電動化は、電気自動車、船舶、電気航空機、グリッドタイ エネルギー貯蔵システム、太陽光発電システムなど、さまざまな用途におけるバッテリーの使用を推進しています。これらの用途では、セルの選択、電力/エネルギー密度、ボリューム、重量、寿命の面でバッテリーシステム設計に対する要件がそれぞれ異なります。
テスト前にバッテリーシステム設計をシミュレーションすることで、バッテリーパックの動的振る舞いを把握することができます。また、以下も行えます。
- ソフトウェア アルゴリズムを検討および比較する。
- 運用可能なテストケースを拡張する。
- バッテリーセルからバッテリーシステムまでの技術開発のサイクルを短縮する。
バッテリーシステムの開発ワークフローは、バッテリーセルの構築から始まります。バッテリーセル設計をバッテリーシステムに橋渡しする際には、5 つの主要なタスクがあります。その手順には以下が含まれます。
- バッテリーパックの設計
- 電気および熱バッテリー パック コンポーネントの設計
- バッテリー マネジメント システム (BMS) のアルゴリズム開発
- デスクトップ シミュレーションを実行するためのコンポーネントの統合
- ハードウェアインザループ (HIL) テストと展開
Simulink® および Simscape™ を使用して、バッテリーシステムの開発ワークフローをシステム コンポーネントの統合から開始し、コンポーネント設計とアルゴリズムの妥当性を確認するデスクトップ シミュレーションを実行できるようにします (デスクトップ シミュレーションを参照)。次の手順は、ラピッド プロトタイピングおよびハードウェアインザループ テストを使用したモデルのリアルタイム シミュレーションです (バッテリーシステムのリアルタイム シミュレーションを参照)。開発の最終段階では、ハードウェア実装、展開、およびテストを行います (ハードウェア実装を参照)。
Simscape Battery™ アプリケーション プログラミング インターフェイス (API) を MATLAB® で使用して、バッテリーパックを設計できます。設計の基本的な要素には、セル設計、並列セルアセンブリ、モジュール、モジュール アセンブリ、バッテリーパック設計があります。
Simscape Battery を使用して、以下を行うことができます。
- 電熱作用をモデル化し、電荷ダイナミクス、経年劣化、温度、および熱伝達の影響をバッテリーセルモデルに含めます。
- メーカーのデータシートに基づいてセルをパラメーター化します。
- セルからモジュール、モジュールからパックへ、さまざまなジオメトリとトポロジを使用してバッテリーモデルを構築して可視化します。
- バッテリーパックへのカスタマイズ可能な流体経路および熱的接続を用いた冷却プレートをモデル化します。
- セル間の温度変動を調べ、冷却効率を測定します。
- 特定のバッテリーパック設計用のカスタム Simulink ライブラリモデルを生成します。
- 適切なモデル分解能を設定して、モデル忠実度とシミュレーション速度のバランスを取ります。
まとめ
- さまざまなモデル分解能を用いてカスタマイズしたバッテリーパックを設計する。
- 熱効果をバッテリーモデルに追加する。
- 1 行のコードでシミュレーション用のバッテリー パック モデルを生成する。
バッテリーセルからバッテリーシステムへ
エンジニアは MATLAB および Simulink を使用して、バッテリーパックの温度を仕様の範囲内に制御し、多様な操作条件で最適なパフォーマンスを実現するバッテリーの熱マネジメントシステムを設計することができます。
Simscape および Simscape Battery を使用して、バッテリーセルレベルのモデルを作成し、周囲温度の影響、熱界面材料、および冷却プレートの接続を追加して、より典型的なモデルを作成することができます。周囲、クーラント、および冷却プレートの場所への熱経路を定義することで、セル間、セルとプレート間、およびセルと環境間の観点で熱伝達を検討できます。Simscape Battery には、並列チャネル、U 字型矩形チャネル、および エッジ冷却などの各種フロー構成をサポートする冷却プレートブロックがあらかじめ用意されています。
熱効果に応じてセルをモジュールに組み立て、パック内のモジュールを調整することで、パックレベルの熱モデルを構築できます。経年劣化レベルが異なるバッテリーバックで熱性能解析を実行することで、耐用寿命末期 (EOL) においても保証基準を満たすことができます。
アクティブ、パッシブ、およびハイブリッドの冷却/加熱ソリューションのモデル化には、気体、液体、および熱ドメインの Simscape および Simscape Fluids™ ブロックを使用できます。また、概略図を描画してパイプ、バルブ、熱交換器、およびタンクを配置することで、冷却/加熱システム アーキテクチャを探索することもできます。
