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Symbol Synchronizer
シンボル タイミングのクロック スキューの補正
ライブラリ:
Communications Toolbox /
Synchronization
説明
Symbol Synchronizer ブロックは、単一搬送波の送信機と受信機間の PAM、PSK、QAM、または OQPSK 変調スキームのシンボル タイミングのクロック スキューを補正します。詳細については、シンボル同期の概要を参照してください。
メモ
入力信号はサンプルレート ベースで動作し、出力信号はシンボル レート ベースで動作します。
例
シンボルおよびフレーム同期
変化するタイミング誤差によって劣化した QPSK システムからフレーム同期を復旧します。この例では、フレーム同期を支援するためのシンボル同期を実行する利点を示します。
cm_ex_symbol_frame_sync
モデルは、変化するタイミング誤差によって生じたフレーム同期を復旧させます。Variable Fractional Delay ブロックは、ルート レイズド コサイン (RRC) フィルター処理された QPSK 信号に対して、変化するタイミング誤差を発生させます。AWGN ブロックの後に、受信パスが複製され、パスに Symbol Synchronizer ブロックがある場合とない場合のパフォーマンスが比較されます。Symbol Synchronizer ブロックは、送信機と受信機間のクロック スキューを補正し、出力信号を有効なクロック リファレンスに一致させます。この例でのタイミング誤差の条件では、シンボル同期装置は、200 個のサンプルを含む入力ベクトルに対して、99、100 または 101 個のシンボルを含むベクトルを返します。
Frame Synchronizer ブロックは、信号内に存在するフレーム ヘッダーを使用して、シンボル ストリームを正しいフレーム境界に沿って配置します。また、ビット エラー レート (BER) を計算する BER Data Decoding サブシステムに、有効なフレーム インジケーター信号も提供します。無効なフレームに基づいて BER が計算されるのを防ぐため、BER Data Decoding サブシステムは、Bit Generation ブロック出力を使用する代わりに入力データ ビットを再生成します。
S/N 比が 20 dB、タイミング誤差の変動範囲が [0, 0.9] サンプルの場合、シンボル同期を行う受信機パスで信号再生が成功します。Constellation Diagram ブロックの "Before Sym Sync" 信号に見られるように、タイミング誤差が時間の経過とともに変化することにより、コンスタレーションが破損した状態とクリーンな状態の間で変動します。コンスタレーション ダイアグラムの "After Sym Sync" 信号は、変化するタイミング誤差信号による劣化がシンボル同期装置により除去されることを示しています。
シンボル同期がある場合とない場合の BER は、Symbol Synchronizer ブロックによってパフォーマンスが向上することを示しています。
Error rate with symbol synchronization: 0.000 Error rate without symbol synchronization: 0.010
QPSK 信号のタイミング オフセットの補正
Symbol Synchronizer ブロックを使用して、ノイズを含む QPSK 信号の固定シンボル タイミング オフセットを補正します。Symbol Synchronizer ブロックによる出力シンボルの数は可変サイズです。ダウンストリーム処理で固定サイズの信号が必要な場合、Selector (Simulink)ブロックを使用して Symbol Synchronizer の出力を固定サイズの信号に変換できます。
モデルの検証
Delay ブロックは、Raised Cosine Transmit Filter ブロックの出力で信号に 2 サンプルの固定タイミング誤差を追加します。Raised Cosine Transmit Filter ブロックの構成ではシンボルあたり 4 サンプルが出力されるため、タイミング遅延は 0.5 シンボルになります。シンボル同期装置の出力は Selector ブロックによって固定サイズの信号に変換されます。
結果の表示
シンボル同期装置によって QPSK シンボルの解決がどのように改善されるかを確認するため、シンボルの同期前に信号のコンスタレーションを表示し、シンボルの同期後に可変サイズの信号と固定サイズの信号を表示します。
