医用画像解析

医用画像解析とは

医用画像解析は、医用画像から意味のある情報を抽出するプロセスです。多くの場合、計算手法を使用して行われます。医用画像解析のタスクには、2D 画像と 3D ボリュームの可視化と調査、画像データのセグメンテーション、分類、レジストレーション、3D 再構成などがあります。この解析用の画像は、X 線 (2D および 3D)、超音波、コンピューター断層撮影 (CT)、磁気共鳴画像法 (MRI)、核画像 (PET および SPECT)、顕微鏡検査などの医用画像モダリティから取得できます。

PET と CT スキャンのフュージョン画像。色分けされた領域を含む医用画像処理の結果が視覚的に表現されています。

Medical Imaging Toolbox を使用すると、PET や CT などの複数モダリティの医用画像を読み込んで表示できます。(MATLAB ドキュメンテーションを参照)

医用画像解析には、顕微鏡画像から細胞を数えて特定する作業が含まれることがあります。たとえば、細胞内のがん性異常を解析して検出する場合などがあります。繰り返し作業や主観的な判断が求められる作業には、医用画像解析を自動化するか合理化して、人為的なミスによるばらつきを排除するために、コンピューターによる計算手法を用いることができます。腫瘍組織と壊死組織のセグメント化や、血管の酸素飽和度の測定を進めることもできます。

医用画像解析に使用されている腫瘍組織の 10 枚の画像。

腫瘍組織の多重解像度画像 (元画像) から生成された 10 個の高解像度ブロック。MATLAB では、メモリに収まりきらない非常に大きなサイズの画像にブロック処理を施すだけでなく、このデータを用いてディープラーニング ネットワークの学習を行うこともできます。(コードを参照)

医用画像解析の技術を活用することで、MRI 画像から 3D モデルを構築し、臓器機能などの診断指標を数値化することができます。

医用画像処理のセグメンテーションを示す脳の 3D モデル。各領域が異なる色でラベル付けされています。

Medical Imaging Toolbox で医用画像ラベラーアプリと MONAI を使用して、脳の MRI スキャンをセグメント化して解析できます。(コードを参照)

医用画像解析アルゴリズムは、ウェアラブルデバイスから収集したデジタルヘルスデータなどの大規模データに適用できます。このアルゴリズムを活用することで、病気や健康上のリスクを管理し、健康状態や生活の質を向上させることができます。

MATLAB による医用画像解析

MATLAB® の開発環境には、医用画像解析アルゴリズムの作成に必要な解析機能やデータアクセス機能があらかじめ組み込まれています。MATLAB では、以下を行うことができます。

  • DICOM、NIfTI、NRRD などの医用ファイル形式の解析、読み込み、可視化、処理
  • 2D 画像と 3D ボリュームの可視化と調査
  • ノイズ除去、フィルター処理、拡張などの前処理技術の活用
  • 変形/非変形レジストレーションの関数やアプリを使用した複数の画像やボリュームの位置合わせ
  • 非常に大きなサイズの多重解像度画像や高解像度画像の処理
  • 組み込み画像ラベリング/セグメンテーションのアルゴリズムやアプリによる医用画像解析タスクの簡略化
  • ディープラーニング ネットワークの作成、変更、転送

MATLAB では、医用画像ラベラーアプリを使用して 2D 画像や 3D ボリュームを操作できます。たとえば、ヒトの脳の MRI データを医用画像ラベラーに読み込んで可視化し、個々の領域のラベリングとセグメントテーションを行い、異常の有無やパターンを解析できます。

3D セグメンテーションを用いた脳の医用画像処理を示すソフトウェアのスクリーンショット。

Medical Imaging Toolbox の医用画像ラベラーアプリで MONAI を使用してセグメント化された脳の 3D ボリュームデータ。(コードを参照)

デジタルパソロジーでは、組織スライド全体が画像化およびデジタル化されます。結果として得られるホールスライド画像 (WSI) は極めて高解像度です。WSI はメモリに読み込むことができないため、アウトオブコアの画像処理技術が必要となり、読み取りは簡単ではありません。MATLAB の bigimage オブジェクトは、このような多重解像度画像を格納および処理できます。画像を読み込んだ後は、Cellpose などのツールを使用して細胞をセグメント化することが可能です。

腫瘍組織の元画像とラベル付けした画像が表示された医用画像解析機能のスクリーンショット。

Medical Imaging Toolbox を使用すると、このような腫瘍組織を含むリンパ節の画像に対してブロック処理を施し、Cellpose を用いてセグメント化できます。(コードを参照)

MATLAB にはレジストレーション用のアプリも用意されています。たとえば、3D データには医用レジストレーション推定器アプリを、2D データにはレジストレーション推定器アプリを用いて、それぞれ対話的に位置合わせすることができます。

さまざまなボリュームの位置合わせツールとパラメーター設定を備えた医用画像処理の MATLAB インターフェイス。

Medical Imaging Toolbox の医用レジストレーション推定器アプリを使用して、複数のボリュームの位置合わせを行います。(コードを参照)

MATLAB では、ディープラーニング手法を用いて 2D 画像や 3D ボリュームのノイズ除去、拡張、セグメント化を行うこともできます。ニューラル ネットワークを設計して学習を行ったり、事前学習済みのネットワークを使用したりすることが可能です。

医用画像処理を用いてセグメント化された腫瘍組織を示す脳の MRI。

MATLAB とラベル付きグラウンドトゥルース (左) やネットワーク予測 (右) を使用してセグメント化された脳細胞内の腫瘍。(コードを参照)


参考: 生物科学, 生命工学および製薬, 医療機器, 画像処理およびコンピューター ビジョン

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