
Real-Imaginary

信号テーブルから Complex Square Wave 信号を選択します。次に、[複素数形式] ドロップダウンメニューで Real-Imaginary を選択します。[複素数形式] で Magnitude-Phase または Real-Imaginary を選択した場合、シミュレーションデータインスペクターは信号の両方の成分をプロットします。Real-Imaginary 形式の信号では、[ラインの色] で信号の実数成分の色を指定し、虚数成分を [ラインの色] の異なる色調で表示します。

The Complex Square Wave and Complex Sine Wave signals plotted in the Simulation Data Inspector using Real-Imaginary format

信号ログを使用してデータをログに記録する場合は、モデル内の信号に対してInstrumentation Propertiesを使用して信号の既定の複素数形式を変更することもできます。Complex Sine Wave 信号の [インストルメンテーションのプロパティ] にアクセスするには、その信号のログバッジを右クリックし、[プロパティ] を選択します。[複素数形式] ドロップダウンメニューから Magnitude-Phase を選択します。

モデルを再度シミュレートして、Magnitude-Phase 形式を使用してシミュレーションデータインスペクターで Complex Sine Wave 信号を可視化します。

out = sim(mdl);

The Simulation Data Inspector showing the Complex Square wave plotted using the Real-Imaginary format and the Complex Sine Wave is plotted using the Magnitude-Phase format.

String データの表示

ライブスクリプトを開く

シミュレーションデータインスペクターで、信号データと共に string データをログ記録または表示できます。モデル stringData で、Sine Wave ブロックの値が、スイッチが string の読み取りの Positive と Negative のどちらを出力に送るかを制御します。モデルを開きます。

mdl = "stringData";
open_system(mdl)

The stringData model

モデルをシミュレートします。

out = sim(mdl);

シミュレーションデータインスペクターを開きます。

Simulink.sdi.view

信号テーブルから Sine Wave 信号および Switch 信号を選択して結果をプロットします。string 信号がグラフィカルな表示領域の下部に表示されます。

A sine wave and string data plotted in the Simulation Data Inspector

[データカーソルを表示/非表示にします] を選択して、string 信号の値が正弦信号の値にどのように対応しているかを検証します。

A cursor displaying the values of the sine wave and the string data at time 2.8. The sine wave has a value of 0.35. The string data has a value of "Positive".

複数の string 信号をプロット上にプロットするとき、信号は、シミュレーションされた、またはインポートされた順に積み重なり、最近の信号が最上位に位置しています。たとえば、スイッチを制御している正弦波の位相を変更します。次に、モデルのシミュレーションを再度実行します。シミュレーションデータインスペクターで、両方の実行のすべての信号を選択して、両方のシミュレーション結果を 1 つのプロットで可視化します。ラインの色を変更することで、2 つの実行を区別しやすくすることが可能です。2 つ目の実行の string データは、最初の実行の string データの上に重ねられます。

The results of two runs plotted in the Simulation Data Inspector. The string data from the newest run is stacked on top of the string data from the previous run.

多次元データの表示

ライブスクリプトを開く

シミュレーションデータインスペクターで多次元信号データを表示および解析できます。多次元信号値をもつ信号を表示するには、配列プロットを使用します。モデル MultiDim には 6 つの Sine Wave ブロックが含まれています。各 Sine Wave ブロックは前の Sin Wave から垂直方向に 1 ずつずれており、Mux ブロックに接続されています。Mux ブロックからの出力は、Outport ブロックを使用してシミュレーションデータインスペクターにログ記録されます。

モデルをシミュレートします。次に、シミュレーションデータインスペクターを開きます。

mdl = "MultiDim";
sim(mdl);
Simulink.sdi.view

配列プロットにデータをプロットするには、[可視化とレイアウト] をクリックします。次に、[配列] を選択します。配列プロットで多次元のサンプル値をもつ信号をプロットすると、ステムプロットで特定の時間に各サンプルの値が表示されます。プロットの右上隅に時間が表示されます。信号の次元が信号名の横に小かっこで囲んで表示されます。たとえば、多次元信号 MultiDimSig には 6 つのチャネルが含まれているため、データの配列プロットには 6 つのマーカーが含まれています。

An array plot in the Simulation Data Inspector displaying the sample values of the multidimensional signal MultiDimSig at time t=10 seconds