端子
入力
Samp — 入力サンプル
スカラー (既定値) | 列ベクトル
入力サンプル。PAM、PSK、QAM、または OQPSK 変調された単一搬送波信号のスカラーまたは列ベクトルとして指定します。この端子はブロックで名前なしになります。
データ型: double
| single
複素数のサポート: あり
出力
Sym — 出力信号シンボル
スカラー | 列ベクトル
出力信号シンボル。入力と同じデータ型をもつ可変サイズのスカラーまたは列ベクトルとして返されます。入力の次元が Nsamp 行 1 列の場合、[Sym] での出力の次元は Nsym 行 1 列になります。Nsym は Nsamp を Nsps で除算したものとほぼ同じです。Nsps は [Samples per symbol] パラメーターの値と同じです。出力長が の最大出力サイズを超える場合、その出力長は切り捨てられます。
[Normalized timing error output port] を選択しない場合、この端子は名前なしになります。
Err — 推定されたタイミング誤差
スカラー | 列ベクトル
各入力サンプルの推定されたタイミング誤差。範囲 [0, 1] の値をもつスカラーまたは列ベクトルとして返されます。推定されたタイミング誤差は入力サンプル時間で正規化されます。[Err] のデータ型とサイズは、入力信号と同じです。
依存関係
この端子を有効にするには、[Normalized timing error output port] を選択します。
パラメーター
ブロック パラメーターを対話的に編集するには、プロパティ インスペクターを使用します。Simulink® ツールストリップの [シミュレーション] タブの [準備] ギャラリーで [プロパティ インスペクター] を選択します。
Modulation type — 変調タイプ
PAM/PSK/QAM
(既定値) | OQPSK
変調タイプ。[PAM/PSK/QAM]
または [OQPSK]
を指定します。
タイミング誤差検出器 — タイミング誤差検出器のタイプ
Zero-Crossing (decision-directed)
(既定値) | Gardner (non-data-aided)
| Early-Late (non-data-aided)
| Mueller-Muller (decision-directed)
タイミング誤差検出器のタイプ。[Zero-Crossing (decision-directed)]
、[Gardner (non-data-aided)]
、[Early-Late (non-data-aided)]
、または [Mueller-Muller (decision-directed)]
を指定します。このパラメーターは、同期装置で使用するタイミング誤差検出方式を割り当てます。
詳細については、タイミング誤差の検出 (TED)を参照してください。
Samples per symbol — シンボルあたりのサンプル数
2
(既定値) | 1 より大きい正の整数
シンボルあたりのサンプル。1 より大きい正の整数として指定します。詳細については、ループ フィルターの Nsps を参照してください。
Damping factor — ループ フィルターの減衰係数
1
(既定値) | 正のスカラー
ループ フィルターの減衰係数。正のスカラーとして指定します。詳細については、ループ フィルターの ζ を参照してください。
調整可能: Yes
Normalized loop bandwidth — ループ フィルターの正規化帯域幅
0.01
(既定値) | 1 未満の正のスカラー
ループ フィルターの正規化帯域幅。1 未満の正のスカラーとして指定します。ループ帯域幅 (Bn) は、入力信号のシンボル レート (Ts) によって正規化されます。詳細については、ループ フィルターの BnTs を参照してください。
メモ
シンボル同期装置が確実にロックするように、[Normalized loop bandwidth] パラメーターを 0.1
未満の値に設定します。
調整可能: Yes
Detector gain — 位相検出器ゲイン
2.7
(既定値) | 正のスカラー
位相検出器ゲイン。正のスカラーとして指定します。詳細については、ループ フィルターの Kp を参照してください。
調整可能: Yes
Normalized timing error output port — 正規化されたタイミング誤差の出力端子の有効化
on
(既定値) | off
