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comm.DPSKModulator

M-ary DPSK 手法を使用した変調

説明

comm.DPSKModulator オブジェクトは、M-ary 差動位相偏移変調メソッドを使用して信号を変調します。出力は、変調信号のベースバンド表現です。

差動位相シフト信号を変調するには、以下の手順に従います。

1. comm.DPSKModulator オブジェクトを作成し、そのプロパティを設定します。

2. 関数と同様に、引数を指定してオブジェクトを呼び出します。

System object の機能の詳細については、System object とはを参照してください。

作成

構文

dpskmod = comm.DPSKModulator

dpskmod = comm.DPSKModulator(Name=Value)

dpskmod = comm.DPSKModulator(M,phase,Name=Value)

説明

dpskmod = comm.DPSKModulator は、M-ary 差動位相偏移変調 (M-DPSK) メソッドを使用して入力信号を変調する変調器 System object™ を作成します。

dpskmod = comm.DPSKModulator(Name=Value) は、名前と値の引数を 1 つ以上使用してプロパティを設定します。

dpskmod = comm.DPSKModulator(M,phase,Name=Value) は、ModulationOrder プロパティを M に設定し、PhaseRotation プロパティを phase に設定し、さらにオプションで名前と値の引数を使用して、M-DPSK 変調器オブジェクトを作成します。

プロパティ

特に指定がない限り、プロパティは "調整不可能" です。つまり、オブジェクトの呼び出し後に値を変更することはできません。オブジェクトは呼び出すとロックされ、ロックを解除するには関数 release を使用します。

プロパティが "調整可能" の場合、その値をいつでも変更できます。

プロパティ値の変更の詳細については、System object を使用した MATLAB でのシステム設計を参照してください。

ModulationOrder — 信号コンスタレーション点の数

8 (既定値) | 正の整数

信号コンスタレーション点の数。正の整数として指定します。

データ型: double

PhaseRotation — 追加の位相シフト

pi/8 (既定値) | スカラー

以前の変調シンボルと現在の変調シンボルの間の追加の位相シフト (ラジアン単位)。スカラーとして指定します。この値は、入力が 0 の場合の以前の変調シンボルと現在の変調シンボルの間の位相差に対応します。

データ型: double

BitInput — ビットとしての入力データ

false または 0 (既定値) | true または 1

ビットとしてデータを入力するためのオプション。数値または logical を使用して、0 (false) または 1 (true) として指定します。

• このプロパティを false に設定した場合、System object への入力は範囲 [0, (M – 1)] の整数シンボル値から成る列ベクトルでなければなりません。ここで、M は ModulationOrder プロパティの値を表します。

• このプロパティを true に設定すると、入力は、長さが log2(ModulationOrder) の整数倍のビット値の列ベクトルにならなければなりません。このベクトルには、範囲 [0, (M – 1)] の整数を表すビット表現が含まれます。

データ型: logical

SymbolMapping — コンスタレーション符号化

"Gray" (既定値) | "Binary"

コンスタレーション符号化。"Gray" または "Binary" として指定します。このプロパティは、オブジェクトが整数または log2(ModulationOrder) 入力ビット グループを対応する変調信号にマップする方法を制御します。

• このプロパティを "Gray" に設定すると、オブジェクトはグレイ符号化された信号コンスタレーションを使用します。

• このプロパティを "Binary" に設定すると、範囲 [0, (M – 1)] の入力整数 L は出力位相をシフトします。M は ModulationOrder の値を表します。このシフトは、元の出力位相から (ϕ + 2×π×L / M) ラジアンになります。ϕ は PhaseRotation プロパティの値です。出力シンボルは exp(j×ϕ + j×2×π×L / M)× (previously modulated symbol) です。

依存関係

このプロパティは、BitInput プロパティを true に設定した場合に適用されます。

OutputDataType — 出力のデータ型

"double" (既定値) | "single"

出力のデータ型。"double" または "single" として指定します。

使用法

構文

Y = dpskmod(X)

説明

Y = dpskmod(X) は復調された DPSK ベースバンド信号を返します。

入力引数

X — 入力データ

整数 | 列ベクトル

入力データ。整数として指定するか、数値データ型の整数または logical データ型のビットからなる列ベクトルとして指定します。

BitInput プロパティの設定は、入力データの解釈を決定します。

メモ

入力信号をバイナリの要素として処理するには、BitInput プロパティを 'true' に設定します。バイナリ入力の場合、行数は log₂(M) の整数倍でなければなりません。この関数は、log₂(M) ビットのグループをシンボルにマッピングします。ここで、最初のビットは MSB を表し、最後のビットは LSB を表します。

出力引数

Y — DPSK 変調されたベースバンド信号

列ベクトル (既定値)

DPSK 変調されたベースバンド信号。列ベクトルとして返されます。

複素数のサポート: あり

オブジェクト関数

オブジェクト関数を使用するには、System object を最初の入力引数として指定します。たとえば、obj という名前の System object のシステム リソースを解放するには、次の構文を使用します。

release(obj)