液体ループシステムの場合、予備流体を保管する拡張タンク、バッテリーセルの近くに作動流体を導く冷却プレート、ポンプ、流路、バルブを備えたモーター駆動型循環システム、および各種熱交換器 (線状発熱体、ラジエーターなど) をモデル化できます。
冷却/加熱システムのモデルを作成すると、シミュレーションを実行し、コンポーネントのサイズ設定およびシステムパラメーターを確認して設計を調整し、放熱や消費電力などの要件を満たすことができます。
Simulink を使うと、フィードフォワードと PID の手法を組み合わせた閉ループ制御 (供給流 (バルブ) 制御、質量流量 (ポンプ) 制御、熱交換経路選択制御など) の循環システム制御を簡単に設計できます。Simscape Battery により、Battery Coolant Control や Battery Heater Control などの事前構築済みのブロックを使用して、バッテリーの熱マネジメント制御アルゴリズムを構築できます。Stateflow® を使用することで、環境温度およびバッテリー温度に応じて複数の動作モード (加熱と冷却など) 間を切り替える監視制御ロジックを設計することもできます。
まとめ
- 熱効果を考慮してセルをモジュールに組み立て、パックレベルの熱モデルを構築する。
- 事前構築済みの冷却プレートブロックを使用する。
- 各種作動流体を使用して冷却/過熱システムのモデルを構築する。
- 極端な温度条件をシミュレーションして、"what-if" シナリオの設計をする。
- シナリオの調査を実施して、各種設計オプションの熱の影響を評価する。
- モデル化とシミュレーションを使用して、コンポーネントの選択およびコンポーネントのサイズ設定を実行する。
バッテリーの熱マネジメントシステムの設計
Mahindra Electric、システムレベルのシミュレーションを使用して電気自動車用バッテリーの熱マネジメントシステムを最適化
適切に設計されたバッテリー マネジメント システム (BMS) は、さまざまな充放電や環境の条件下で最大の性能、安全な動作、および最適な寿命を確保します。Simulink および Simscape を使用すれば、バッテリーバックの動的振る舞いを把握して、ソフトウェア アーキテクチャを検討し、運用ケースをテストし、ハードウェアテストを早期に開始することで、設計エラーを減らすことができます。エンジニアは、Simscape Battery の組み込みの BMS 制御ブロックを使用して、設計したバッテリーパックの性能評価、熱マネジメントシステムの開発、システムレベルのシミュレーションを実行できます。
これらの目標を達成するため、BMS は、バッテリーパックの動作および性能を制御するアルゴリズムで構成されます。
充電状態 (SOC) 推定用のアルゴリズムの開発には、正確なバッテリーモデルが不可欠です。開回路電圧 (OCV) 測定や電流積分 (クーロン カウンティング) などの従来の SOC 推定手法で十分な正確性を得られる場合もあります。ただし、OCV-SOC 放電シグネチャがフラットである最新のバッテリーの化学特性で SOC を推定するには、別の手法が必要になります。拡張カルマンフィルター (EKF) およびアンセンテッド カルマン フィルター (UKF) は、妥当な計算量で正確な結果が得られることが実証されている手法です。
Simscape Battery には、次の 3 つの SOC 推定器が含まれています。クーロン カウンティング、適応型カルマンフィルター、およびカルマンフィルター。カルマンフィルター SOC 推定器と比較して、適応型カルマンフィルター SOC 推定器には、追加の状態として端子抵抗が含まれています。適応型カルマンフィルター SOC 推定器とカルマンフィルター SOC 推定器にはともに、SOC 推定用のオブザーバーを開発するための EKF または UKF を選択するオプションがあります。このようなオブザーバーには通常、セルで測定された電流と電圧を入力として使用する、目的の非線形システム (バッテリー) のモデル、および 2 ステップの予測/更新プロセスに基づいてシステムの内部状態 (特に SOC) を計算する再帰的アルゴリズムが含まれています。
カルマンフィルターとは対照的に、ニューラル ネットワークを使用して SOC 推定器を開発する場合には、バッテリーやその非線形動作に関する広範な情報は必要ありません。代わりに、電流、電圧、および温度のデータと応答としての SOC を使用してネットワークの学習を行います。
まとめ
- Simscape Battery には、次の 3 つの SOC 推定器が含まれている。クーロン カウンティング、適応型カルマンフィルター、およびカルマンフィルター。
- 適応型カルマンフィルター SOC 推定器とカルマンフィルター SOC 推定器にはともに、EKF または UKF を選択するオプションがある。
