ホワイトペーパー

はじめに

6G テクノロジーは、かつてない高速、大容量、低遅延の実現が期待される次世代の無線通信です。5G の基礎の上に構築され、今までにない用途やサービスを可能にする新しい機能をもたらします。5G ネットワークでは、sub-6 GHz とミリ波周波数の組み合わせや、Massive MIMO、ビームフォーミング、ネットワーク スライシングなどの高度な技術を使用して、高速で超高信頼かつ低遅延の通信を実現しています。しかし、5G には、スペクトル不足、エネルギー効率、およびカバレッジなど、依然として課題が残っています。6G は、これらの課題を克服し、さらに高い性能目標を達成することを目的としています。

6G ではテラビットの速度、1 マイクロ秒の遅延、および 5G よりもはるかに優れた容量を実現できるようになるという予測もあります。これを達成するため、6G では、テラヘルツやサブテラヘルツなどの高い周波数帯域、知能電波反射面、AI (人工知能)、新しい波形と物理層の手法など、実現のためのさまざまな技術が使用されます。また、6G では、ユビキタスカバレッジの実現のために衛星ネットワークや非地上系プラットフォームも活用します。

6G の開発はまだ初期段階にありますが、国際組織や業界関係者により、いくつかのマイルストーンが設定されています。ITU (国際電気通信連合) は、6G の実現に向けた要件およびロードマップを定義するために、IMT-2030 ビジョンプロジェクトを立ち上げました。3GPP は、beyond-5G システムに関する研究を開始しており、6G 向けの最初の規格を 2028 年までにリリースする予定です。いくつかの国では、6G 向けの研究構想やテストベッドにも着手しています。

6G の潜在的な用途は、多様で広範囲に及びます。6G では、新しいメトリクスおよびサービス品質のパラメーターを必要とする通信の新しいパラダイムも実現可能であり、ユーザーの満足度とシステム効率が確かなものとなります。

アルゴリズム、波形、チャネルモデル、RF トランシーバー、アンテナおよびビームフォーミングなど、成功する 6G 無線システムを構成するさまざまなコンポーネントを示す概略図。

MATLAB 製品を使用して、6G 無線システムのデジタル、RF/アナログ、およびアンテナ/アレイコンポーネントを組み合わせて最適化します。

6G を市場に導入する複雑さを考えると、研究者や無線エンジニアは、さまざまなソフトウェアツールを使用してシミュレーション、テスト、および実験を厳密に行う必要があります。MATLAB® などのプログラムは、6G によりもたらされる最も困難な研究課題への取り組みに欠かせません。このホワイトペーパーでは、次世代の無線技術の構築を始める際に利用できる、いくつかの主要なツールについてご紹介します。

セクション

6G のユースケースおよび要件

5G は世界中で導入と運用が進んでいます。しかし、多くの領域において物理世界と仮想世界の継続的コンバージェンスは性能要件をさらに拡大させており、長期的に見れば 5G はその限界に達します。そのため、次世代 (6G) の無線システムは、2030 年以降に向け、まったく新しい種類の用途やサービスに適合可能なかつてないサービス品質レベルを実現する必要があります。

センサーが取り付けられた航空機、スマートフォン、車など、さまざまな技術のコラージュ写真。

6G は、さまざまな技術の進歩に役立ちます。

一部の研究者は、既存の 5G のユースケースを超える改良を加えるには、6G がホログラフィック コミュニケーション、エクステンデッド リアリティ (XR)、大規模デジタルツイン、および超大規模 IoT (Internet of Things) など、厳しい要求のある用途に対応する必要があると考えています。このようなユースケースでは、膨大なデータが生成され、正確な位置での超高速ビットレートが求められることから、5G の性能よりも明らかに優れたネットワーク効率の実現が求められます。また、このような用途では、大量のデータを基にしたリアルタイムの意思決定を可能にする、5G を超えるインテリジェンス機能も必要になります。

6G の適用分野は、高水準の機能要件および性能要件に基づいて、いくつかのカテゴリに分類することができます。このホワイトペーパーでは、4 つのカテゴリに焦点を当てています。

