株式会社ミツバ、リバーシング ワイパー システムの開発を加速

「モデルベース開発を採用したことにより、当社の開発プロセスに即時に改善が見られました。デザインレビューのスピードが上がり、欠陥や要求仕様における問 題点の発見がより効率的になったのです。エラーを早期に発見し、やりなおし作業を減らすことで、高品質のコントローラーを以前の 2 割の時間で完成することができました」

課題

革新的なリバーシング ワイパー システム コントローラーの設計と実装ソリューション

ソリューション

MathWorks のモデルベース開発ツールを使用した、制御システムのモデリング、シミュレーション、検証、および量産コードの生成

結果

  • ある特定の機能開発において、期間を 16 週間から 3 週間に短縮
  • デザインレビュー期間と紙文書を 90% 削減
  • 設計の早期検証とやりなおし作業の最小化

リバーシングワイパーシステムのコントローラー

ミツバの革新的なリバーシング ワイパーシステムは、ドライバーと自動車メーカーの両者に利益をもたらします。このシステムは、使用時以外はワイパーがボンネットの下に隠れるため、車の 外観やドライバーの視界を損ねず、また同時に空力抵抗も低減します。システムの組み込みコントローラーは、モーターの稼働角度を動的に変更して、風圧やワ イパーの速度変化に対応することができます。このシステムでは機械部品の稼働範囲が最小限に抑えられるため、ワイパーはよりコンパクトになり、車両設計への統合が簡単になります。

ミツバでは MathWorks のモデルベース開発ツールを使用して、ひとつの機能開発プロジェクトにおいて、わずか 3 週間でこのワイパーシステムのコントローラーを開発し、量産コードを含む完全なシステムを完成させました。

ミツバの研究員、新井 貴男氏は次のように述べています。「モデルベース開発というアプローチとMathWorksのツールは当社にとって新しいものでしたが、開発のスピードと 製品の品質に明らかな向上が見られました。MathWorks のツールでモデルベース開発を進めることにより、開発後期の最終的なハードウェアを使ったテストで問題点を発見するのではなく、要求仕様や初期の設計にお いて問題点を特定し、早い段階で解決することができました。」

課題

リバーシング ワイパー システムは、制御がかなり複雑なため、従来のシステムよりも設計が難しくなります。ミツバではこれまで、紙ベースの要求仕様書、および手書きのコードに依 存して開発を行っていました。デバッグと許容範囲テスト (パラメーターチューニング) は実際のハードウェアのみで可能だったため、ほとんどの問題点は開発後期まで発見されることはなく、システムの品質に影響を与える大幅なやり直し作業が必要とされました。また厳しい納期に合わせるために、システム開発を加速しなければなりませんでした。

さらに、このシステムはミツバにとって初めて開発するものであったため、新しい制御アルゴリズムと設計のアイデアをできるだけ早く検証する必要がありました。新井氏は続けてこう述べています。「紙面のみで設計の詳細を理解するのは難しいため、以前は設計の見直しに長い時間をかけていました。自動車業界では、モデルベースのアプローチをとる ことがトレンドとなりつつあります。当社のお客様 (自動車メーカー) の多くはすでにこの方向に動いており、当社もこの動きに従う必要があるのは明らかでした。」

ソリューション

ミツバでは MathWorks のモデルベース開発ツールを使用して、リバーシング ワイパー システムの制御のモデリング、シミュレーション、検証、量産コードの生成を行いました。ミツバではプロジェクトを開始する前に、モデルベース開発に円滑に移行できるようにいくつかの対策をとりました。エンジニアのグループが 10 日間の社内トレーニングに参加し、モデリングのガイドラインと設計手順のドラフトを作成しました。また、エンジニアの継続的な教育を推進するために、 JMAAB スタイル ガイドライン(JMAAB: Japan MATLAB® Automotive Advisory Board により策定) および組み込みスキル標準 (ETSS: Embedded Technology Skill Standards) に基づいたスキル標準を作成しました。同時に、開発を加速し、品質の向上、社内やお客様とのコミュニケーションを改善するために、モデルとシミュレーショ ンを活用しました。

エンジニアは、仕様を元に Simulink® を使用して、制御の構造や機能、テストハーネスをモデル化しました。 そして Simulink と Simscape Multibody™ を使用して、フロントワイパーのリンク機構、ワイパー アーム、ボディマウントを含むプラントモデルを作成したのです。

その後、制御システムとプラントモデルを使用して閉ループのシミュレーションを実行して、コントローラーの機能を検証し、ワイパーの物理的仕様がどのようにモーター制御に影響するかを見極めました。そしてこれらのシミュレーションに基づき、変数のスケーリングを行って詳細な制御モデルを作成しました。

また、Real-Time Workshop® を使用して制御モデルとプラントモデルから C コードを生成し、このコードを使用して SIL(Software-in-the-loop) シミュレーションとリアルタイムの PIL (Processor-in-the-loop) シミュレーションを行いました。HIL (Hardware-in-the-loop) シミュレーションでは、Simulink と Stateflow® で作成したテストハーネスを使用して、プラントモデルのコードを組み込み、プロセッサー上で実行しました。

そして Real-Time Workshop Embedded Coder™ を使用して NEC 78K シリーズ 8ビット マイクロコントローラーの量産コードを生成し、量産ハードウェアで最終テストを行いました。

リバーシング ワイパー システムは現在すでに量産されており、月間 2 万~ 3 万台を出荷しています。ミツバではこのワイパー システムのコンポーネントとプラントモデルを現在進行中のプロジェクトに再利用しています。同社では、

結果

  • ある特定の機能開発において、期間を 16 週間から 3 週間に短縮. 新井氏は次のよう に述べています。「当社の以前の設計プロセスでは、ある特定の機能開発プロジェクトにおいて、仕様からマイクロプロセッサーで量産コードを実行するまで、 通常 4 ヵ月かかっていましたが、モデルベース開発を適用することで、そのプロジェクトをわずか 3 週間で完了することができました。ハードウェアのみでテストを行うのではなく、シミュレーションを通じてデバッグやテストを行うことで、開発をさらに加速 することができました。」
  • デザインレビュー期間と紙文書を 90% 削減. 「Simulink と Stateflow のモデルを実行可能な仕様書として使用することで、デザインレビューのプロセスを大幅に合理化できました。従来の 10% の時間で詳細な見直しを完了できたのに加え、見直しの各段階で使用される紙文書の量を 90%削減できました。」
  • 設計の早期検証とやりなおし作業の最小化. 「モデルベース開発を適用することで、欠けてい る要件や矛盾する要件をハードウェアでテストする前に発見でき、必要なやりなおし作業の量を最小に抑えることができました。また Simulink を使用することで、ハードウェアではテストが困難または不可能な入力パターンを使ってシミュレーションを実行できました。」