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comm.CRCGenerator
CRC 符号ビットの生成と入力データへの付加
説明
comm.CRCGenerator
System object™ は入力フレームごとに巡回冗長検査 (CRC) 符号ビットを生成し、それらをフレームに付加します。詳細については、CRC 発生器の動作を参照してください。
入力フレームごとに CRC 符号ビットを生成し、それらをフレームに付加するには、以下の手順に従います。
comm.CRCGenerator
オブジェクトを作成し、そのプロパティを設定します。関数と同様に、引数を指定してオブジェクトを呼び出します。
System object の機能の詳細については、System object とはを参照してください。
作成
構文
説明
は CRC 符号発生器 System object を作成します。このオブジェクトは、指定された生成多項式に従って CRC ビットを生成し、それらを入力フレームに付加します。crcgenerator
= comm.CRCGenerator
は、1 つ以上の名前と値のペアを使用してプロパティを設定します。たとえば、crcgenerator
= comm.CRCGenerator(Name
,Value
)comm.CRCGenerator('Polynomial','z^16 + z^14 + z + 1')
は CRC 発生器 System object を構成し、CRC-16 巡回冗長検査ビットを入力フレームに付加します。各プロパティ名を引用符で囲みます。
は CRC 符号発生器 System object を作成します。このオブジェクトは、crcgenerator
= comm.CRCGenerator(poly,Name
,Value
)Polynomial
プロパティを poly
に設定し、指定の他のプロパティは指定の値に設定しています。
プロパティ
特に指定がない限り、プロパティは "調整不可能" です。つまり、オブジェクトの呼び出し後に値を変更することはできません。オブジェクトは呼び出すとロックされ、ロックを解除するには関数 release
を使用します。
プロパティが "調整可能" の場合、その値をいつでも変更できます。
プロパティ値の変更の詳細については、System object を使用した MATLAB でのシステム設計を参照してください。
Polynomial
— 生成多項式
'z^16 + z^12 + z^5 + 1'
(既定値) | 多項式の文字ベクトル | バイナリ行ベクトル | 整数行ベクトル
CRC アルゴリズムの生成多項式。次のいずれかとして指定します。
'z^3 + z^2 + 1'
などの多項式の文字ベクトル。バイナリ行ベクトル。降べきの順に並べた生成多項式の係数を表します。このベクトルの長さは (N+1) です。ここで N は生成多項式の次数です。たとえば、
[1 1 0 1]
は、多項式 z3+ z2+ 1 を表します。多項式の非ゼロの項の z の指数を降べきの順に含む整数行ベクトル。たとえば、
[3 2 0]
は、多項式 z3 + z2 + 1 を表します。
詳細については、Communications Toolbox での多項式の表現を参照してください。
既定値は CRC-16-CCITT 生成多項式です。次の表に、よく使用される生成多項式の例を示します。
CRC 名 | 生成多項式 |
---|---|
CRC-32 | 'z^32 + z^26 + z^23 + z^22 + z^16 + z^12 + z^11 + z^10 + z^8 + z^7 + z^5 + z^4 + z^2 + z + 1' |
CRC-24 | 'z^24 + z^23 + z^14 + z^12 + z^8 + 1' |
CRC-16 | 'z^16 + z^15 + z^2 + 1' |
CRC-16-CCITT | 'z^16 + z^12 + z^5 + 1' |
反転 CRC-16 | 'z^16 + z^14 + z + 1' |
CRC-8 | 'z^8 + z^7 + z^6 + z^4 + z^2 + 1' |
CRC-4 | 'z^4 + z^3 + z^2 + z + 1' |
例: 'z^7 + z^2 + 1'
、[1 0 0 0 0 1 0 1]
、および [7 2 0]
は同一の多項式 p(z) = z 7 + z 2 + 1 を表します。
データ型: double
| char
InitialConditions
— 内部シフト レジスタの初期状態
0
(既定値) | 1
| バイナリ行ベクトル
内部シフト レジスタの初期状態。バイナリ スカラー、または生成多項式の次数に等しい長さをもつバイナリ行ベクトルとして指定します。スカラー値は、生成多項式の次数に等しい長さの行ベクトルに拡張されます。
データ型: logical
DirectMethod
— CRC チェックサムの計算での直接アルゴリズムの使用
false
(既定値) | true
CRC チェックサムの計算での直接アルゴリズムの使用。false
または true
を指定します。
このプロパティを true
に設定すると、CRC チェックサムの計算に直接アルゴリズムが使用されます。このプロパティを false