  • ネットワークに対応したロボティクスおよび自律システム: システムがセンサーの使用により環境を知覚して自然な方法で人間とやりとりを行い、一連のタスクをアシストまたはサポートするために必要な意思決定を行う分野。この分野には、製造業向けのサービスロボットとデジタルツイン間でのオンラインによる共同作業などが含まれます。
  • 多感覚拡張現実: 環境に順応したハプティクス、ビジュアル、およびオーディオによる高い没入感のある体験をもたらす高度な仮想現実 (VR) や拡張現実 (AR) に関する分野。この分野には、複合現実の共同設計および複合現実のテレプレゼンスなどが含まれます。
  • 分散センシングおよび分散通信: 大規模なセンサーおよびデータ収集ネットワークを使用したユースケース。この分野には、人体内通信や没入型スマートシティが含まれます。
  • 持続可能な開発およびインクルーシブなコミュニケーション: このカテゴリのユースケースでは、デジタルサービスをグローバルに利用できるようにすることで不公平をなくし、デジタル インクルージョンを実現することに重点が置かれています。これには、無線インターネットではこれまで提供するのが難しかった地域における遠隔医療サービス、デジタル利用の拡大、およびその他の教育リソースが含まれます。
セクション

6G リサーチエコシステム

6G 標準化作業は、2025 年になるまでは開始されないことが見込まれていますが、6G の内容を概念化するための取り組みは、世界中で始まっています。以下では、6G リサーチエコシステムの概要を作成するための世界での取り組みや活動の例をご紹介します。

国際的には、国際電気通信連合 (ITU) の無線通信部門 (ITU-R) から委託された作業部会 (WP 5D) が、勧告の形式で 2030 年以降のモバイル通信のためのビジョンを作成することになっています。

北米では、Next G Alliance が 6G 研究開発における北米のリーダーシップ確立を目指しています。

ヨーロッパでは、Smart Networks and Services Joint Undertaking (SNS JU) が 6G 研究開発の指揮をとっています。さらに、6G に関する EU 出資の旗艦研究プロジェクトが複数開始されています。

アジアでも同様に、6G のビジョンと実現技術を定義するための複数の取り組みが最近始まっています。

セクション

実現技術

6G に関する世界中のさまざまな取り組みにおいて、6G の概念を具現化する手段としていくつかの共通の技術に期待が集まっています。複数の専門家が、以下の主要技術を 6G に活用することに同意しています。

  • AI (人工知能)
  • ジョイント通信とセンシング
  • 再構成可能なインテリジェント サーフェス (RIS)
  • 非地上系ネットワーク (NTN)
  • 物理層の設計
  • 超高速データレートと高周波数

以降のセクションでは、これらの共通項について説明し、最も困難な 6G の研究課題に取り組む際の MATLAB の活用方法に関する洞察をご紹介します。

ディープラーニングと AI

AI (人工知能) は 5G で既に使用されており、6G 研究の範囲内でも多様なユースケースが検討されています。AI ワークフローには、ディープ ニューラル ネットワークの構築やネットワーク学習用の膨大なデータの収集、効率的学習のための GPU サポートなどが必要になりますが、MATLAB にはこれらすべての機能が備わっています。ユースケースには、次が含まれます。

  • ビームフォーミング設計
  • 適応チャネル推定
  • データ駆動型のチャネル復号化
  • ハードウェアの障害に対する補償

3GPP Release 18 では、特に 3 つの AI 領域に重点が置かれています。

  • チャネル状態情報 (CSI) フィードバックの圧縮: ニューラル ネットワークは、受信機から送信機にフィードバックされた CSI を圧縮するために利用されることがあります。
  • ビームマネージメント: Massive MIMO システムのすべてのビームペアに対する網羅的探索は、膨大な計算量になることがあります。これに代わる手段として、AI を活用してサーチスペースを縮小し、より少ない数のビームペアのセットとすることができます。
  • 測位: 正確な測位により複数の用途での利用が可能となりますが、技術的に多くの課題があります。AI により、測位の精度を高められる可能性があります。

MATLAB を使用したディープラーニングおよび AI

MATLAB は、最初のアイデアから組み込みデバイス上で動作する学習済みのニューラル ネットワークに至るまで、ディープラーニング/AI ワークフロー全体をサポートしています。

