日産が空燃比コントローラーに要するキャリブレーション時間を短縮し、排出ガス性能を改善

「日産は、長年にわたり、モデルベースデザインを用いて開発を加速し製品を改善する新しい方法を模索してきました。その中で、MATLAB と Simulink の最適化製品を導入し、既存の AFR コントローラーの性能改善により排ガスを削減させることができました。」

課題

エンジン排出ガスの削減、および、キャリブレーション時間短縮によるAFR コントローラーの製品開発の加速

ソリューション

モデルベースデザインに Optimization Toolbox と Simulink Design Optimization を使用することで、コントローラー性能を最適化し、パラメーターのキャリブレーションを自動化

結果

  • NOx および CO の排出を半分以上削減
  • キャリブレーション時間を 90% 短縮
  • キャリブレーション品質の安定化
The Nissan Altima.

日産 アルティマ

およそ 20 年にわたり、日産自動車のエンジニアは MATLAB® および Simulink® を用いたモデルベースデザインにより、自動車コンポーネントの制御システム開発を加速してきました。現在、日産でのパワートレインにおける制御アプリケーションの約 85% がモデルベースデザインにより開発されています。

日産のエンジニアは、既に量産されている空燃比コントローラー (AFR) の性能を改善し、キャリブレーション時間を短縮する課題に取り組みました。このAFR システムでは、スライディングモード制御 (SMC)を採用しています。SMCはプラントの不確かさや外乱の扱いを得意とする制御手法です。エンジニアは、コントローラーゲインの最適化による排ガス削減とキャリブレーション自動化に向けて、MATLAB、Simulink、および、他のモデルベースデザインのツールに加えて、Optimization Toolbox™ と Simulink Design Optimization™ を適用しました。

「MathWorks の最適化ツールを使用して AFR コントローラーの性能を改善し、キャリブレーション手法を改良しました。結果として、特定の条件下では NOx と CO の排出が半減しました。」 (日産自動車、パワートレイン制御開発部主管、加藤浩志氏)

課題

AFR システムは既に量産されているため、コントローラーのゲイン値のみを変更することが可能で、構造やサイズを変更することはできません。まず、制御性能の改善に向けて、測定した入出力データに基づき、より正確なプラントモデルを作成する必要がありました。

また、日産のエンジニアは、それまで試行錯誤の手動プロセスにより SMC ゲインを調整していたため、シミュレーションの繰り返しが必要でした。このプロセスには多大な労力を要し、制御性能の要件を満たすゲイン値を特定するのに 30 時間以上を費やすこともありました。そのため、このプロセスを自動化・高速化する必要がありました。

ソリューション

日産のエンジニアは、システム同定と最適化に MATLAB と Simulink 製品を使用し、既存の AFR コントローラーの性能を改善して、コントローラーのキャリブレーションを自動化しました。

最初にMathWorks のアプリケーション エンジニアと協力し、パイロット プロジェクトを通じてコントローラーの最適化による排ガス削減とキャリブレーション時間短縮の実現性を示しました。

日産のエンジニアは、System Identification Toolbox™ を使用し、測定した入出力の周波数応答データから、エンジンのプラントモデルのパラメーターを同定しました。プラントモデルの精度をさらに改善するために、Optimization Toolbox を用いて制約付き非線形最適化問題を解き、プラントモデルのシミュレーション結果と測定データ間の誤差を最小化することで、パラメーターを微調整しました。

より正確なプラントモデルの獲得後、Control System Toolbox™ を使用して SMC ゲインを設計しました。

次に、日産のエンジニアは Simulink Design Optimization を用いてモデルのキャリブレーション プロセスを自動化しました。手動でパラメーター値を変更してテストする代わりに、Simulink モデルの信号に時間応答の要件を指定し、その要件を満たすように自動的にゲインを調整します。

日産は、パイロット プロジェクトで最適化ベースのキャリブレーション手法の実現性を示した後、既存車種におけるAFR制御キャリブレーションの見直しを始めています。また、ターボチャージャーや可変バルブタイミング (VVT) 制御など、他のデバイス制御アプリケーションへの適用も計画しています。

結果

  • NOx および CO の排出を半分以上削減。「Optimization Toolbox および System Identification Toolbox を用いて既存の AFR 制御システムの性能を改善することで、排気ガスが大きく削減されました。開発中エンジンでの開発評価の一環として、特定の条件下ではNOxとCOの排出が半分以上削減されることが分かりました。」 (加藤氏)
  • キャリブレーション時間を 90% 短縮。「Simulink Design Optimization により、コントローラーゲインのキャリブレーション プロセスが自動化されました。このキャリブレーション工程は、手動で約 35 時間かかっていましたが、現在では3.5 時間のみで済んでいます。」 (加藤氏)
  • キャリブレーション品質の安定化。「MathWorks と開発した最適化ベースの手法を含むキャリブレーション ツールにより、実エンジンから測定した単純なステップ応答データから、ほぼ自動的に最適な解を得ることができます。これにより、キャリブレーションの業務をアウトソーシングすることができるようになり、エンジニアのスキルレベルに関わらず、安定した品質を得ることができるようになりました。」 (加藤氏)