に設定すると、CRC チェックサムの計算に非直接アルゴリズムが使用されます。
直接アルゴリズムと非直接アルゴリズムの詳細については、誤りの検出と訂正を参照してください。
データ型: logical
ReflectInputBytes
— 入力バイトを反転する
false
(既定値) | true
入力バイトを反転する。false
または true
を指定します。このプロパティを true
に設定すると、シフト レジスタに入力される前に入力フレームがバイト単位で反転されます。
このプロパティを true
に設定する場合、入力フレーム長を ChecksumsPerFrame
プロパティの値で除算した結果が整数で 8
の倍数でなければなりません。
データ型: logical
ReflectChecksums
— 最終の XOR の前にチェックサムを反転する
false
(既定値) | true
最終の XOR の前にチェックサムを反転する。false
または true
を指定します。このプロパティを true
に設定すると、入力データがシフト レジスタを完全に通過した後に CRC チェックサムが 180° 反転されます。
データ型: logical
FinalXOR
— Final XOR
0 (既定値) | バイナリ スカラー | バイナリ ベクトル
Final XOR。バイナリ スカラー、または生成多項式の次数に等しい長さをもつバイナリ行ベクトルとして指定します。FinalXOR
プロパティの値と CRC チェックサムを使用して XOR 演算が実行されてから、入力チェックサムとの比較が実行されます。スカラー値は、生成多項式の次数に等しい長さの行ベクトルに拡張されます。0
に設定すると、XOR 演算を実行しないことと等価になります。
データ型: logical
ChecksumsPerFrame
— 各フレームで計算されるチェックサムの数
1 (既定値) | 正の整数
各フレームで計算されるチェックサムの数。正の整数として指定します。詳細については、CRC 発生器の動作を参照してください。
データ型: double
使用法
入力引数
X
— 入力信号
バイナリ列ベクトル
入力信号。バイナリ列ベクトルとして指定します。入力フレームの長さは ChecksumsPerFrame
プロパティの値の倍数でなければなりません。入力データ型が double の場合は、最下位ビットがバイナリ値として使用されます。詳細については、CRC 発生器の動作を参照してください。
このオブジェクトは可変サイズの入力を受け入れます。オブジェクトがロックされると、各入力チャネルのサイズは変更できますが、チャネルの数は変更できません。詳細については、Variable-Size Signal Support with System Objectsを参照してください。
データ型: double
| logical
出力引数
codeword
— 出力コードワード フレーム
バイナリ列ベクトル
出力コードワード フレーム。入力信号のデータ型を継承するバイナリ列ベクトルとして返されます。出力には、CRC 符号シーケンス ビットが付加された入力フレームが含まれています。
出力コードワード フレームの長さは m + k * r です。ここで、m は入力メッセージのサイズ、k は入力フレームあたりのチェックサムの数、r は生成多項式の次数です。詳細については、CRC 発生器の動作を参照してください。
オブジェクト関数
オブジェクト関数を使用するには、System object を最初の入力引数として指定します。たとえば、obj
という名前の System object のシステム リソースを解放するには、次の構文を使用します。
release(obj)
例
ランダム メッセージの誤りの CRC 検出
バイナリ データを CRC 発生器を通して渡し、ビット エラーを発生させてから、CRC 検出器を使用して誤りを検出します。
ランダムなバイナリ ベクトルを作成します。
x = randi([0 1],12,1);
ChecksumsPerFrame
プロパティを 2
に設定した CRC 発生器を使用して、入力メッセージ フレームを符号化します。これにより、受信フレームが同じ長さの 2 つのサブフレームに分割されます。
crcgenerator = comm.CRCGenerator([1 0 0 1],'ChecksumsPerFrame',2);
codeword = crcgenerator(x);
コードワードを復号化して、いずれのサブフレームにも誤りがないことを確認します。
crcdetector = comm.CRCDetector([1 0 0 1],'ChecksumsPerFrame',2);
[~, err] = crcdetector(codeword)
err = 2×1
0
0
サブフレーム 2 の最後の要素を反転させることで、2 番目のサブフレームに誤りを発生させます。誤りを含むコードワードを CRC 検出器を通して渡し、2 番目のサブフレームの誤りが検出されるかを検証します。
codeword(end) = not(codeword(end)); [~,err] = crcdetector(codeword)
err = 2×1
0
1