データの準備

信号処理のアイコン

データのクレンジングおよび準備

人のアイコン

人間による洞察

Simulink アイコン

シミュレーションによる生成データ

AI
モデリング

ディープラーニングのアイコン

モデルの設計および調整

サーバーのアイコン

GPU による高速学習

ネットワークのアイコン

Python との相互運用性

シミュレーションとテスト

ビッグデータのアイコン

複雑なシステムとの統合

Simulink アイコン

システム シミュレーション

検証と妥当性確認のアイコン

システムの検証と妥当性確認

展開
 

組み込みシステムのアイコン

組み込みデバイス

エンタープライズ IT システムのアイコン

エンタープライズ システム

クラウドのアイコン

エッジ、クラウド、デスクトップ

MATLAB のツールボックスは、データの準備から展開に至るまでワークフロー全体で研究者を支援します。

MATLAB と関連するツールボックスを使用することで、さまざまなアプリケーション向けにニューラル ネットワークを設計、学習、テスト、および展開できます。MATLAB には、次のような無線アプリケーション向け AI の実行可能なデモが数多く付属しています。

ジョイント通信とセンシング

将来の 6G ネットワークで実現する可能性のある機能の 1 つに、センシングや通信向けの無線スペクトルの利用があります。ジョイント通信およびセンシングは、無線ハードウェアとソフトウェアがセンシングと通信の両方のタスクを実行できる新しいパラダイムを意味します。考えられるユースケースには、受動的オブジェクトのトラフィック監視や位置推定、環境監視や人間の行動/存在の検出、および転倒検知や血糖値の監視などがあります。

RF 信号を介して受動的オブジェクトを検知するための、歩行者、動いている車両、およびセルラー基地局間の無線通信を示す概略図。

ジョイント通信およびセンシングは、次の 2 つの手法に分けることができます。

  • 同じ無線スペクトルをセンシングと通信に使用します。これには、受信機でセンシングするための新しい信号処理の追加が必然的に伴いますが、通信の機能を変更する必要はありません。波形設計ではセンシング能力と通信性能との間のトレードオフが必要となるため、センシングと通信間でスペクトルを共有することにより興味深い課題が生じます。たとえば、クラメール・ラオの下限 (CRLB) は、センシングに使用する有効なメトリクスになりえますが、容量は通信で使用するより優れたメトリクスです。
  • センシングと通信で、無線スペクトルの異なる部分を使用します。センシングを目的とする場合は、専用ハードウェアを使用できます。この手法では、時間、周波数、および空間次元において利用可能な無線リソースをどのように共有するかが問題になります。

MATLAB を使用したジョイント通信およびセンシング

Communications Toolbox™Radar Toolbox を組み合わせることで、ジョイント通信およびセンシングの実験を簡単に行うことができます。Communications Toolbox には、通信信号処理チェーンを設定するための基本ブロックがあるのに対し、Radar Toolbox にはセンシングに必要とされるすべての標準的なアルゴリズムが含まれています。

測位および位置推定は、多くのセンシングの用途において中心概念となるものです。MATLAB には、これらの分野に関する詳細なが用意されています。通信をセンシングと統合するシステムでは、2 種類の波形間でトレードオフを行う必要があります。MATLAB を使用して、このトレードオフを検討することができます。マイクロドップラー シグネチャ検出は、ジョイント通信とセンシングを対象として研究された多くのユースケースを実現する手法です。MATLAB では、ディープラーニングの手法を使用するなどして、マイクロドップラー シグネチャ分類を研究することができます。

再構成可能なインテリジェント サーフェス (RIS)

再構成可能なインテリジェント サーフェス (RIS) は、無線チャネルを操作して超高信頼のカバレッジと優れた通信品質を実現できる、パラダイムシフトを生み出す手法です。従来の無線システムでは、伝播環境をその前提となるものとみなしています。したがって、「任意」のチャネルの障害を解決できるようなトランスミッション スキームやパラメーターを適応させることにより、通信性能を最適化することを目標としています。

RIS は、反射させる信号の位相に対して独立して受動的に影響を与えることができる反射素子からなる平面です。RIS では、プログラム可能な素子を使用して、表面やアンテナアレイに配置した多数の反射素子の位相偏移を調整することにより無線チャネルを再構成できます。これにより、通信システムで無線環境の特性に対してアクティブ制御ができるようになり、特定の信号伝播方向を除去または強化したり、干渉を抑えたりすることができるようになります。