- 適応型カルマンフィルター SOC 推定器には追加の状態として端子抵抗が含まれている。
- ニューラル ネットワークを使用することで、バッテリーに関する広範な情報なしで SOC 推定器を開発できる。
ディープラーニングを使用したバッテリー充電状態の推定方法
製造時に性能仕様を満たしているバッテリーも含め、バッテリーはすべて、カレンダー寿命とサイクル寿命のため、時間とともに劣化して、リザーブ容量が徐々に低下し、内部抵抗が増加します。後者は短時間の測定によって比較的簡単に推定できますが、前者を正確に計算するにはフル充電または放電への偏位が必要です。しかし、これは常に実践的とは限りません。この課題から、健全性状態 (SOH) 推定、および状態に加えてバッテリーのパラメーターを組み込むように拡張された適応型カルマンフィルターの定式化への関心が高まっています。瞬時の内部抵抗を正確に推定できると、BMS での電力制限の設定に非常に有益です。
SOH 推定は、SOC 推定よりも主観的であり、SOH を定義する一般的な方法というものはありません。したがって、SOH 推定を定量化するための独自の手法が組織ごとに存在し、汎用的な既製のソリューションを使用できないことがあります。Simulink および Simscape を使用すれば、バッテリーの健全性に関する組織固有の解釈に適合するカスタムの SOH 推定アルゴリズムを開発してシミュレーションできます。
まとめ
- Simscape Battery にはカルマンフィルターを使用した SOH Estimator ブロックがある。
電気自動車用の健全なリチウムイオン バッテリーおよび経年劣化したリチウムイオン バッテリーにおけるモデルベースのパラメーターの特定
Simscape Battery には、セルバランス、バッテリー充電、およびバッテリー保護のための事前構築済みのライブラリブロックが用意されています。
セルバランス機能は、ブリード抵抗器によって過剰な電荷を放電することで、すべてのセルを同じような SOC に保ちます。バランス機能は、過充電または放電によって損傷する可能性があるセルの寿命を延ばすために必要です。複数のセルがある場合、セルのバランスが取れていると、能力が向上します。
バッテリー充電は、定電流/定電圧 (CC-CV) アルゴリズムを使用して制御されます。これは、充電時の過電流および過電圧を防ぐことでバッテリー寿命を維持する一般的な手法です。充電中に規定の電圧に達すると、電流が制限されます。
バッテリーを保護するには、電流、電圧、および温度を監視する必要があります。Simscape Battery には、BMS アルゴリズムに組み込み可能なブロックが用意されています。
まとめ
- Simscape Battery には、セルバランス、電流と電圧の制御、電圧、電流、および温度の監視のためのブロックが用意されている。
Simulink によるバッテリー マネジメント システムの開発
Simulink のデスクトップ シミュレーションを使用すると、バッテリーシステム設計の機能的な側面を検証できます。デスクトップ上で、動作モデルを使用してバッテリーシステム、環境、およびアルゴリズムをシミュレーションします。たとえば、アクティブとパッシブのセルバランスの構成とアルゴリズムを比較検討し、特定の用途における各バランス手法の適合性を評価できます。デスクトップ シミュレーションを使用することで、新しい設計アイデアを検討し、複数のシステム アーキテクチャをテストしてから、ハードウェア プロトタイプの作成に注力することができます。また、デスクトップ シミュレーションでは要件のテストも実行できます。たとえば、絶縁故障が検出されたときに接触器が開閉しなくなることを検証できます。
BMS 制御ソフトウェアの開発の中核である現実的なシミュレーションを実行できるようにするには、バッテリーパックの正確なモデルから開始します。多くの場合、バッテリーは、バッテリーの物理的な構成を考慮してその電熱化学的特性を取得する、有限要素解析 (FEA) モデルを使用して設計されます。これらのモデルはバッテリーパックの化学特性および形状の設計と最適化には適していますが、制御エンジニアは、システムレベル設計およびソフトウェア開発への適合性の高いモデルを必要としています。
まとめ
- Simscape Battery には、より正確なバッテリー パック モデルが用意されている。
Simulink で BMS アルゴリズムを開発する場合、等価回路を使用してバッテリーセルの熱電動作をシミュレーションできます。通常、等価回路は、電圧源、直列抵抗、並列に接続した 1 つ以上の抵抗器とコンデンサのペアで構成されます。電圧源は開回路電圧を提供します。一方、他のコンポーネントは、セルの内部抵抗と時間依存の動作をモデル化します。一般的に、これらの等価回路の素子は、温度および充電状態 (SOC) に依存します。これらの依存関係は、各バッテリーの化学特性に固有のものであるため、コントローラーの設計対象と同じタイプのバッテリーセルに対して実行された測定を使用して判別する必要があります。Simulink および MATLAB による最適化を使用すると、実験データを使用したモデル相関を介して等価回路をパラメーター化することができます。
