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モデルベースの状態インジケーター

モデルベースの状態インジケーターは、システム データをモデルに当てはめて、そのモデルを使用して追加の処理を実行することで導出された数量です。状態インジケーターは、システム性能の劣化とともに変化する、モデルの様相を捉えます。モデルベースの状態インジケーターは、次のような場合に役立ちます。

  • 信号解析からの特徴だけを使用して適切な状態インジケーターを特定するのが困難な場合。この状況は、マシンの故障状態とは別に他の要因が信号に影響する場合に発生する可能性があります。たとえば、測定する信号が、システムの他の場所にある 1 つ以上の入力信号に応じて変化することがあります。

  • システムまたは基本プロセスに関する知識があり、システムの動作の何らかの側面をモデル化できる場合。たとえば、システムについての知識から、システムの劣化とともに変化する時定数などのシステム パラメーターがあるとわかっている場合があります。

  • 現在のシステムの状態に基づいて将来のシステム動作の予測やシミュレーションを実行する場合 (残存耐用期間を予測するモデルを参照)。

こうしたケースでは、データを何らかのモデルに当てはめ、信号の直接の解析からではなく、モデルから抽出した状態インジケーターを使うと便利で効率的な場合があります。モデルベースの状態インジケーターは、静的モデルと動的モデルの両方を含め、使用するデータとシステムに適している任意のタイプのモデルをベースにすることができます。モデルから抽出する状態インジケーターは次のような数量にできます。

  • 線形近似の係数などのモデル パラメーター。こうしたパラメーター値の変化は故障状態を示すことがあります。

  • 分散などのモデル パラメーターの統計プロパティ。健全なシステム性能で想定される統計範囲を外れるモデル パラメーターは、故障を示すことがあります。

  • 状態の推定により取得されたシステムの状態値、または推定された動的モデルの極配置や減衰係数などの動的プロパティ。

  • 動的モデルのシミュレーションから派生した数量。

実際には、使用するマシン、データ、故障状態に最適の状態インジケーターを見つけるには、各種のモデルを調査し、さまざまな状態インジケーターを使って実験する必要が生ずる場合があります。モデルベースの状態インジケーターを特定するために利用できる方法は数多くあります。以下の節に一般的な方法の概要を示します。

静的モデル

定常状態のシステム動作からデータを取得した場合、データを静的モデルに当てはめ、そのモデルのパラメーターを使用して状態インジケーターの抽出を試みることができます。たとえば、さまざまな時間やさまざまな状態下において、各種マシンの何らかの特性曲線を測定することにより、データのアンサンブルを生成するとします。その後、多項式モデルを特性曲線に当てはめ、結果の多項式係数を状態インジケーターとして使用できます。

定常状態実験を使用した遠心ポンプの故障診断の例ではこの方法を利用しています。この例のデータは、健全な定常状態動作中にポンプのアンサンブルで測定された、ポンプの揚程と流量間の特性的関係を表しています。例では単純な線形近似を実行してこの特性曲線を記述します。アンサンブル全体で最適な近似パラメーターにいくらかの変動が見られるため、この例では結果のパラメーターを使用して、近似パラメーターの分布と信頼領域を決定します。テスト データセットを使って同じ当てはめを実行することでパラメーターが得られ、これらのパラメーターを分布と比較することで故障の尤度が得られます。

静的モデルを使用して健全状態のデータと故障状態のデータのグループ化された分布を生成することもできます。テスト データから新しいポイントを取得する場合、仮説検定を使ってそのポイントが属する可能性が最も高い分布を判定できます。

動的モデル

動的システムでは、測定される信号 (出力) の変化がシステムの他の場所にある信号 (入力) の変化に依存します。このようなシステムの動的モデルを使用して状態インジケーターを生成できます。一部の動的モデルは入力データと出力データの両方に基づいていますが、時系列の出力データだけを基に当てはめられるものもあります。そうしたモデルの当てはめを行うために、基本の動的プロセスの既知のモデルは必ずしも必要ありません。ただし、システムに関する知識は、当てはめるモデルのタイプや構造を選ぶうえで役立つことがあります。

