6G

6G とは?

6G は、より包括的で持続可能な無線接続の提供を目的とした、次世代のモバイル無線通信システムです。6G の研究開発では、現在の 5G 通信システムのパフォーマンスを大幅に向上し、6G ネットワークの高速化、広帯域化、低レイテンシ化を目指しています。

その結果、6G システムにより、仮想現実や拡張現実 (VR/AR)、AI (人工知能)、コネクテッドカー、コネクテッド インダストリーズと自動化、非地上系ネットワーク (NTN) を通じたユビキタスカバレッジ、ジョイント通信とセンシング、低電力無線通信などの新しいアプリケーションを実現することが期待されています。

6G を開始する準備ができたら、MATLAB® とその無線通信ツールを使用して、6G システムの設計を高速化できます。

  • 6G 設計の開始点として、MATLAB のオープンで編集可能かつカスタマイズ可能なアルゴリズムを活用します。
  • MATLAB の簡単なカスタム波形生成、ハードウェア接続、および AI モデリング機能を使用して、設計を継続的にテストします。
  • 6G システムのデジタル、RF、アンテナ アレイのコンポーネントを同時に最適化することで、多次元的な設計空間をより効果的に探索できるようになります。
6G システム コンポーネントを示す図: デジタルベースバンド、RF フロントエンド、ADC/DAC、パワーアンプ、アンテナ。示されたワークフローは、アルゴリズムの更新、波形のテスト、MIMO/ビームフォーミングの適用、測定の実行の手順で構成されています。

MATLAB 製品を使用して、6G 無線システムのデジタル、RF/アナログ、およびアンテナ/アレイのコンポーネントを組み合わせて最適化します。

6G タイムライン

無線通信規格は、約 10 年程度で次の世代に移行します。5G 規格は、3GPP Release 15 の一環として 2018 年に初めて公開され、段階的に進化し続けています。たとえば、2024 年に発行される次の 5G 規格 (リリース 18) は、「5G Advanced」と呼ばれる予定です。一方、次世代の 6G システムに向けた研究開発も進められています。標準化団体である国際電気通信連合 (ITU) は、6G のビジョンや要件を定めた IMT-2030 文書を 2026 年頃に発行するというのが大方の見通しです。その後、標準化団体である 3GPP (Third Generation Partnership Project) が、2028 年から 2030 年頃に、これらの要件を満たす 6G 標準仕様を策定する予定です。

5G 規格 (3GPP の Release 15) の導入から 2030 年頃に予定される 6G の標準化までのタイムライン。

6G ネットワークの標準化および提供の予定時期。

6G アプリケーション

6G システムの要件はまだ確定していませんが、多くの専門家が 6G ネットワークは 5G および 5G-Advanced システムの成功に基づいて、以下のような新しいアプリケーションを実現するものと考えています。

  • さまざまなデバイス、より高いデータレート、より低いレイテンシをサポートする、多感覚拡張現実とハプティクス
  • ボリュメトリック メディア ストリーミングとテレプレゼンス、ボリュメトリック コンテンツ、3D データセット、およびホログラフィック プレゼンス
  • 機械化された農業や遠隔医療などの分野で産業用 IoT や大規模機械型通信をサポートする、コネクテッド インダストリーズと自動化
  • 自律型車両とスワームシステム、V2X 通信の拡張、コネクテッドカー、ドローン、およびロボット
  • つながりの希薄化や「デジタルデバイド」を解消し、衛星通信による非地上系ネットワーク (NTN) を使用して、遠隔地、地方、サービスが行き届いていない地域に住む人々をつなぐ超カバレッジ拡張 
  • 電波から直接エネルギーを取得し、無線システムの電力使用を大幅に削減する、超低電力およびゼロエネルギー

6G を実現するための主要なテクノロジー

6G システムの正確な仕様はまだ決定していませんが、専門家の間では、新しいアプリケーションや機能の導入には、次のようなテクノロジーを取り入れることが不可欠であると考えられています。

  • サブテラヘルツ通信などの新しい周波数
  • AI および機械学習
  • 再構成可能なインテリジェント サーフェス (RIS)
  • ジョイント通信とセンシング
  • 新しいデジタル波形

サブテラヘルツ通信などの新しい周波数

6G 通信システムでは、7 ~ 24 GHz 帯域およびサブテラヘルツ帯域 (100 GHz 超) の新しい周波数が使用される可能性が高いとみられています。これにより、新しいスペクトル管理手法が可能になり、データレートと速度のパフォーマンス向上、6G ネットワーク容量と伝送帯域幅の増強、ネットワーク干渉の低減の実現が期待されています。

