ユーザー事例

EVLO Energy Storage、モデルベースデザインによりエネルギーマネジメントシステムの開発を加速

課題

次世代 EMS の設計による、大規模なエネルギー貯蔵システムの性能の向上とライフスパンの延長

ソリューション

モデルベースデザインを使用した、EMS コントローラーのモデル化、シミュレーションに基づくテストによる設計の検証、複数ターゲット向けのコードの生成

結果

  • 数時間でアルゴリズムをプロトタイピング
  • 再利用可能なバーチャル ESS を展開
  • 品質が継続的に向上

「当社がエネルギー貯蔵システムを販売する際、顧客は多くの場合、自社の送電網でそのシステムが動作するかどうかを検証する必要があります。そこで EMS ソフトウェアスイートの開発に使用したものと同じ Simulink プラントモデルを提供することにしました。その結果、顧客の送電網に機器を設置する前に正確なシミュレーションを行うことができ、このサービスを競争力のあるコストで提供できています。」

Adile Ajaja, EVLO
オレンジ色の金属製筐体で、前面が銀色となっており、左側にプラス記号、右側にマイナス記号がついている、2 台の EVLO 500。

カナダ、モントリオール近郊の太陽光発電施設に接続されている 4 MWh のエネルギー貯蔵システムに組み込まれた 2 台の EVLO 500。(画像著作権: EVLO Energy Storage Inc., 2021)


エネルギー貯蔵システム (ESS) は、再生可能エネルギー源を安全かつ確実に電力網に統合するうえで重要な役割を担っています。このシステムは、必要に応じて電力を吸収および注入する "電力平滑化" 機能を備えており、風力発電源や太陽光発電源でよく見られる出力変動を抑制できます。また、水力発電源の水量管理機能や周波数制御機能も備えています。

大規模な ESS には、バッテリーセル、インバーター、相互接続ハードウェア、温度制御装置などのコンポーネントを格納した複数のラックが組み込まれています。効率的なエネルギーマネジメントシステム (EMS) により、ESS のすべてのコンポーネントが適切に連携し、システム全体の性能とライフスパンが最大化されます。EMS のソフトウェア開発は、実際のハードウェアでのテストが複雑で困難なため、多くの場合、時間も労力もかかります。

Hydro-Québec の子会社である EVLO のエンジニアは、MATLAB と Simulink によるモデルベースデザイン (MBD、モデルベース開発) を使用して、実用規模のエネルギー貯蔵システム用 EMS の開発を加速しています。EVLO のシニア ソフトウェア チーム マネージャー、Adile Ajaja 氏は、次のように述べています。「EMS 用のコードの記述とその後のメンテナンスはリソース集約的で、多くの人手が必要です。モデルベースデザインを使用すると、顧客に直接価値を提供する EMS の設計そのものに注力し、シミュレーションで設計検証を行い、PLC や組み込みプロセッサを含む各種展開オプション用のコードを生成できます。」

課題

バッテリーセルは何度も充放電を繰り返すと発熱し、性能や耐用時間の低下を招きます。EVLO のシステムは、リチウムイオン電池よりも熱安定性が高いリン酸鉄リチウム電池を使用して設計されていますが、EVLO のエンジニアには、利用可能なバッテリーセルすべてに充放電を分散して熱発生とその悪影響を最小限に抑制する、インテリジェント制御手法の実装が求められていました。

500-kWh と 1-MWh の ESS で制御手法の妥当性確認や検証を直接実行することは現実的ではないため、EVLO はサードパーティのコンポーネント サプライヤーが提供するサブモデルを組み込んだ、完全なプラントモデルを構築する方法を必要としていました。最終的にチームは、実装を加速するために、コードを手書きせず、各種ターゲット プラットフォーム用のコードを生成したいと考えました。

ソリューション

EVLO のエンジニアは、設計ワークフローにおいて、Simulink® を使用して EMS コントローラーとプラントの両方をモデル化しています。製品オンボーディングのサポートとワークフローの合理化のため、MathWorks のアプリケーション エンジニアとコンサルタントが EVLO に協力しました。現在では、EVLO のチームは完全に自立して作業を行っています。

エンジニアは Stateflow® とともに Simulink を使用して、インバーターやその他の EMS コンポーネントとのインターフェイスを提供するハードウェア抽象化層、電力平滑化や周波数制御アルゴリズムを含むアプリケーション層、電力効率とコンポーネント寿命を最大化する最適化層という複数の層でコントローラーをモデル化しています。

また、Requirements Toolbox™ を使用して、IBM® DOORS® Next のシステム要件と高レベルの要件を Simulink コントローラーモデルの対応する要素にリンクし、その後、要件の検証に使用するテストケースにリンクさせています。

Simulink で作業を続けながら、エンジニアは ESS プラントとその各コンポーネントをモデル化します。場合によっては、コンポーネント サプライヤーがプラントモデルに直接組み込める Simulink モデルを提供することもあります。それ以外の場合、EVLO のエンジニアが自ら Simscape™ と Simscape Electrical™ を使用してコンポーネントをモデル化します。

チームは、コントローラーとプラントのモデルを使用して一連のシミュレーションを実行し、設計を検証しています。モデル アドバイザー チェックにより、モデルが高信頼性ガイドラインに準拠していることを確認し、Simulink Design Verifier™ を使用してゼロ除算やその他の設計エラーを特定します。

また、Simulink Test™ を使用して、モデルのシミュレーションを基にテストケースを作成します。このテストケースは、チームの継続的インテグレーション プロセスの一環として、Parallel Computing Toolbox™を使用してマルチコア ワークステーション上で実行されます。テストを実行すると、Simulink Coverage™ がモデルカバレッジを解析し、コントローラーモデルのテストされていない要素を特定します。

展開先のターゲット ハードウェアに応じて、エンジニアは Simulink PLC Coder™ または Embedded Coder™ を使用して、コントローラーモデルからコードを生成します。また、Simulink Coder™ を使用してプラントモデルからもコードを生成し、このコードをハードウェアインザループの回帰テストに使用します。

EVLO では、モデルベースデザインを電気自動車用充電ステーションなど他の製品ラインにも拡大しており、FPGA 展開を目的としてモデルから HDL コードを生成しています。

結果

  • 数時間でアルゴリズムをプロトタイピング。Ajaja 氏は次のように述べています。「モデルベースデザインを使用すると、従来の方法よりもはるかに早く、アルゴリズムの初期バージョンをプロトタイピングし、テストできます。Simulink やコード生成を使用しなければ数日かかるような、完全に機能するプロトタイプの作成を数時間で行えます。」
  • 再利用可能なバーチャル ESS を展開。Ajaja 氏は次のように説明しています。「Simulink のプラントモデルをコンパイルしたインスタンスは、ラボのバーチャルマシン上で実行できます。ESS の実機代わりにこの設定を使用すれば、コントローラーをテストでき、オペレーターのトレーニングや潜在顧客向けのデモに再利用できるため、これは当社にとって大きなメリットです。」
  • 品質が継続的に向上。Ajaja 氏は次のように述べています。「Simulink は、要件定義からデスクトップおよび HIL シミュレーション、回帰テストまで、当社の開発ライフサイクル全体をサポートしており、V 字モデルのすべてのステップを単一の環境で実行できます。これはソフトウェアの品質を長期的に維持し、向上させる上で重要です。」