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第 3 章

シミュレーションによるモーターの動作の確認


前のセクションで紹介したモデルは、速度、電圧、電流、およびトルクなどの信号を記録します。モデルを実行し、モーターとコントローラーの動作を確認します。上の図では、目標速度を緑で、測定速度を赤で示しています。ご覧のように、速度は、100 rpm 単位で 100 rpm から 500 rpm まで上昇しています。下の図では、コントローラーが電圧を調整し、モーターを所望の速度で回転させていることが分かります。

閉ループ B L D C モーター制御のシミュレーション結果と、測定された速度を目的の値に保つために電圧を調整する様子を示したプロット。

対応する電圧制御による RPM の上昇。

まず気が付くのは、測定された速度信号のリップルです。下の拡大された図は、セクター間で回転子が遷移するタイミングを示しています。セクターと速度の図を一緒に見ると、リップルパターンが各整流サイクルの開始と一致しているため、観測された速度のリップルが整流に何らかの形で関連していることが分かります。

整流中には、相の 1 つが高くなるか低くなり、もう 1 つは現状のままになり、3 番目の相はオープンになります。以下の図に見られるように三相電流が即座に変化すると、観測されたリップルパターンが消滅します。

各整流サイクルの開始時に瞬時に変化する三相電流の図。

しかし実際には、相を駆動する際には、電流は即座に変化せず、上昇に一定の時間が必要です。

整流時の三相電流の上昇により、速度とトルクの測定値にリップルが発生した場合を示す図。

測定された rpm 信号 (赤、上図) でのリップルパターンと、観測された三相電流 (中央の図) およびトルク (下の図)。

上記の中央の図の三相電流を見ると、時間の経過とともにどのように上昇し、それが速度のリップルに繋がるかが分かります。しかし、影響を受ける信号は速度だけではありません。電流とトルクは比例関係にあるため、下の図のトルクのレスポンスにもリップルが見られます。このトルクリップルは、ブラシレス DC モーターの台形波制御の主な難点の 1 つです。台形波制御の欠点のいくつかは、一般的に永久磁石同期モーターに使用される「ベクトル制御」と呼ばれるより高性能な技術で解決できます。

ベクトル制御の詳細については、次を参照してください。MATLAB と Simulink によるベクトル制御