ゼロックス社: MathWorksツールを使用して開発工数削減
課題
開発プロセスを合理化し、更にプリンタ用紙の軌道制御の設計アイデアを検証。
ソリューション
プラントおよびコントローラのモデリング、自動コード生成、ターゲットハードウェア上でのコードのリアルタイム実行にMathWorks製品を利用。
結果
- 最大80%の制御開発工数の削減
- 統合されたツールで合理化されたワークフロー
- ハードウェア開発スケジュールに依存せずにテスト実行
初の自動普通紙コピー機を含む15,000以上の特許を米国で有するゼロックス社は世界トップレベルの技術イノベーターです。ゼロックス社では技術力を維持するために、ゼロックスイノベーショングループという社内R & Dチームにより新たなアプローチや方法論が検討されています。
プリンタ開発プロセスの改善に努めているゼロックスイノベーショングループは、MATLAB® の利用範囲をシミュレーション & 解析からSimulink® とSimulink Real-Time™により開発されたソフトウェアプロトタイプをベースにしたラピッドプロトタイピングまで拡張しました。
ゼロックス社の Marc Daniels氏はこのように語っています。「製品イノベーションや印刷技術を生み出すことが我々の組織の目的です。MathWorks製品は自由度の高 いプロトタイプ開発やそのプロトタイプの制御に役立っています。そしてそれは、結果的に開発工数削減につながり、製品の迅速な市場投入に大いに貢献してい ます。」
課題
プリンタ用紙の軌道制御技術を改善するために、ゼロックスイノベーショングループは、駆動モータと同様に、プリンタ内を移動するプリンタ用紙や丁合・プリンティング・ホッチキス止めを行うフィニッシャー上にあるプリンタ用紙を含むプリンタコンポーネントのモデリングおよびシミュレーション方法を検討していました。個々の用紙には守らなければならない正確な位置・速度要求があります。
ゼロックス社の研究者Dr. Martin Krucinskiは次のように説明しています。「我々は開発プロセスを途中で中断しないためにも実際にモノを作る前にプロトタイプをモデリングする必要があります。また、シミュレーション結果を検証するためにリアルタイムでの全ての信号測定が必要です。」なぜなら従来の計測方法では時間を浪費してしまうので、研究グループでは迅速なデータ収集と可視化のためのツールも必要としていたからです。
ソリューション
ゼロックス社ではMathWorksツールを使用してプリンタのプロトタイプを開発し、制御方式を検証しています。
Dr. Krucinskiは次のように述べています。「SimulinkとSimulink Real-Timeにより様々なレベルでプリンタをシミュレーションすることができます。また、都合の良いタイミングでシミュレーションを行ったコンポーネント と実際のコンポーネントを交換することで迅速さを体感できます。」
エンジニアは、Simulinkを使用してDCモータ、ソレノイド、センサおよび両面印刷の用紙の動きをガイドするゲートを含むプリンタの電気コンポーネントをモデリングしています。このプリンタモデルは次回の制御システム開発のプラントモデルとしても利用されます。
ゼロックス社ではSimulinkでシミュレーションを実行することによりプリンタのプラントモデルを検証します。MATLABとSystem Identification Toolbox™はプリンタ実機からのデータ解析に使用します。この実機データと比較した後にシミュレーション結果を適合させるためにモデルをチューニングします。
SimulinkとControl System Toolbox™を使用して、ゼロックス社はDCモータ、ゲートおよびローラリリース用のコントローラを開発します。Stateflow®は動作モードのモデリングと用紙の軌道や速度計測に使用します。
Daniels氏は次のように述べています。「Stateflowは、ある特定の時間に有効なステートマシンを容易にモデリングすることができます。そしてこのモデリングは正しく軌道に沿って用紙が動くために重要です。」
コントローラの動作は設定可能なSimulinkのサブシステムを使用したプラントモデルとコントローラモデルを組み合わせることで検証します。Simulink Coder™はコントローラやプラントのコード生成に使用します。Simulink Real-Timeを用いたプラントシステムにより、ハードウェアインザループによるリアルタイム、クローズドループテストを行うことができます。これによりプロトタイプコントローラの動作検証を行うことができます。
Dr. Krucinskiは次のように説明しています。「コントローラが動作している時に、コントローラは実機か、シミュレーション用のプラントか、どちらが接 続されているかは判断できません。実機を製作している最中であっても、プラントの半分が実機でまだ製作されていない残りの半分をモデルでシミュレーション を継続することができます。」
Simulink Real-TimeはフレキシブルなPC設定を行うことができるので、ゼロックス社は小型のプリンタの場合には、2枚のI/Oカードを備えたオフィスPCを使用して実験を行っています。より大規模なアプリケーションでは、商用I/Oカード19枚までをサポートする大型拡張ケースを持つPCを使用しています。
また、Dr. Krucinskiは次のように述べています。「MathWorksツールは、迅速に参照プロットを生成することができ、また、実験データを収集するための実ハードウェアのブロックに置き換えることができます。これにより結果を検証するグラフを比較することができます。これらのツールがハンドリングする大 量のデータロギングやシグナルインタロゲーションは驚くべきものです。」
結果
- 最大80%の制御開発工数の削減. Dr. Krucinskiは次のように述べています。 「ステートマシンをハンドコーディングするよりもSimulinkとStateflowを使用した方が5倍は多くのコントロールタスクを扱うことができま す。Simulinkで作成したモデルは自己文書化できるので、実装の段階で更なる工数削減が期待できます。なぜなら、量産部門のエンジニアが製品仕様を より理解することが期待できるからです。」
- 統合されたツールで合理化されたワークフロー. Dr. Krucinskiは次のように説明しています。「MathWorksツールは密接に組み合わされており、ツール同士がうまく一緒に動作します。例えば、 Stateflowを使用する時にSimulink環境から変更する必要はありませんし、全ての過去のパーツは全く同じ動作をします。また、ツールを切り 替える必要がありません。」
- ハードウェア開発スケジュールに依存せずにテスト実行. ゼロックス社はまだ製作されていな いシステムのプロトタイプをモデリングするためにMathWorksツールを使用しています。Daniels氏は次のように言及しています。「現在、実機 のシステムの一部を制御するコントローラを検証しています。そこではまだ製作されていないコンポーネントも含めてシミュレーションを行ってしています。」