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Simulink での入力データの加法スクランブル

デジタル通信システムでは、タイミング同期のため、またパワー スペクトルの要件を満たすため、一般に加法スクランブルと加法デスクランブルを使用して入力データをランダム化します。Scramblerブロックは乗法スクランブルをサポートしますが、加法スクランブルはサポートしません。加法スクランブルを実行するには、PN Sequence Generatorブロックを使用できます。この例では、PN Sequence Generatorブロックによって生成された出力シーケンスで入力データをスクランブルすることにより、IEEE 802.11™ [1] で規定されている加法スクランブルを実装します。同様のワークフローをもつ MATLAB® の例については、comm.PNSequenceリファレンス ページの "入力データの加法スクランブル" の例を参照してください。

次の図は、IEEE 802.11™ の Section 17.3.5.5 [1] の図 17-7 で規定されている、生成多項式 $x^7+x^4+1$ を使用する加法スクランブラーを示しています。

802.11 で規定されているシフト レジスタと、PN Sequence Generator ブロックを使用して実装されたシフト レジスタを比較し、この 2 つのシフト レジスタの図が互いに鏡像になることを観察します。したがって、PN Sequence Generator ブロックを構成して加法スクランブラーを実装する場合、生成多項式、初期状態、およびマスク出力の値を逆にしなければなりません。レジスタの出力を先頭から取り出すには、シフト値に 7 を指定します。

802.11 スクランブラーの詳細については、[1] およびwlanScramble (WLAN Toolbox)リファレンス ページを参照してください。

cm_additive_scrambling モデルは、次の 2 つの加法スクランブラーの実装を使用して、生成されたスクランブリング シーケンスと、802.11 で規定された加法スクランブラーに従ってスクランブルされたデータ フレームを、スクランブルして比較します。

  • 離散のDelay (Simulink)ブロックと、XOR 演算子として構成されたLogical Operator (Simulink)ブロックから成るシフト レジスタ。

  • PN Sequence Generator ブロックと XOR 演算子。

加法スクランブラーの実装を比較するために、cm_additive_scrambling モデルでは以下を使用します。

  • スクランブルする入力信号を提供するBernoulli Binary Generatorブロック。

  • 生成多項式として $x^7+x^3+1$ を使用し、シフト レジスタの初期状態として [1 1 1 1 1 1 1] を使用し、スクランブル出力のシフト値として 7 を使用するように構成されたPN Sequence Generatorブロック。

  • 入力データにスクランブル シーケンスを適用するための XOR 演算子として構成されたLogical Operator (Simulink)ブロック。

  • 離散ブロックから成るシフト レジスタから出力されたスクランブル後のデータと、加法スクランブラーの PN シーケンス版が一致することを確認するError Rate Calculationブロック。

  • IEEE 802.11 規格の Section 17.3.5.5 で規定されている 127 ビット スクランブラー出力シーケンスを含むワークスペース変数を作成する PreLoadFcn コールバック関数。== 演算用に構成されたRelational Operator (Simulink)は、Signal From Workspaceブロックからの出力である 127 ビットのスクランブラー シーケンスを PN Sequence ブロックの出力と比較します。

加法スクランブルのシミュレーション

モデルを実行し、スクランブルされた入力シーケンスのエラー レートの計算結果、およびスクランブラー シーケンスの場合と等しいかどうかの比較結果を表示します。

Number of errors in scrambled output comparison is 0.
Number of mismatches comparing PN sequence output to IEEE 802.11 scrambler sequence 0.

参考文献

[1] IEEE Std 802.11™-2020 (Revision of IEEE Std 802.11-2016). "Part 11: Wireless LAN Medium Access Control (MAC) and Physical Layer (PHY) Specifications." IEEE Standard for Information technology - Telecommunications and information exchange between systems. Local and metropolitan area networks - Specific requirements.

参考

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