正規化されたタイミング誤差データを出力端子 [Err] で出力するには、このパラメーターを選択します。
Simulate using — 実行するシミュレーションのタイプ
コード生成
(既定値) | インタープリター型実行
実行するシミュレーションのタイプ。[コード生成]
または [インタープリター型実行]
として指定します。
コード生成
— 生成された C コードを使用してモデルをシミュレートします。シミュレーションの初回実行時、Simulink は対象ブロックの C コードを生成します。このモデルは、モデルが変更されない限り以降のシミュレーションで C コードを再利用します。このオプションを使用すると、シミュレーションの起動時間は長くなりますが、以降のシミュレーションの速度は[インタープリター型実行]
オプションを使用した場合よりも速くなります。インタープリター型実行
— MATLAB® インタープリターを使用してモデルをシミュレートします。このオプションを使用すると、起動時間が短縮されますが、以降のシミュレーションの速度は[コード生成]
オプションを使用した場合よりも遅くなります。このモードで、ブロックのソース コードをデバッグできます。
詳細については、シミュレーション モード (Simulink)を参照してください。
ブロックの特性
データ型 |
|
多次元信号 |
|
可変サイズの信号 |
|
アルゴリズム
シンボル同期の概要
シンボル タイミング同期装置アルゴリズムは、次の 4 つの要素で構成される位相同期回路 (PLL) アルゴリズムをベースにしています。
タイミング誤差検出器 (TED)
内挿器
内挿コントローラー
ループ フィルター
OQPSK 変調の場合、信号の同相成分と直交成分は、状態バッファーを使用して、前の入力の最後の半分のシンボルをキャッシュし、最初に揃えられます (QPSK 変調と同様)。最初の整列の後、残りの同期処理は QPSK 変調の場合と同じです。
このブロック線図は、タイミング同期装置の例を示しています。この図で、整合フィルター処理の後、シンボル タイミング PLL が受信サンプル信号 x(t) に作用します。シンボル タイミング PLL は、送信機と受信機間のクロック スキューを補正した後、シンボル信号 を出力します。
タイミング誤差の検出 (TED)
シンボル タイミング同期装置は、非データ支援 TED 方式と判定指向 TED 方式をサポートしています。次の表は、TED 方式オプションに対するタイミング推定式を示しています。
TED メソッド | 式 |
---|---|
ゼロクロッシング (判定指向) | |
Gardner (non-data-aided) | |
アーリーレイト (非データ支援) | |
Mueller-Muller (decision-directed) |
非データ支援 TED (ガードナーおよびアーリーレイト) 法は受信したサンプルを使用しますが、送信信号の情報やチャネル推定の結果を使用しません。非データ支援 TED は、同相軸または直交軸に一致するコンスタレーション点をもつ変調スキームを使用して信号のタイミング誤差を推定するために使用されます。ガードナー法またはアーリーレイト法に適した信号の例には、{1+0i, 0+1i, -1+0i, 0−1i} に点をもつ位相オフセットがゼロの QPSK 変調信号や、位相オフセットがゼロの BPSK 変調信号が含まれます。
アーリーレイト法はガードナー法に似ていますが、ガードナー法はアーリーレイト法に比べ自己ノイズが低いため、SNR 値の高いシステムで優れたパフォーマンスを発揮します。
ガードナー法 — ガードナー法は、搬送波位相再生に依存しない非データ支援フィードバック法です。ベースバンド システムと変調搬送波システムに使用されます。より具体的には、この手法は約 40% ~ 100% の過剰帯域幅をもつナイキスト パルスによる線形変調タイプを使用するシステムで使用されます。例としては、PAM、PSK、QAM、または OQPSK 変調を使用するシステム、ロールオフ係数が 0.4 ~ 1 のレイズド コサイン フィルターを使用する信号を整形するシステムなどがあります。ノイズがある場合、このタイミング再生方法の性能は、過剰帯域幅 (レイズド コサイン フィルターの場合はロールオフ係数) の増大とともに向上します。ガードナー法はアーリーレイト ゲート法に似ています。
アーリーレイト法 — アーリーレイト法は、非データ支援フィードバック法です。PAM、PSK、QAM、または OQPSK 変調などの線形変調タイプを使用するシステムに適しています。たとえば、ナイキスト パルスのあるレイズド コサイン フィルターを使用するシステムがこれに該当します。ノイズがある場合、このタイミング再生方法の性能は、パルスの過剰帯域幅 (レイズド コサイン フィルターの場合はロールオフ係数) の増大とともに向上します。
