SerDes とは
SerDes (シリアライザー/デシリアライザー) は 2 つの集積回路で構成され、ASIC または FPGA での入力数と出力数を減らすために高速通信で使用されます。基本的に、これらの回路は並列データをシリアル化された形式に変換し、離れた場所にそれを送信して、送信先で元の並列形式に戻します。SerDes 回路は、電気通信ネットワーク、コンシューマー エレクトロニクス、車載ネットワークシステムなどの各種システムでデータの高速移動を実現するために欠かせないものであり、さまざまなものがネットワークにつながるようになったこの世界で非常に重要です。
SerDes の技術には高速シリアルデータの符号化、送信、受信、復号化といった複雑なプロセスが含まれ、シグナル インテグリティを高めるために送信機と受信機の両方にイコライゼーションが適用されます。SerDes システムの設計および検証は、容易ではありません。なぜなら、高いデータレートの管理、複雑なチャネル間でのシグナル インテグリティの確保、高度なイコライゼーション手法の実装、ジッターの最小化、電力効率の管理、業界標準への準拠などを必要とするからです。こうしたタスクは、高次変調スキームの要求、技術のスケーリング、他のベンダーの IP との相互運用性の必要性によりさらに複雑化するため、機能横断的なアプローチと、シミュレーションおよびテストの方法論が必要になります。
MATLAB® および Simulink® には、エンジニアが SerDes システムをモデル化、解析、最適化できるシミュレーション環境が用意されています。これらのツールを使えば、ハードウェア プロトタイプに移行する前に、時間領域および周波数領域の解析、カスタムの変調スキームの設計、S パラメーターのインポートを行って、チャネル劣化要因がシステムのパフォーマンスに与える影響をテストすることができます。
SerDes 技術の進化
コンピューティング、電気通信、コンシューマー エレクトロニクス、自動車ネットワーク、その他の用途により、帯域幅の拡大に対する需要は高まる一方です。技術の進歩によって USB、PCIe、イーサネットのデータ伝送速度は高速化し、帯域幅はわずか 30 年で数十 ~ 数百 Mbps から、数百 Gbps へと増加しました。
SerDes の設計および検証における課題
SerDes を設計および検証する際の課題としては、以下が挙げられます。
- モデル化とシミュレーション: SerDes システムの動作をシミュレーションするための詳細なモデルを作成する。
- イコライゼーション手法: SerDes システムをテストするためにさまざまなイコライゼーション戦略を設計してシミュレーションする。
- IBIS-AMI モデルの開発: IBIS algorithmic modeling interface (AMI) モデルを開発して検証する。
- コンプライアンスのテスト: SerDes の設計を業界標準に照らしてテストする。
SerDes システムのモデル化とシミュレーション
SerDes システムは複雑であるため、さまざまな操作条件でパフォーマンスを正確に予測するには、高度なモデル化とシミュレーションの手法が必要です。これには、SerDes のアナログおよびデジタルの構成要素をシミュレーションできる、詳細かつ正確なモデルを作成することが含まれます。こうしたモデルを作成すれば、物理的なプロトタイプを作成する前にシステムの動作を把握して、時間とリソースを節約することができます。
SerDes Toolbox™ に含まれる SerDes Designer アプリを使えば、さまざまなアーキテクチャとパラメーターのラピッド プロトタイピングと探索が可能になります。このアプリでは、アイダイアグラム、バスタブ曲線、パルス/インパルス応答を可視化して、さまざまな条件下の SerDes システムのパフォーマンスを比較できます。Simulink を使用することで、エンジニアはスティミュラスとチャネルをカスタマイズしながら、送信機と受信機両方の SerDes アーキテクチャの詳細なモデルを作成できます。
SerDes のイコライゼーション手法
SerDes システムは、損失や歪みが発生するチャネルを介して運用されることが多いため、送信されたデータを正確に復元するために高度なイコライゼーション手法が必要になります。その際の課題が、チャネル劣化要因をリアルタイムで補正することができる適応イコライゼーション アルゴリズムの設計と実装です。
SerDes Toolbox を使用すれば、設計者はイコライゼーション ブロック (フィードフォワード イコライザー (FFE)、判定フィードバック イコライザー (DFE)、連続時間線形イコライザー (CTLE) など) を SerDes モデルに組み込み、送信機と受信機両方のイコライゼーション プロセスをシミュレーションして最適化できます。さらに、SerDes Toolbox は ADC ベースのアーキテクチャをサポートしているため、高度なデータ復元とエラー修正のための高性能なデジタル信号処理 (DSP) 手法を統合することが可能になります。これらのブロックにより、設計者は、複雑なイコライゼーション戦略をモデル化して符号間干渉 (ISI)、信号損失、クロストークなどのチャネル劣化要因を減らし、シグナル インテグリティを強化することができます。
エンジニアは、以下の方法で SerDes Toolbox をイコライゼーションに使用できます。
- 組み込みのイコライゼーション ブロック (FFE、DFE、CTLE など) をそのまま使用する
- 上記のブロックを独自のニーズに合わせて変更する
- 特別なニーズや固有のニーズのために、カスタムのイコライゼーション アルゴリズムを作成する
これらのツールを使用すると、設計者はイコライゼーション戦略のプロトタイピング、テスト、最適化をすばやく実行して、SerDes モデルを固有の設計要件やパフォーマンス目標に合わせて調整することができます。
SerDes IBIS-AMI モデルの開発
SerDes の設計において、IBIS algorithmic modeling interface (AMI) モデルの開発は、異なるベンダー コンポーネント間の相互運用性とパフォーマンスを確保するために重要な要素です。SerDes Toolbox は、さまざまな例や業界標準のコンプライアンス キットによって、IBIS-AMI モデルの開発に対する広範なサポートを提供しています。エンジニアは、これらの例を使用して、SerDes の送信機と受信機の IBIS-AMI モデルの生成、デバッグ、検証を行うことができます。SerDes Toolbox を使用して、ユーザーは IBIS-AMI モデルを自動的に生成できます。生成したモデルをシステムレベルのチャネル シミュレーター (Signal Integrity Toolbox™ など) で使用して、SerDes のリンクの動作を高精度で予測することができます。こうしたモデルをプリシリコン検証に使用すれば、エンジニアは高速通信システムの市場投入までの時間を大幅に短縮できます。
SerDes 設計のコンプライアンス テスト
業界標準に準拠した SerDes を設計すれば、異なるシステム間やプラットフォーム間での互換性、信頼性、パフォーマンスを確保して、スムーズな統合と SerDes 市場での幅広い受け入れを促すことができます。SerDes Toolbox と Signal Integrity Toolbox には、業界標準のコンプライアンス テストに対応したさまざまなキットが用意されています。SerDes Toolbox には、設計が PCIe、USB、イーサネット、その他の標準の仕様を満たしているかテストして検証できる機能が備わっています。この組み込みのコンプライアンス テストは、すぐに利用できるセットアップが用意されているため、検証プロセスが合理化されます。エンジニアは、設計が意図した環境で正常に機能するかどうかを確認できます。
SerDes Toolbox のモデル化、シミュレーション、解析、テスト機能と、ミックスドシグナル設計向けのその他の製品を活用することで、エンジニアは SerDes の設計と解析に関する課題を解消し、開発サイクルを短縮して、高速通信システムのパフォーマンスを高めることができます。
製品使用例および使い方
例
使い方および詳細を説明するリソース
ソフトウェア リファレンス
参考: IBIS-AMI, S パラメーター, シグナル インテグリティ, Mixed-Signal Blockset™, RF Toolbox™, ミックスドシグナル システム, 無線および有線通信システム