5G カスタム (完全ユーザー定義) の波形生成を実現する、無線波形発生器アプリのスクリーンショット。

無線波形発生器アプリを使用した MATLAB でのカスタム 5G 波形生成および可視化は、革新的な 6G 波形の特定、設計、および調整に役立ちます。

ジョイント通信とセンシング

6G では、無線ネットワークの位置推定およびセンシング機能と通信機能との統合を活用します。これにより、屋内空間、範囲、障壁、および測位に関する詳細情報を取得し、ネットワークに送信することで、特に屋内通信シナリオのパフォーマンスを向上させることができます。また、サブテラヘルツ帯の新しい周波数の導入により、6G システムがレーダーなどのテクノロジーを活用した高精度センシングへの道を開く可能性もあります。

CNN 位置推定による屋内センシングを示すグラフ。AI ウォーターマーク アルゴリズムは、デスク、収納スペース、壁など、屋内オフィスのコンテンツを予測します。

AI 手法に基づく屋内センシングと測位技術により、屋内無線接続を改善できます。MATLAB で生成された画像。

AI および機械学習

AI や機械学習の技術は、すでに 5G-Advanced システムに内包されています。このトレンドは、6G ネットワークがデータ駆動型 AI の手法を用いて、より良い構成、最適化、および自己組織化を行うことで継続すると考えられています。6G 無線通信規格は、AI ベースのエアインターフェイスをサポートすることで、ジョイント圧縮および符号化、ビームフォーミング、チャネル状態情報 (CSI) 圧縮、測位技術などの機能を向上する可能性があります。

分類アプリケーション向けの AI システム設計のワークフローを示す図。データをラベル付けして、それをスペクトログラム画像に変換し、モデルの学習、テスト、および検証を行います。

Deep Learning Toolbox™ を使用することで、無線通信の問題解析や設計に使用するために、MATLAB でディープラーニング ネットワークを学習およびテストできます。

再構成可能なインテリジェント サーフェス (RIS)

6G の研究により、送信機と受信機の間の信号の伝播を動的にプログラム制御できる、再構成可能なインテリジェント サーフェス (RIS) の可能性を引き出すことも期待されています。このテクノロジーでは、材料の電気的特性と磁気的特性を変えることで、入力信号を表面で反射させ、反射角をアクティブに操作できます。

基地局から送信された無線信号を示す図。ここでは、ビームは建物で遮断され、2 番目のビームは近隣の建物からインテリジェントに回転する表面で反射しています。

再構成可能なインテリジェント サーフェス (RIS) は、ユーザー端末に最高受信信号電力を確保するのに役立ちます。

MATLAB を使用した 6G のモデル化とシミュレーション

6G 探索の領域: 波形探索、シミュレーションのスケーリング、無線用 AI、mmWave 伝播、RF コンポーネント モデリング、非地上系ネットワーク、および RF センシング。

MATLAB は、6G 無線通信ワークフローにおけるさまざまな設計上の課題をサポートします。

MATLAB5G Toolbox™、およびその他の MATLAB ベースの無線通信ツールを使用して、現在の 6G 無線通信システムのモデル化とシミュレーションを行い、それらを実現するテクノロジーの影響を評価できます。

  • オープンな MATLAB 関数を使用して 6G 向けの知的財産 (IP) を作成して最適化し、得られた技術革新を既存のベンチマークと比較します。
  • 現在の 5G 規格 (新しい周波数範囲、帯域幅、ニューメロロジー) で認められているパラメーターを超えた 6G 波形生成を探索します。
  • Massive MIMO、より広い帯域幅、より高いサンプルレートに対応するシミュレーションに拡張します。複数のコア、クラスター、またはクラウドに分散させ、GPU を活用することで、大規模かつ長時間実行するシミュレーションを管理します。
  • 新しい mmWave やサブテラヘルツ周波数に対応した RF コンポーネント モデリングをより高速かつ正確に実行します。
  • mmWave やサブテラヘルツ周波数範囲における伝播損失およびチャネルモデルをシミュレーションします。
  • エンドツーエンドのリンクレベル シミュレーション、シナリオモデリング、軌道伝播、可視化などを行い、非地上系ネットワーク (NTN) をモデル化します。
  • RF センシングを探索し、RF 波形の解析によってシーン内のイベントや人の存在を検出します。
  • 再構成可能なインテリジェント サーフェス (RIS) がシステム全体のパフォーマンスに与える影響を検証します。
  • 機械学習、ディープラーニング強化学習ワークフローなどの AI テクノロジーを適用して、6G 無線通信の問題を解決します。

参考: Communications Toolbox, 5G Toolbox, Satellite Communications Toolbox, RF Toolbox, RF Blockset, Antenna Toolbox, Phased Array System Toolbox, リンクバジェット