マイクログリッド制御とは
マイクログリッド制御とは、マイクログリッドの運用を管理・調整するために用いる手法や技術を指します。従来の電力系統とは対照的に、マイクログリッドは回転慣性が小さく、主にインバーターベースのリソースに依存するため、需要の変動の影響を受けやすくなります。さらに、分散型発電の統合や双方向の電力潮流は、運用が一層複雑化する一因となっています。
そのため、マイクログリッドを適切なグリッドコードに沿って運用できるようにする最適なマイクログリッド制御が不可欠です。効果的なマイクログリッド制御は、再生可能エネルギーと従来型エネルギーの双方を含む多様なエネルギー源とエネルギー貯蔵システムを連動させることで、特定のエリア内での安定した効率的な発電と配電を可能にし、バランスの取れた信頼性の高い電力供給を維持できるようにします。
マイクログリッドは、2 つの異なるモードで運用できるように設計されており、それぞれに特有の利点と制御上の課題があります。
- 系統連系モード: この構成では、マイクログリッドは主系統に連系したまま運用されます。そのため、需要が高い時や地域内での発電量が少ない時には系統から電力供給を受け、地域内での発電量が消費量を上回る時には余剰電力を系統に逆潮流させることができます。
- 自立運転モード: この構成では、マイクログリッドは電力系統から切り離され、自律的に運用されます。ここで、マイクログリッド制御システムが、発電ユニットの電圧と周波数を調整する重要な役割を担います。この機能により、主系統からの送電がなくても地域の需要に対して安定した信頼性の高い電力供給を維持できるため、系統停電時や遠隔地では特に有用です。
マイクログリッドの制御モード
マイクログリッド制御はいくつかの専用モードで行われ、それぞれが特定の運用条件や課題に対応できるよう設計されています。こうした制御モードの実装は、マイクログリッドの安全で安定した効率的な運用を実現する上で不可欠です。
- グリッド同期: このモードでは、連系前にマイクログリッドと系統の電圧の大きさ、周波数、位相を一致させることができます。電圧が一致していないと、電圧過渡現象などの電気的な外乱が発生し、不安定な運用や設備の破損の原因となります。
- グリッドフォーミング: このモードでは、マイクログリッド内の特定の発電ユニットが、AC システムの電圧と周波数、または DC システムの電圧を能動的に制御します。グリッドフォーミング制御は、自立運転モード時に必要不可欠で、独立運用を支える安定した基盤を提供します。
- グリッド フォローイング: このモードでは、マイクログリッドで電圧や周波数を設定しません。その代わり、連系点の状況に応じて、AC システムの有効電力と無効電力または DC システムの電力の出力を調整します。このモードは、マイクログリッドが電力系統と同期して運用されている場合に使用します。
- 出力抑制: 想定外の事象や運用上の負荷が生じた際に、発電量または負荷のいずれかを減少させることで出力抑制を行います。これにより、システムの安定性と安全性を維持し、過負荷を防いでマイクログリッドの継続的かつ安全な運用を可能にします。
MATLAB と Simulink によるマイクログリッド制御システムの設計
マイクログリッド制御システムの設計、シミュレーション、解析には、MATLAB® と Simulink® を活用できます。このモデリング環境では、統合されたマイクログリッド フレームワーク内で、従来型発電機、風力・太陽光発電システム、エネルギー貯蔵ユニットなど、さまざまなエネルギー源を一元的にモデリングしてシミュレーションすることができます。
モデルの忠実度は、エンジニアリング ライフサイクルの段階に応じて調整できます。たとえば、初期段階の実現可能性調査では、動的挙動を簡略化した低忠実度モデルを用いることで、システムの動作を素早く検証して、全体的な制御手法を評価することができます。設計が進むにつれ、中/高忠実度のモデルを用いることで、電気や制御の詳細な動的挙動を捉えることができるため、正確な性能解析やハードウェアインザループ テスト、さらにはリアルタイム実装が可能になります。特に高忠実度モデルは、インバーターベースのリソースをさまざまな運用条件下でシミュレーションする際に有用です。
MATLAB と Simulink を活用することで、制御アルゴリズムやエネルギーマネジメントシステムの開発が可能となり、最適化された電力供給、システムの安定性向上、運用効率の改善を実現できます。
Simscape Electrical を使用して、バッテリー、燃料電池、太陽光発電 (PV) アレイシステムで構成されるマイクログリッド ネットワークを、AC 発電機と負荷を含む電力系統に接続したモデルを作成できます。
システム モデリングや制御設計の他に、マイクログリッドと電力系統の相互運用性の評価や、需要計画の精度を高める負荷予測、組み込みシステムやリアルタイム シミュレーターへの制御戦略の実装も可能です。
マイクログリッド制御の詳細については、パワー エレクトロニクス シミュレーション、リアルタイム シミュレーション、ドループ制御、グリッドフォーミング インバーターの各ページをご覧ください。
製品使用例および使い方
ソフトウェア リファレンス
参考: エネルギー生産, 電力系統の設計とシミュレーション