多次元のサンプル値をもつ単一の信号からの多次元信号の表現を、チャネルと呼ばれるスカラーのサンプル値をもつ一連の信号に変換することもできます。チャネルに変換すると、時間プロット、XY プロット、マップ、またはスパークラインを使用してデータをプロットできます。配列プロットでの多次元信号のプロットと、時間プロットでの個別チャネルのプロットの差異を確認するために、シミュレーションを再度実行します。

sim(mdl);

2 つ目の実行の多次元信号をチャネルに変換するために、シミュレーションデータインスペクターで信号名の横に小かっこで囲んで示されている信号の次元をクリックします。次に、[チャネルに変換] を選択します。

Conversion menu for a multidimensional signal in the Simulation Data Inspector

[可視化とレイアウト] メニューで、2x1 レイアウトを選択します。下のサブプロットで、最初の実行の多次元のサンプル値をもつ信号を配列プロットとしてプロットします。上のサブプロットで、2 つ目の実行のチャネルを時間プロットとしてプロットします。特定の時間における各チャネルの値を表示するには、カーソルを時間プロットに追加します。1 つのカーソルをサブプロットに追加するには、[データカーソルを表示/非表示にします] の横にある矢印をクリックします。次に、[1 つのカーソル] を選択します。

カーソルをドラッグすると、配列プロットのサンプル値が変化することがわかります。カーソルで時間を移動すると、配列プロット内の各サンプル値の表示が変化し、その特定の時間における該当する要素の値が表示されます。この場合、両方の実行に同じデータが含まれているため、配列プロット内の値は、時間プロットで対応している各チャネルに対してカーソルで表示される値と一致しています。たとえば、カーソルが 3.6 秒に配置されている場合、配列プロットの右上隅に表示される時間も 3.6 になり、配列プロット内の最初のサンプルの値は時間プロットで MultiDimSig(1) 信号に対してカーソルで表示される値と等しくなっています。

The Simulation Data Inspector with two vertically aligned subplots. In the upper subplot, six sine wave signals are plotted in a time plot, and a cursor is positioned at 3.6 seconds. In the lower subplot, the MultiDimSig signal with multidimensional sample values is plotted in an array plot at 3.6 seconds.

データを再生することでも、配列プロット内の値が経時的に変化することを確認できます。[再生コントロールの表示/非表示を切り替えます] をクリックします。その後、[再生] をクリックします。

フレームベースのデータなどの多次元の信号データの検査および解析の詳細については、Analyze Multidimensional Signal Dataを参照してください。

フレームベースのデータの表示

一部のアプリケーションは信号の複数のサンプルを "フレーム" にバッファーすることで、フレーム内の各サンプルを個別に処理するのではなく、単一の計算で処理します。フレームベースの信号を処理する場合、データをフレームごとに解析するか、バッファリングを解除してフレームなしで信号を解析することができます。

データを点ごとに処理するのではなくフレームで処理すると、一部のアプリケーションで必要となるパフォーマンスの向上がもたらされます。フレームベースの信号をサンプルベースとしてログ記録した場合、シミュレーション後にシミュレーションデータインスペクターでフレームを変換できます。シミュレーションデータインスペクターにおけるフレームベースのデータの表示の詳細については、View Multidimensional Signals Using the Array Plotを参照してください。

イベントベースのデータの表示

ライブスクリプトを開く

イベントデータをログ記録またはシミュレーションデータインスペクターにインポートできます。この例では、モデル SimpleMessagesModel で信号ログを使用して信号データおよびメッセージデータをログに記録します。モデルの詳細については、メッセージの送受信のアニメーション化および理解を参照してください。

mdl = "SimpleMessagesModel";
open_system(mdl)

The SimpleMessagesModel model

モデルをシミュレートします。シミュレーション中に以下が行われます。

Sine Wave ブロックが正弦波信号を生成します。
0.1 秒ごとに、Send ブロックが正弦波信号の値をメッセージに変換し、Queue ブロックに送信します。
Queue ブロックが Receive ブロックにメッセージを送信します。
Receive ブロックが再構成された正弦波信号を生成します。

out = sim(mdl);

シミュレーションデータインスペクターでデータをプロットします。シミュレーションデータインスペクターでメッセージデータがステムプロットとして表示されます。ステムの値は、特定のシミュレーション時間についてメッセージペイロードとして取得された正弦波のサンプルです。

Simulink.sdi.plot(out);

The Sine Wave:1 and Receive:1 signals and the Send:1 and Queue:1 messages plotted in the Simulation Data Inspector. The messages are displayed as stem plots. The Send:1 signal is selected. Because Send:1 is a message, in the Properties pane, the Interp Method is none (event-based).