研究コミュニティでは既に、RIS を理論から実用へと展開する際に対処する必要がある、次のような一連の問題や研究課題に対する取り組みを始めています。

  • 信号オーバーヘッドを最小化しながら、制御可能な素子に適したシナリオ固有の構成をタイムリーに見つけるための、多数の素子を配置した反射表面の設計
  • RIS が UAV に搭載された場合の多数の反射素子と非常に動的なシナリオを考慮した、RIS と送信機または受信機間の無線チャネルの正確な推定および CSI の取得
  • RIS システムから取得した CSI の不完全な特性を考慮した、堅牢性の高いビームフォーミングの設計と最適化

MATLAB を使用した再構成可能なインテリジェント サーフェス

Phased Array System Toolbox™Antenna Toolbox™、および Optimization Toolbox™ を使用すると、散乱表面をモデル化および設計して、それらの特性を動的に変更できます。さらに、MATLAB では以下を行うことができます。

  • ダイポール、モノポール、パッチ、スパイラル、フラクタル、ホーンアンテナなど、広範にわたる素子のカタログを使用して反射表面と素子をモデル化。
  • 最適化アルゴリズムを設計して、反射表面のさまざまな素子を最適に制御。
  • 線形、矩形、円形、コンフォーマルアレイ、およびカスタムアレイなど、柔軟にアンテナアレイを設計して、RIS の設計空間を探索。
  • レイトレーシングを使用して 3D 伝播環境を正確にモデル化し、一般材料の ITU 誘電率と導電率の値を考慮にいれながら、マルチパス伝播経路を計算。
  • マルチパス伝播–散乱 MIMO チャネルをモデル化して、受信アレイに向かう多重散乱からの反射をモデル化。このモデルでは、ガス、雨、霧、および雲を原因としたレンジに依存する時間遅延、ゲイン、ドップラー偏移、相変化、および大気損失を考慮に入れます。

非地上系ネットワーク

NTN は、将来の 6G の用途におけるサービス可用性、継続性、および拡張性の要件を満たす重要な役割を果たす技術として期待されています。NTN は、商用ドローン、高高度プラットフォーム (HAPS)、および衛星などの非地上系通信媒体が上空で基地局として機能し、既存の地上系ネットワークを補完したり部分的に置き換えたりするネットワークです。あらゆる場所でいつでもカバレッジとサービスを提供できるため、NTN は自然災害によりセルラー ネットワーク インフラストラクチャが破壊された場合の緊急事態対応や緊急サービスなど、重要な用途の実現に役立ちます。また、NTN はユニバーサル接続の実現においても有用なため、デジタルデバイドの解消につながります。NTN の重要性は、3GPP が NR の将来性を認めている 5G や、長期的な 6G の研究において既に認知されています。3GPP Rel-17 における NTN の作業項目は 2019 年に承認され、追加項目は Rel-18 および Rel-19 で明確化されました。

この分野の専門家は、6G 向けの NTN の実現に向けて取り組むべき、次のような主要な研究課題のリストを既に定めています。

  • 衛星モビリティをモデル化し、衛星の動きが無線チャネルモデル、伝播遅延、スループット、ラウンドトリップ時間に与える影響を調査
  • 特に NTN が TN と共存する必要がある場合に周波数とタイミングを同期し、NTN 衛星ネットワーク内で全地球航法衛星システム (GNSS) を統合
  • 超狭ビームを実現するための、分散コヒーレントアンテナ設計および再構成可能フェーズドアンテナ、新しいビームマネージメント、ビームフォーミング手法を使用して衛星の送受信機能を改善
非地上系ネットワークにより携帯電話 (ユーザー端末) からグローバル接続のための衛星への直接通信を可能にする過程を示した図。

MATLAB を使用した非地上系ネットワーク

既存の 5G NTN リンクモデルは、6G に必要な改善点や優れたアルゴリズムを調査するための開始点として使用できます。5G Toolbox™ および Satellite Communication Toolbox を使用することで、MATLAB で NTN 研究を加速させるためのすべてのツールが揃うため、以下を行うことができるようになります。 

超高速データレートと高周波数

6G におけるより高い目標は、最大数百 Gbps のデータレートを実現することです。新しい課題のなかには超高速データレートに関連するものがあり、そのうちのいくつかは次のように消費電力の増加と高い搬送波周波数に関係しています。