すべての System object に共通

step	System object のアルゴリズムの実行
release	リソースを解放し、System object のプロパティ値と入力特性の変更を可能にします。
reset	System object の内部状態のリセット

例

AWGN 環境下の 8-DPSK 信号

DPSK 変調器と復調器のペアを作成します。

bps = 3;   % Bits per symbol
M = 2^bps; % Modulation order  
dpskmod = comm.DPSKModulator(M,pi/8,BitInput=true);
dpskdemod = comm.DPSKDemodulator(M,pi/8,BitOutput=true);

エラー レート計算機を作成します。差分変調によって生じる 1 ビットの遷移に対応するため、ComputationDelay プロパティを 1 に設定します。

errorRate = comm.ErrorRate(ComputationDelay=1);

次のメイン ステップから成るデータ フレーム処理ループを実行します。

1. 150 個の 3 ビット シンボルから成るデータ フレームを生成します。

2. データを 8-DPSK 変調します。

3. AWGN チャネルを通してデータをフィルター処理します。

4. データを 8-DPSK 復調します。

5. 誤り統計を収集します。

numframes = 100; % Number of frames
spf = 150;       % Symbols per frame
snr = convertSNR(10,"ebno","snr",BitsPerSymbol=3);
for counter = 1:numframes
    txData = randi([0 1],spf,1);
    modSig = dpskmod(txData);
    rxSig = awgn(modSig,snr,'measured');
    rxData = dpskdemod(rxSig);
    errorStats = errorRate(txData,rxData);
end

誤りの統計を表示します。

ber = errorStats(1)

ber = 0.0095

numErrors = errorStats(2)

numErrors = 143

numBits = errorStats(3)

numBits = 14999

アルゴリズム

DPSK 変調

DPSK は位相偏移変調の非コヒーレントな形式で、受信機にコヒーレントな基準信号は必要ありません。DPSK の場合、連続した入力シンボルの間の差が特定の位相にマッピングされます。

DPSK のデメリットは、エネルギー効率がコヒーレント PSK を約 3 dB 下回ることです。

整数値信号とバイナリ値信号

入力が整数の場合、有効な入力値は範囲 [0 M-1] の整数です。この場合、入力はスカラーまたは列ベクトルのいずれの値も取り得ます。最初の入力が k₁ の場合は、変調されたシンボルは次のようになります。

$$\exp \left(j\theta +j2\pi \frac{k_1}{m}\right)$$

ここで、θ は Phase Rotation プロパティを表します。次の入力が k の場合は、変調されたシンボルは次のようになります。

$$\exp \left(j\theta +j2\pi \frac{k}{m}\right)\cdot (\text{previous modulated symbol})$$

入力の型がビット入力の場合、オブジェクトは整数を表すバイナリ値の入力を受け入れます。

オブジェクトはバイナリ値の信号を K = log₂(M) ビットのグループに集約します。

ここで、

K は、シンボルあたりのビット数を表します。

入力ベクトルの長さは K の整数倍でなければなりません。この設定では、オブジェクトは K ビットのグループを受け入れ、そのグループを出力でシンボルにマッピングします。出力は、K ビットの各グループごとに 1 つの変調シンボルになります。

入力できるのは、長さが K の整数倍の列ベクトルです。

バイナリ入力モードの場合、Symbol Mapping プロパティは、オブジェクトが K 入力ビットのグループを対応する位相差にマッピングする方法を示します。"Binary" オプションではバイナリ符号から整数へのマッピングが使用されますが、"Gray" オプションではグレイ符号の位相差割り当てが使用されます。たとえば、次の表は、[Binary] オプションと [Gray] オプションの両方について、3 ビット入力に対する位相差の割り当てを示しています。θ は Phase Rotation プロパティです。位相差は、前のシンボルと現在のシンボルの間のものです。

現在の入力	バイナリ符号の位相差	グレイ符号の位相差
[0 0 0]	jθ	jθ
[0 0 1]	jθ + jπ/4	jθ + jπ/4
[0 1 0]	jθ + jπ2/4	jθ + jπ3/4
[0 1 1]	jθ + jπ3/4	jθ + jπ2/4
[1 0 0]	jθ + jπ4/4	jθ + jπ7/4
[1 0 1]	jθ + jπ5/4	jθ + jπ6/4
[1 1 0]	jθ + jπ6/4	jθ + jπ4/4
[1 1 1]	jθ + jπ7/4	jθ + jπ5/4

拡張機能

C/C++ コード生成

MATLAB® Coder™ を使用して C および C++ コードを生成します。

使用上の注意および制限:

MATLAB コード生成における System object (MATLAB Coder)を参照してください。

バージョン履歴

R2012a で導入

参考

関数

• dpskmod | dpskdemod | pskmod | pskdemod

オブジェクト

• comm.DPSKDemodulator | comm.DBPSKModulator | comm.DQPSKModulator

ブロック

• M-DPSK Modulator Baseband | M-DPSK Demodulator Baseband