イーサネットの CRC-32 発生器
IEEE Standard for Ethernet [1] の 3.2.9 節の説明に従って、イーサネットのフレーム チェック シーケンス (FCS) フィールドの CRC-32 符号を作成します。
rng(1865); % Seed for repeatable results
MAC フレームの保護されているフィールド、特に、宛先アドレス、ソース アドレス、長さフィールドまたはタイプ フィールド、MAC クライアント データ、およびパディングを表すため、ランダム データを使用してメッセージを初期化します。
data = randi([0,1],100,1);
イーサネット メッセージの符号化に使用する CRC-32 生成多項式を指定します。
poly = [32,26,23,22,16,12,11,10,8,7,5,4,2,1,0];
規格に指定されている手順に従い、CRC 符号を生成する非直接法を使用して、CRC を計算します。
% Section 3.2.9 step a) and b) dataN = [not(data(1:32));data(33:end)]; crcGen1 = comm.CRCGenerator(... 'Polynomial',poly, ... 'InitialConditions',0, ... 'DirectMethod',false, ... 'FinalXOR',1); % Section 3.2.9 step c), d) and e) seq = crcGen1(dataN); csNondirect = seq(end-31:end);
規格に指定されている手順に従い、CRC 符号を生成する直接法を使用して、CRC を計算します。
crcGen2 = comm.CRCGenerator( ... 'Polynomial',poly, ... 'InitialConditions',1, ... 'DirectMethod',true, ... 'FinalXOR',1); txSeq = crcGen2(data); csDirect = txSeq(end-31:end);
非直接法と直接法を使用して生成された CRC 符号を比較します。
disp([csNondirect';csDirect']);
1 1 1 0 1 1 0 0 1 0 0 1 0 1 0 0 1 0 1 0 1 1 0 0 0 1 1 1 0 0 1 0 1 1 1 0 1 1 0 0 1 0 0 1 0 1 0 0 1 0 1 0 1 1 0 0 0 1 1 1 0 0 1 0
isequal(csNondirect,csDirect)
ans = logical
1
rng('default'); % Reset the random number generator
参考文献
[1] IEEE Computer Society. IEEE Standard for Ethernet:Std 802.3-2012.New York, NY:2012.
アルゴリズム
巡回冗長検査符号化
巡回冗長検査 (CRC) 符号化は、データ フレームの送信時に発生する誤りを検出するための誤り制御符号化手法です。ブロック符号や畳み込み符号とは異なり、CRC 符号には組み込みの誤り訂正能力がありません。代わりに、通信システムが受信したコードワードで CRC 符号化の誤りを検出すると、受信側はコードワードを再送信するよう送信側に要求します。
CRC 符号化では、送信側で各データ フレームに規則が適用され、"チェックサム" または "シンドローム" という余分な CRC ビットが作成され、チェックサムがデータ フレームに追加されます。送信されたコードワードを受信した後、受信機は受信したコードワードに同じルールを適用します。結果のチェックサムが非ゼロの場合、誤りが発生しているので、送信側はデータ フレームを再送信する必要があります。
フレームあたりのチェックサムの数が 1 より大きい場合、入力データ フレームがサブフレームに分割され、各データ サブフレームに規則が適用され、個々のチェックサムが各サブフレームに追加されます。サブフレームのコードワードが連結されて、1 つのフレームが出力されます。行列入力をサポートする機能では、入力データの各列が個別に処理されます。
直接および間接の CRC アルゴリズム
comm.CRCGenerator
System object は、間接または直接の CRC アルゴリズムを使用した CRC チェックサムの生成と検出をサポートします。
間接 CRC アルゴリズム
間接 CRC アルゴリズムは、多項式 M に対応するバイナリ データ ベクトルを受け取り、多項式 C に対応する r ビットのチェックサムを追加します。xr による乗算は入力ベクトルを左側に r ビット シフトすることに相当するので、入力ベクトルとチェックサムの連結は、多項式 T = M×xr + C に対応します。アルゴリズムは、T が次数 r の定義済み多項式 P (生成多項式) によって除算されるように C を選択します。
アルゴリズムは、T を P で除算し、チェックサムを剰余に対応するバイナリ ベクトルに等しくなるように設定します。したがって、T = Q×P + R の場合 (ここで、R は r より小さい次数の多項式)、チェックサムは R に対応するバイナリ ベクトルです。アルゴリズムは、チェックサムの長さが r になるように、必要に応じてチェックサムの先頭に 0 を追加します。