  • 超高速データレートを得るには、スペクトル効率が高い場合であっても数十 GHz ほどの信号帯域幅が必要になります。結果的に、搬送波周波数は周波数の高いミリ波帯域 (>100 GHz) を使用する必要があるということです。RF 伝播に関して、高い周波数における主な課題は減衰量の多さです。これらの制約を正確に表現するには、周波数の高いミリ波帯域およびサブテラヘルツ帯域の新しいチャネルが必要です。低周波向けの標準的な手法のように、このようなチャネルモデルを確率的モデリングに基づいて作成することは、高い周波数帯域では困難です。レイトレーシングに基づいたチャネルモデルでは、60 GHz で良好な予測機能を実現しており、同様の機能が高い周波数でも期待されます。レイトレーシング モデルは、帯域問題を克服するための重要な手法であるビームフォーミングに役立ちます。
  • データコンバーターの場合、消費電力はサンプリング周波数に合わせてほぼ線形で増加しますが、ビット分解能に対しては指数関数的に増加します。高い帯域幅を原因とする消費電力の増加により課せられる新しい問題への対応では、ビット分解能を下げるなど、デジタル アナログ コンバーター (DAC) とアナログ デジタル コンバーター (ADC) の再設計が必要になる場合があります。
  • データレートは DSP 回路のクロックレートよりもはるかに高くなるため、大規模な並列データストリームを処理するためのまったく新しい DSP アルゴリズム設計が必要となります。

MATLAB を使用した超高速データレートと高周波数

MATLAB には、レイトレーシング向けの組み込み機能があります。それに加えて、雨、地形回折、大気による屈折、対流圏散乱、および大気吸収を原因とする損失を追加するための組み込み機能も備わっています (例として、レイトレーシングを使用した CDL チャネルモデルのカスタマイズ、およびレイトレーシングを使用した屋内 MIMO-OFDM 通信リンクをご覧ください)。

MATLAB を使用すると、データコンバーターのアーキテクチャを探索して高い精度に変更することができます。

MATLAB にはデータを並列で処理する既成の IP ブロックがあるため、クロックレートよりもはるかに高速な実効データレートを得ることができます。そのようなブロックを使用した Simulink® モデルを、FPGA プラットフォームに展開してリアルタイムで実行できます

物理層の設計

更新された物理層の設計は、新しいフレーム構造、新しい波形、およびまったく新しいチャネル符号化手法により構成されることがあります。6G の波形設計には、いくつかの課題があります。高い周波数でのピーク出力 PA 電力の制限により利用可能なリンクバジェットを減らすことで、低い包絡線変動の波形候補が優先されます。超高速データレートでは、アナログからデジタルへの変換はシステムの消費電力における主要要因になることが予想されるため、エネルギー効率の高い波形が優先されます。以下は、6G で検討されている波形候補の例です。

  • CP-OFDM 波形は、4G および 5G から続く長い伝統がベースにありますが、ピーク電力対平均電力比 (PAPR) が高くなるという欠点があります。
  • ゼロクロッシング変調 (ZXM) は、振幅分解能を下げることにより高いエネルギー効率を実現します。
  • DFTS-OFDM は、追加の信号処理を犠牲にし、CP-OFDM と比較して PAPR は低くなります。
異なるサイズの波頂を持つ異なるタイプの波形を示した 2 つのグラフ。

スペクトルおよび電力効率が向上した新たに採用された波形が 6G の推進を支えます。

MATLAB を使用した物理層の設計

Communications Toolbox および 5G Toolbox を使用すると、既存の 5G モデルから始めて、異なる周波数帯域での性能を確認するための多種多様なチャネルモデルを使用して、さまざまな手法を探索することができます。

MATLAB では、たとえば NR LDPC およびポーラー符号などに基づいて、新しい符号化方式を探索できます。

セクション

まとめ

6G 無線技術は、無線エンジニアや研究者に希望に満ちた未来を与えてくれます。今後 10 年間で、このホワイトペーパーで紹介したユースケースや技術は、無線通信分野においてますます重要なものとなっていくでしょう。

MATLAB や 6G の詳細については、おすすめする次のステップや以下のリソースをご覧ください。