ナイキスト定理

ナイキスト定理とは

ナイキスト定理は、ナイキスト・シャノンのサンプリング定理とも呼ばれ、連続時間信号をサンプリングして、サンプルから情報を失うことなく完全に再現できる条件を定めています。ナイキスト定理によると、連続時間信号は、最大周波数成分の 2 倍よりも高い周波数でサンプリングされていれば、そこから完全に再現できます。これをナイキストレートと呼んでいます。

\[F_s>2f_\text{max}\]

ナイキスト定理は、デジタル信号処理の基礎となる原理です。この定理は、デジタルシステムを通じて現実世界の信号を確実に再現し、処理や解析を可能にするため、音声や映像の記録、通信システム医用画像処理といった技術の基盤となっています。ナイキスト定理がなければ、アナログからデジタルへの移行の際にエイリアシングのようなエラーが発生しやすくなってしまうでしょう。

エイリアシングとは、サンプリング後に異なる信号同士の区別がつかなくなる現象です。信号がナイキストレート未満でサンプリングされると、高周波数成分が低い周波数に「折り返され」、再現されたデジタル信号に誤ったデータが生成されます。これが、歪み、重要な詳細情報の欠落、元の信号にないアーティファクトの出現などにつながります。こうした問題は、音声品質の低下、画像の歪み、工学分野における測定値の誤認などを引き起こす可能性があります。

ナイキスト定理の可視化: 2つのプロットで元の (連続時間) 信号とサンプリング後の (離散時間) 信号のスペクトルを比較することで、周波数の折り返しやエイリアシングの影響を確認できます。

MATLAB で作成された元の信号スペクトルとサンプリング後の信号スペクトルのプロット。ナイキスト サンプリングレートが維持されなかった場合に生じる周波数エイリアシングの影響を可視化しています。

MATLAB によるフィルター設計: ナイキスト定理を用いたエイリアシング対策

エイリアシングは、デジタル信号処理における基本的な課題で、一度発生すると元に戻すことはできません。エイリアシングを未然に防ぐには、ナイキスト定理の理解が不可欠です。

アンチエイリアシング フィルターは、信号をサンプリングしてデジタル処理を行う前に使用するローパスフィルターです。このフィルターの主な目的は、サンプリングレートの半分を超える周波数成分を取り除くことにあります。アンチエイリアシング フィルターで、この高周波成分を減衰または排除することで、サンプリング後に本来とは異なる低い周波数として現れる成分を信号に含めないようにします。

実際のシステムでは、アンチエイリアシング フィルターは一般的にアナログ電子回路として実装されますが、リサンプリング時にはデジタルフィルターとしても利用されます。MATLAB® では、アンチエイリアシング フィルターのようなフィルターの設計が可能です。


製品使用例および使い方


ソフトウェア リファレンス


参考: Signal Processing Toolbox, Image Processing Toolbox, Audio Toolbox, DSP System Toolbox