CRC アルゴリズムの伝送位相を実装する CRC 生成機能は、以下の処理を行います。
入力データ ベクトルを r ビットだけ左にシフトし、対応する多項式を P で除算します。
チェックサムを長さ r (ステップ 1 の剰余に相当) のバイナリ ベクトルと等しくなるように設定します。
チェックサムを入力データ ベクトルに追加します。結果は出力ベクトルです。
先に説明したように、CRC 検出機能は、その入力ベクトル全体のチェックサムを計算します。
CRC アルゴリズムは、バイナリ ベクトルを使用してバイナリ多項式を降べきの順で表します。たとえば、ベクトル [1 1 0 1]
は、多項式 x3+ x2+ 1 を表します。
ビットは、最小のインデックス ビットから最大のインデックス ビットに向かって線形フィードバック シフト レジスタ (LFSR) に入力されます。入力メッセージ ビットのシーケンスは、メッセージ多項式の係数を降べきの順で表します。メッセージ ベクトルは r 個の 0 で拡張され、LFSR をフラッシュします (ここで r は生成多項式の次数です)。左端のレジスタ ステージからの出力 d(1) が 1 の場合、シフト レジスタ内のビットは生成多項式の係数と XOR 計算されたものです。拡張されたメッセージ シーケンスが LFSR を介して完全に送信されると、レジスタにはチェックサム [d(1) d(2) . . . d(r)] が含まれます。これはバイナリ長除算の実装です (メッセージ シーケンスが分子で多項式が分母です)。CRC チェックサムは、除算演算の剰余です。
直接 CRC アルゴリズム
次のブロック線図は直接 CRC アルゴリズムを示しています。
"メッセージ ブロック入力" が の場合の "コード ワード出力" は次のようになります。
直接 CRC 符号化の初期ステップは、位置 X にある 3 つのスイッチによって生起します。このアルゴリズムは k 個のメッセージ ビットを符号化器に送り込みます。これらのビットは、符号語出力の最初の k ビットです。同時に、線形フィードバック シフト レジスタ (LFSR) に k 個のビットが送信されます。k 番目のメッセージ ビットの LFSR への送り込みが完了すると、スイッチは Y の位置に移動します。この例では、LFSR には多項式除算の数値剰余が含まれます。これらのビットは、LFSR からシフトされます。これらのビットは、符号語出力の残りのビット (チェックサム) です。
CRC 発生器の動作
CRC 発生器は、指定された生成多項式とフレームあたりのチェックサムの数に従って、CRC チェックサムを入力フレームに追加します。
内部シフト レジスタが特定の初期状態にあり、入力フレームあたり k 個のチェックサムがある場合、次のようになります。
入力信号は等しいサイズの k 個のサブフレームに分割されます。
k 個の各サブフレームの前に、初期状態のベクトルが付加されます。
CRC アルゴリズムが各サブフレームに適用されます。
各サブフレームの終わりに結果のチェックサムが付加されます。
サブフレームが連結されて、1 つの列ベクトルとして出力されます。
次に示すシナリオでは、10 ビットのフレームが入力であり、生成多項式 z3 + z2 + 1 で CRC チェックサムを計算します。また、初期状態は 0 で、フレームあたりのチェックサムの数は 2 です。
入力フレームはサイズ 5 の 2 つのサブフレームに分割され、サイズ 3 のチェックサムが計算されて、それぞれのサブフレームに付加されます。初期状態 [0]
は CRC アルゴリズムの出力に影響を与えないため、初期状態は表示されません。出力から送信されるコードワード フレームのサイズは 5 + 3 + 5 + 3 = 16 ビットになります。
参照
[1] Sklar, Bernard. Digital Communications: Fundamentals and Applications. Englewood Cliffs, N.J.: Prentice-Hall, 1988.
[2] Wicker, Stephen B. Error Control Systems for Digital Communication and Storage. Upper Saddle River, N.J.: Prentice Hall, 1995.
拡張機能
C/C++ コード生成
MATLAB® Coder™ を使用して C および C++ コードを生成します。
使用上の注意および制限:
MATLAB コード生成における System object (MATLAB Coder)を参照してください。
参考
関数
オブジェクト
ブロック
トピック
MATLAB コマンド
次の MATLAB コマンドに対応するリンクがクリックされました。
コマンドを MATLAB コマンド ウィンドウに入力して実行してください。Web ブラウザーは MATLAB コマンドをサポートしていません。
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