まとめ
- Simulink および MATLAB による最適化を使用して、バッテリーセルの等価回路をパラメーター化できる。
現実的なバッテリーシステムのシミュレーションを行うには、バッテリー パック モデルのほかに、バッテリーシステムを電源および負荷に接続する回路コンポーネントの正確なモデルが必要です。Simulink のアドオン製品である Simscape Electrical には、セルバランス用のアナログ フロント エンドなど、完全なバッテリーシステム回路の組み立てに必要なアクティブとパッシブの電気コンポーネントの包括的なライブラリが用意されています。充電ソースは、太陽光発電 (PV) システムなどの DC 電源または整流される AC 電源で構成できます。
Simulink および Simscape を使用したシステムレベルのシミュレーションにより、バッテリーの周囲に高度な充電ソースを構成し、さまざまな動作範囲および故障状態でバッテリーシステムの妥当性を確認できます。バッテリーパックの負荷も同様にモデル化してシミュレーションできます。たとえば、電気自動車 (EV) でインバーターを介してバッテリーパックを永久磁石同期モーター (PMSM) に接続できます。シミュレーションを使用して、ドライブサイクルによって EV の動作を変更し、動作状態を変化させながら BMS の有効性を評価できます。
まとめ
- Simulink および MATLAB による最適化を使用してバッテリーセルの等価回路をパラメーター化する。
制御された三相インバーターを介して IPMSM に給電する高電圧バッテリー
デスクトップ シミュレーションをテスト手順に組み込むと、考えられるすべてのロジックおよび閉ループ制御の分岐に沿ってバッテリーシステムを稼働させるテストケースを作成して実行できます。このレベルのカバレッジは、ハードウェアを使用してテストする場合には、まれにしか得られません。この手法では、シミュレーション モデルは、バッテリーシステムの設計とテストを推進する実行可能な仕様の役割を果たします。Simulink では、以下を可能にする各種機能を使用したデスクトップ シミュレーションでのテストをサポートしています。
- 元の仕様へのトレーサビリティを備えた形で、制限、許容誤差、論理チェック、時間条件などの要件をモデルに組み込む
- シミュレーション ベースのテストの複雑なシーケンスを構成して、機能テスト、ベースラインテスト、等価性テスト、および back-to-back テストを実行する
- 判定、条件、改良条件判定カバレッジ (MC/DC) などの業界標準のメトリクスおよび関係演算子の境界カバレッジを追跡する
- 完全なモデルカバレッジおよびカスタム オブジェクティブを達成するためのテスト入力を生成する
- 形式的手法を使用して、整数オーバーフロー、デッドロジック、およびゼロ除算につながる隠れた設計エラーを特定する
開発中のバッテリーシステムで安全性の要件を満たす必要がある場合は、IEC 61508、IEC 61851、ISO® 26262 などの規格に準拠したソフトウェア開発プロセスに、形式的手法に基づいたテストを統合できます。
デスクトップ シミュレーションで妥当性を確認した Simulink モデルを使用して、ラピッド プロトタイピング (RP) またはハードウェアインザループ (HIL) テスト用の C および HDL コードを生成し、BMS アルゴリズムの妥当性をリアルタイムでさらに確認できます。RP では、リアルタイムテスト用の制御ソフトウェアのコードを手書きするのではなく、コントローラーモデルからコードを生成し、量産マイクロコントローラーの機能を実行するリアルタイムのコンピューターに展開します。自動コード生成により、数日ではなく数時間のうちにモデルに加えたアルゴリズムの変更を、リアルタイムのハードウェアでテストできます。さらに、Simulink 内からリアルタイムの制御ハードウェアを操作して、アルゴリズムのパラメーターを変更し、テストデータをロギングできます。
ラピッド プロトタイピングと同様に、HIL テストでは、Simulink モデルからコードを生成し、リアルタイムのコンピューターに展開します。HIL テストの場合、コードは制御アルゴリズムのモデルではなく、バッテリーシステムのモデルから生成されます。これにより、バッテリーパック、アクティブおよびパッシブの回路素子、負荷、充電器、その他のシステム コンポーネントを表す、リアルタイムのバーチャル環境が得られます。このバーチャル環境を使用することで、ハードウェア プロトタイプを開発する前に、ハードウェアに損傷を与えない環境で、BMS コントローラーの機能の妥当性をリアルタイムに確認できます。