判定指向 TED (ゼロクロッシングおよびミュラー・マラー) 法は、関数 sign
を使用して、受信したサンプルの同相成分と直交成分を推定するため、非データ支援 TED 法に比べ計算量が少なくなります。
ゼロクロッシング法 — ゼロクロッシング法は、同期装置の入力にシンボルあたり 2 つのサンプルが必要な判定指向の手法です。過剰帯域幅のすべての値の SNR 条件が低い場合や、おおよその範囲が [0.4, 0.6] となる中程度の過剰帯域幅係数の SNR 条件が中程度の場合に使用されます。
ミュラー・マラー法 — ミュラー・マラー法は、判定指向のフィードバック法で、搬送波位相の事前再生を必要とします。入力信号にナイキスト パルスがある場合 (たとえば、レイズド コサイン フィルターを使用する場合)、ミュラー・マラー法には自己ノイズはありません。ノイズがある狭帯域信号の場合、ミュラー・マラー法の性能はパルスの過剰帯域幅係数の減少とともに向上します。
判定指向方式 (ゼロクロッシングおよびミュラー・マラー) では、同期装置に渡される信号の同相成分と直交成分の符号に基づいてタイミング誤差を推定するため、ゼロの同相または直交成分のいずれかに点をもつコンスタレーション用には推奨されません。 および は、タイミング誤差検出器への入力信号の同相成分と直交成分です。ここで、 は推定されるタイミング誤差です。ミュラー・マラー法の係数 および は、 および の推定です。タイミングの推定は、関数 sign
を同相成分と直交成分に適用することで実行され、判定指向 TED 方式にのみ使用されます。
内挿器
時間遅延は、シンボル レートに同期しない整合フィルターの固定レート サンプルから推定されます。結果として得られるサンプルはシンボルの境界に揃わないため、内挿器を使用してサンプルを "移動" させます。時間遅延が未知であるため、内挿が適応可能でなければなりません。また、内挿されるものは利用可能なサンプルの線形結合であることから、これをフィルターの出力であると考えることもできます。
内挿器は、Farrow 構造と 1/2 に設定されている係数 α をもつ区分的な放物線内挿器を使用します (Rice, Michael, Digital Communications: A Discrete-Time Approach を参照)。
内挿制御
内挿制御によって、内挿器は基底点インデックスと非整数間隔を与えられます。基底点インデックスは内挿に最も近いサンプルのインデックスです。非整数間隔は、内挿とその基底点インデックス間の時間と内挿間隔との時間比率です。
内挿はサンプルごとに実行され、内挿が出力であるかどうかを判別するためにストローブ信号が使用されます。同期装置は、1 を法とするカウンターの内挿制御を使用して、内挿器で使用するストローブと非整数間隔を供給します。
ループ フィルター
同期装置は比例積分器 (PI) ループ フィルターを使用します。比率ゲイン K1 および積分器ゲイン K2 は、
および
により計算されます。中間項 θ は次により求められます。
ここで、
Nsps はシンボルあたりのサンプル数です。
ζ は減衰係数です。
BnTs は、ループ帯域幅 (Bn) をシンボル レート (Ts) で正規化したものです。
Kp は検出器ゲインです。
参照
[1] Rice, Michael. Digital Communications: A Discrete-Time Approach. Upper Saddle River, NJ: Prentice Hall, 2008.
[2] Mengali, Umberto and Aldo N. D’Andrea. Synchronization Techniques for Digital Receivers. New York: Plenum Press, 1997.
拡張機能
C/C++ コード生成
Simulink® Coder™ を使用して C および C++ コードを生成します。
バージョン履歴
R2015a で導入
MATLAB コマンド
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コマンドを MATLAB コマンド ウィンドウに入力して実行してください。Web ブラウザーは MATLAB コマンドをサポートしていません。
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