Bosch eBike Systems、モデルベースデザインにより電動自転車コントローラーを開発

「モデルベースデザインのビジネス上の主なメリットは、開発期間の短縮とコストの削減です。私にとって最大の利点は、モデルからコードを生成できると知ったことです。これにより、コードレベルではなく Simulink のモデルレベルでデバッグできるようになりました。

課題

電動自転車の制御システムをタイトなスケジュールで開発

ソリューション

MATLAB と Simulink でモデルベースデザインを使用して、ドライブ制御およびモーター制御サブシステムを設計し、シミュレーションとテストを行い、プロトタイプおよび量産向けコードを生成

結果

  • 設計を更新し 5 分で再テスト可能
  • 安全規格に準拠するコードを生成
  • 重要な市場の納期に対応
Bosch eBike Systems の駆動装置。

Bosch eBike Systems は、市場に参入してから、わずか 3 年で電動自転車業界の業界リーダーへと成長しました。現在、Bosch eBike Systems の駆動装置は、ヨーロッパの 50 以上の自転車ブランドで使用されています。

Bosch eBike Systems のエンジニアは、当初より MATLAB® や Simulink®モデルベースデザイン (モデルベース開発、MBD)を使用して、駆動装置の制御システムの設計、実装、テストを迅速に行ってきました。

Bosch eBike Systems のリードエンジニアである Daniel Baumgärtner 氏は次のように述べています。「チームは、わずか 9 か月で電動自転車のドライブシステムの設計と顧客サンプルの製造を行う必要がありました。そして、その 5 か月後にはシステムを発表するユーロバイク国際見本市が控えていました。モデルベースデザインのおかげで、この締め切りまでに eBike の組み込みドライブ システム コントローラーを納品することができました。」

課題

自転車メーカーは、毎年、購入者が増える春に新モデルをリリースしています。Bosch やその他のサプライヤーは、リリース前の夏に新しいシステムをメーカーに提供します。この時期に提供しないと、システムの導入が可能になるまで丸 1 年待つことになります。

名誉あるユーロバイク国際見本市で展示するためには、eBike システムの設計、実装、テスト、準備にかけられる時間は 1 年余りしかありませんでした。

全く新しいシステムを構築していたため、コントローラーの設計をシミュレーションした後、組み込みマイクロコントローラーに素早く展開するか、実際の自転車でテストするためのハードウェアをプロトタイピングする方法が必要でした。また、チームは、エンジニアが設計をハードウェアに展開する際の設計の反復を短縮したいと考えていました。設計の反復では、自転車に乗るか、テストベンチを使用し、性能評価や設計の改良を行った後、再展開してさらなるテストを行うことが求められます。また、運転者の安全性を確保するということも考える必要がありました。

ソリューション

Bosch のエンジニアは、モデルベースデザインを使用して eBike 用ドライブシステムを開発しました。この開発は、同社の機能安全規格に基づき行われました。

彼らは、ドライブ システムコントローラーを、ドライブ コントローラーとモーター コントローラーの 2 つのコンポーネントに分割しました。

Simulink でモデル化されたドライブ コントローラーは、運転者のケイデンス、クランク走行時のトルク、自転車の速度などの入力によって、運転者をサポートできるようにモーターから必要なトルクを判断します。

モーター コントローラーは、Simulink や Stateflow® でモデル化されており、ドライブ コントローラーよりも高いクロック周波数で動作します。また、ドライブ コントローラーからのトルクの命令に応じて、モーターに信号を送ります。

Bosch のエンジニアは、Simulink を使用して、コンポーネントごとにプラントモデルを開発しました。ドライブ コントローラーのプラントモデルには、運転者の体質量やペダリング動作だけでなく、地面の傾斜などの環境要因が取り入れられています。モーター コントローラーのプラントモデルは、駆動システムのブラシレス DC モーターの特性を捕捉します。

チームは、制御アルゴリズムを検証するために、Simulink でドライブ コントローラーとモーター コントローラーの閉ループシステムのシミュレーションを個別に行いました。

また、リアルタイムテストで Simulink Coder™ を使用して、ドライブ制御モデルからコードを生成、コンパイルし、ラピッド プロトタイピング ハードウェアに展開しました。続いて、Embedded Coder® を使用してモーター制御モデルからコードを生成し、マイクロ コントローラーに展開しました。

エンジニアは、2 台目のラピッド プロトタイピング装置を使用して、自転車を漕ぐためのアクチュエーターと、パフォーマンス メトリクスを収集するためのセンサーを搭載したテストベンチを構築しました。また、このセットアップ用のテストスイートを開発するために、Simulink でシナリオをモデル化し、Simulink Coder を使用してテストハードウェア用のコードを生成しました。

チームは、MATLAB を使用して、シミュレーションとテストの結果を解析し、トルクおよび速度のプロットを作成して、鍵となる性能特性を可視化しました。

Bosch のエンジニアは、Embedded Coder を使用して、ドライブ制御モデルおよびモーター制御モデルからマイクロ コントローラーの量産向けコードを生成しました。

結果

  • 設計を更新し 5 分で再テスト可能。Baumgärtner 氏は次のように述べています。「eBike に乗ってシステムの動作を確認した後、Simulink で制御アルゴリズムとパラメーターを調整し、プロトタイプのハードウェア用のコードを再生成しました。5 分後には、更新後のコントローラーを使用して試乗できる状態になっていました」

  • 安全規格に準拠するコードを生成。Baumgärtner 氏は次のように述べています。「Simulink Coder および Embedded Coder で生成したコードに欠陥はありませんでした。このコードは、機能安全規格に対応した社内プロセスに従って開発されています。」

  • 重要な市場の納期に対応可能。Baumgärtner 氏は次のように述べています。「年に一度の市場機会を生かすために、ユーロバイク国際見本市における Bosch のドライブシステムの発表に間に合わせる必要がありました。モデルベースデザインのコード生成により設計の反復を短縮していなければ、この目標を達成することはできなかったでしょう。」