デスクトップ シミュレーション時に開発したテストを HIL テストに引き継いで、BMS 設計の進行に合わせて要件を満たしていることを確認できます。HIL テストは、主にマイクロコントローラーまたは FPGA で実行されるコードのテストに利用されますが、代わりに量産コントローラー ハードウェアを選択する前に Simulink Real-Time™ や Speedgoat® ターゲット ハードウェアなどのラピッド プロトタイピング システムを使用して、HIL セットアップに接続できます。
ラピッド プロトタイピングと HIL テストの両方が含まれるリアルタイム シミュレーションにより、パワー エレクトロニクス制御のエンジニアは、BMS 設計がどのようにハードウェアで実行されるのかに関して、より多くの洞察を得られます。RP と HIL の目的はともに、設計全体のうちの 1 つの側面 (RP では BMS コントローラー、HIL ではバッテリーシステムのバランス) をハードウェアでエミュレートすることです。リアルタイム シミュレーションには、BMS 設計におけるいくつかの大きなメリットがあり、以下を行うことができます。
- RP を実行することで、最終的なコントローラー ハードウェアの選択前にアルゴリズムの妥当性確認を開始する。
- リアルタイムのテストシステムの柔軟性を利用して、迅速な設計の反復およびテストを実現する。
- バッテリーシステムのプロトタイプ ハードウェアを入手する前に、HIL テストを実行する。
- RP テストと HIL テストを組み合わせて、実際のハードウェアを使用した場合には困難であるか、コストがかかるか、損傷が生じる可能性があるテストケースに対して BMS アルゴリズムを実行する。
Simulink でデスクトップ シミュレーション モデルを再利用してリアルタイム シミュレーション用のコードを生成することで、全体的な開発期間を短縮できます。リアルタイムのパフォーマンス用に最適化されたコンピューターで実行する C/C++ および HDL コードを生成できます。リアルタイム シミュレーション用に Simulink モデルから生成されたコードには、リアルタイム シミュレーションの実行中に制御パラメーターを調整できるインターフェイスが含まれています。
ハードウェアでのテスト中にコントローラーコードに変更を加えると、遅延やその他のリスクを生じる可能性があります。コードの手作業による変更、再コンパイル、マイクロコントローラーまたは FPGA への展開には時間を要します。特に、制御アルゴリズム開発者がソフトウェアまたはハードウェアのエンジニアに変更作業を依頼する場合は、この時間が長くなることがあります。必要な変更の程度によっては、実装済みのコードに新しい問題が生じるリスクもあります。
コントローラー ソフトウェアのコードを手書きで更新する代わりに、Simulink を使用して、専用コンピューターでリアルタイムに実行し、高速 I/O を使用してテストハードウェアと通信するコードを生成できます。手作業によるコーディングやそれに伴う遅延がなくなるだけでなく、この RP の手法の別の利点として、先にデスクトップでシミュレーション モデルを実行して他の問題が生じないことを検証することで、BMS ソフトウェアへの変更の妥当性を確認できることが挙げられます。
バッテリーシステムのハードウェア プロトタイプの構築と変更には多大な労力がかかる可能性があり、また多くの場合、ハードウェア プロトタイプの修理はコストが高くなるため、バッテリーパックが動作する電気システムに対するこうしたプロトタイプのテストが常に実行可能であるとは限りません。このような制限を考慮すると、小さな設計上の変更でも開発スケジュールに影響が出かねません。また、開発チームは以前の設計から大幅に離れるのはリスクが高すぎると考えるため、BMS 設計の進行は遅くなりがちです。
Simulink を使用すれば、バッテリーシステム、およびバッテリーシステムが含まれるより大きなシステム (供給と負荷を含む) 内のハードウェアのモデルから C/C++ および HDL コードを生成できます。このコードをリアルタイムのコンピューターに展開すると、バッテリー システム プロトタイプでコントローラーをテストする前に、コントローラーのコードに対してハードウェアのリアルタイム シミュレーションを実行できます。これにより、高価で置き換えるのが困難なプロトタイプ ハードウェアに損傷を生じさせることなく、制御設計エラーを事前に検出して修正できます。また、コンポーネントのサイズ設定の誤りなど、ハードウェア設計エラーも検出できます。