モデルの当てはめに使用できるいくつかの関数には以下があります。

  • ssest — 時間領域の入出力データまたは周波数応答データから状態空間モデルを推定します。

  • ar — 時系列データから最小二乗自動再帰 (AR) モデルを推定します。

  • nlarx — ウェーブレット ネットワーク、ツリー分割、シグモイド ネットワークなどの動的な非線形性推定器を使用して非線形動作をモデル化します。

recursiveARX のように、データを収集しながらリアルタイムでモデルを当てはめることのできる、再帰的推定の関数もあります。同定手法を使用したシステムの急激な変化の検出の例ではこの方法を説明しています。

モデルの当てはめに使用できる追加の関数については、状態インジケーターの特定を参照してください。

モデルのパラメーターまたはダイナミクスに基づく状態インジケーター

モデルのどのパラメーターも、有用な状態インジケーターとして機能する可能性があります。静的モデルと同様に、統計的な信頼限界を外れるモデル パラメーターや値の変化は故障状態を示すことがあります。たとえば、ssest を使用して状態空間モデルを同定する場合、故障状態の発現に伴い極配置または減衰係数が変化することがあります。damppolezero などの線形解析関数を使用して、推定モデルからダイナミクスを抽出できます。

別の方法として modalfit があります。これは信号を固有の周波数応答関数をもつ複数のモードに分離することで動的な特性を特定します。

時として、システム ダイナミクスの一部がわかっており、不明なパラメーターをもつ微分方程式やモデル構造を使用してこれを表現できることがあります。たとえば、システムのモデルを時定数、共振周波数、減衰係数などの物理パラメーターを使って求めることができても、これらパラメーターの正確な値は不明であるかもしれません。この場合、線形または非線形の "グレーボックス" モデルを使用してパラメーター値を推定し、各種の故障状態によるこれらのパラメーター値の変化を追跡できます。グレーボックス推定に使用できる関数には、pem および nlarx が含まれます。

Simulink® モデルも、パラメーター推定のためのグレーボックス モデルとして使用できます。Simulink を使用して、物理的に有意なパラメーターにより健全な状態と故障状態の両方でシステムをモデル化し、システム データに基づいてこれらのパラメーターの値を推定できます (たとえば、Simulink Design Optimization™ のツールを使用)。

残差に基づく状態インジケーター

動的モデルを使用するもう 1 つの方法では、モデルをシミュレートして、その結果をモデルの基となった実際のデータと比較します。システム データと推定モデルのシミュレーションの結果との差を "残差信号" と呼びます。残差分析を使用した遠心ポンプの故障診断の例では、推定された nlarx モデルの残差信号を解析します。この例は、残差信号のいくつかの統計的特徴とスペクトルの特徴を計算します。これらの状態インジケーターの候補をテストして、健全な動作といくつかの異なる故障状態との区分を最も明確に提示するのはどれかを判定します。

残差ベースのもう 1 つの方法は、さまざまな健全状態と故障状態を表すアンサンブル データに対して複数のモデルを同定することです。テスト データに対し、その後これらのモデルそれぞれについて残差を計算します。残差信号が最小になる (したがって最適適合である) モデルによって、テスト データに当てはまる可能性の最も高い健全状態または故障状態が示されます。

nlarxarssest などのコマンドを使って取得された同定モデルの残差分析では、次を使用します。

  • sim — 入力信号に対するモデル応答をシミュレートします。

  • resid — モデルの残差を計算します。

パラメーターベースの状態インジケーターの場合と同様に、Simulink を使用して残差分析のためのモデルを構成することもできます。データに基づくモデルを使用した故障検出の例にも、シミュレーション データから同定されたモデルを使用する残差分析の方法が示されています。

状態推定器

システム状態の値が状態インジケーターとして役立つ場合もあります。システムの状態は物理パラメーターに対応しており、したがって、状態値の急激なあるいは予期しない変化は故障状態を示す可能性があります。unscentedKalmanFilterextendedKalmanFilterparticleFilter などの状態推定器によって、システム状態の値をリアルタイムで追跡し、そうした変化を監視することができます。以下の例では、故障検出のための状態推定器の使用方法を示します。

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