Speedgoat ターゲット ハードウェアなど、HIL リアルタイムシステムの多くは、バッテリー エミュレーターが組み込まれています。これにより、ポータブルバッテリー電源をエミュレートしたり、電気自動車のバッテリースタックをエミュレートしたり、電流を流して充電中のバッテリーをシミュレーションしたりすることができます。
ハードウェアインザループを使用したバッテリー マネジメント システムのテスト
ハードウェア実装段階では、デスクトップ シミュレーション、RP、および HIL で検証した Simulink 制御モデルを使用して、BMS 用の効率的で量産可能なコードを生成します。必要に応じて、自動車、航空、およびその他の規制産業で使用される正式な認証規格に準拠したワークフローに量産コード生成を組み込むことができます。
Simulink では、コントローラーモデルから可読性に優れたコンパクトで高効率の C/C++ および HDL コードを生成し、量産マイクロコントローラー、FPGA、ASIC にすぐに実装できます。RP 向けに生成されたコードとは異なり、量産用に生成されたコードには、"リアルタイム" の監視、パラメーターの調整、データのロギングのサポートに必要な追加のインターフェイスは含まれていません。最適化設定を使用することで、生成される関数、ファイル、およびデータを正確に制御できます。これにより、コードの効率性が向上し、レガシコード、データ型、キャリブレーションのパラメーターとの統合が容易になります。
プロセッサインザループ (PIL) シミュレーションでは、C/C++ や HDL のコードをマイクロコントローラーまたは FPGA で実行します。一方、デバイスは BMS ハードウェアの Simulink モデルでステップ実行されるため、BMS コードの初期評価中にハードウェア プロトタイプが損傷を受けるリスクが抑制されます。PIL シミュレーションはリアルタイムでは実行されませんが、ビットトゥルーです。そのため、さまざまな条件下でコードを検証し、実際のシステムに展開したときに適切に実行されることを確信できます。
デスクトップ シミュレーション、RP、HIL、および PIL のシミュレーションのいずれを使用しても、BMS 向けの制御アルゴリズムの検証と妥当性確認を行えます。Simulink では、その同じアルゴリズムを量産可能なコードの生成の基礎として使用できます。マイクロコントローラーへの実装用に最適化された安定した C/C++ コードを生成することも、FPGA プログラミングまたは ASIC 実装用の論理合成可能な HDL コードを生成することもできます。自動コード生成を利用することで、手動によるアルゴリズム変換エラーがなくなり、Simulink で妥当性を確認したアルゴリズムと数値的に等価な C/C++ および HDL コードが生成されます。起こりうるすべての動作状態および故障状態に対して制御アルゴリズムをシミュレーションすることで、状態を網羅的にはテストできない場合でも、生成されたコードによって実際のシステムでも同じ状態が処理される信頼性が向上します。後のハードウェアテストでアルゴリズムの変更が必要であると示された場合は、モデルのアルゴリズムを変更し、シミュレーション テスト ケースを再実行して変更の正確性を検証し、更新された新しいコードを生成するだけで済みます。生成された C/C++ および HDL コードはすべて完全に移植可能で、さまざまなオプションで最適化でき、Simulink モデルとの間で双方向の追跡が可能です。
量産コードの生成
Web サイトの選択
Web サイトを選択すると、翻訳されたコンテンツにアクセスし、地域のイベントやサービスを確認できます。現在の位置情報に基づき、次のサイトの選択を推奨します:
また、以下のリストから Web サイトを選択することもできます。
最適なサイトパフォーマンスの取得方法
中国のサイト (中国語または英語) を選択することで、最適なサイトパフォーマンスが得られます。その他の国の MathWorks のサイトは、お客様の地域からのアクセスが最適化されていません。
南北アメリカ
- América Latina (Español)
- Canada (English)
- United States (English)
ヨーロッパ
- Belgium (English)
- Denmark (English)
- Deutschland (Deutsch)
- España (Español)
- Finland (English)
- France (Français)
- Ireland (English)
- Italia (Italiano)
- Luxembourg (English)
- Netherlands (English)
- Norway (English)
- Österreich (Deutsch)
- Portugal (English)
- Sweden (English)
- Switzerland
- United Kingdom (English)