メインコンテンツ

このページの内容は最新ではありません。最新版の英語を参照するには、ここをクリックします。

ウィルキンソンの表記法

概要

ウィルキンソンの表記法を使用すると、係数の値を指定せずに回帰と反復測定のモデルを記述できます。この特殊な表記法では、モデルに対して追加または除外する予測子変数と応答変数を指定します。また、二乗項、より高い次数の項、交互作用項およびグループ化変数をモデル式に含めることもできます。

ウィルキンソンの表記法を使用してモデルを指定すると、個々の予測子と交互作用項をモデルに対して追加または除外し、新しい入力データを指定することなくモデルの式を変更できます。

基本的な式の仕様

ウィルキンソンの表記法による式は、y ~ terms の形式の string スカラーまたは文字ベクトルとして指定できます。この式で、y は 1 つ以上の応答変数の名前であり、terms にはモデル内の予測子項が含まれます。ウィルキンソンの表記法では、次の項の加算と減算によって terms を指定します。

ウィルキンソンの表記法による項モデルに追加される項
1

切片

x1x1
x1+x2x1, x2
x1/x2x1, x1*x2
x1*x2x1, x2, x1*x2
x1:x2x1*x2
x1^kx1, x1^2, x1^3, …, x1^k

この表の x1x2 は、任意の 2 つの予測子変数の名前です。切片項は既定で式に含まれます。削除するには -1 項を terms に含めます。

次の表に、ウィルキンソンの表記法による式の例を回帰モデルに追加される対応する項と共にいくつか示します。

ウィルキンソンの表記法による式モデルの項
"y ~ x1+x2-1"x1, x2

y=c1x1+c2x2

"y ~ x1:x2:x3"x1*x2*x3, 1

y=c1x1x2x3+c2

"y ~ x1*x2*x3"x1, x2, x3, x1*x2, x1*x3, x2*x3, x1*x2*x3, 1

y=c1x1+c2x2+c3x3+c4x1x2+c5x1x3+c6x2x3+c7x1x2x3+c8

"y ~ x1^3-x1^2"x1^3, 1

y=c1x13+c2

上記の表で、y は応答変数を表し、xi は予測子変数を表します。cj はモデルの係数です。

変量効果の指定

変量効果モデルと混合効果モデルでは、変量効果項で対応するグループ化変数も指定されます。ウィルキンソンの表記法を使用して変量効果項を指定する場合、対応する固定効果項は自動的には追加されません。ウィルキンソンの表記法では、次の項を使用して変量効果を表現できます。

ウィルキンソンの表記法による項説明
(1|g1)グループ化変数 g1 の水準ごとの切片の変量効果。
(x1|g1)g1 の水準ごとの相関があり得るランダムな切片と傾き。この項は (1+x1|g1) と等価です。
(x1+x2|g1)g1 の水準ごとの相関があり得る x1x2 のランダムな切片と傾き。この項は (1+x1+x2|g1) と等価です。
(x1|g1)+(x2|g2)g1 でグループ化された x1 のランダムな切片と傾き、および g2 でグループ化された x2 のランダムな切片と傾き。この項は (1+x1|g1)+(1+x2|g2) と等価です。
(x1|g1:g2)g1g2 の交互作用の水準ごとのランダムな切片。つまり、g1g2 の水準の一意の組み合わせごとに、それぞれ異なるランダムな切片と傾きに対応します。

この表の g1g2 は、任意の 2 つのグループ化変数の名前です。

次の表に、変量効果を含むウィルキンソンの表記法による式の例を対応する固定効果項および変量効果項と共にいくつか示します。

ウィルキンソンの表記法による式固定効果モデルの項変量効果モデルの項
"y ~ 1+(1|g1)"11

yij=c0+b01j+εij

"y ~ x1+(1|g1)"x11

yij=c0+c1x1ij+b01j+εij

"y ~ (x1|g1)+(x2|g2)"1
  • g1 でグループ化された x1

  • g2 でグループ化された x2

yijk=c0+b01j+b11jx1ijk+b02k+b12kx2ijk+εijk

"y ~ x1+(1+x1|g1)"x11g1 でグループ化された x11x1 の変量効果に相関がある可能性があります。

yij=c0+c1x1ij+b01j+b11jx1ij+εij

(1|g1)+(-1+x1|g1)11g1 でグループ化された x1。これらの変量効果に相関はありません。

yij=c0+b01j+b11jx1ij+εij

上記の方程式で、i は観測値のインデックス、j は 1 番目のグループ化変数 g1 の水準、k は 2 番目のグループ化変数 g2 の水準を示します。係数 cmm 番目の固定効果項に対応します。係数 bmnn 番目のグループ化変数の m 番目の変量効果項に対応します。

反復測定の指定

反復測定モデルの場合、次の項を使用して応答変数を指定できます。

モデルの応答項モデルに追加される応答変数
y1-yky1, y2, …, yk
y1, y2, y3y1, y2, y3

この表の yi は、それぞれ任意の応答変数の名前です。

次の表に、反復測定を含むウィルキンソンの表記法による式の例を対応する応答変数と共にいくつか示します。

ウィルキンソンの表記法による式モデルの応答変数方程式
"y1-y5 ~ x1:x2"y1,y2,y3, y4, y5

y1=c1x1x2+c2y2=c3x1x2+c4y3=c5x1x2+c6y4=c7x1x2+c8y5=c9x1x2+c10

"y1,y4,y5 ~ x1^3"y1, y4, y5

y1=c1x1+c2x12+c3x13+c4y4=c5x1+c6x12+c7x13+c8y5=c9x1+c10x12+c11x13+c12

anova オブジェクトの入れ子になった因子の指定

anova オブジェクトの入れ子になった因子は、次の項を使用して指定できます。

ウィルキンソンの表記法による項説明
x2(x1)因子 x2 が因子 x1 の中で入れ子になります。
x2(x1)+x3(x2)因子 x2 が因子 x1 の中で入れ子になり、因子 x3 が因子 x2 の中で入れ子になります。
x3(x1,x2)因子 x3 が因子 x1x2 の中で入れ子になります。

ウィルキンソンの表記法では、項の 2 番目の因子が 1 番目の因子の中で入れ子になる x1:x2(x1) などの交互作用項は指定できません。

次の表に、入れ子になった因子を含むウィルキンソンの表記法による式の例をいくつか示します。

ウィルキンソンの表記法による式モデルの項
"y~x3:x2(x1)"x3*x2x2x1 の中で入れ子になります。

y=x3x2(1)

"y~x2(x1)+x3(x1)"x2x3 の両方の因子が因子 x1 の中で入れ子になります。

y=x2(1)+x3(1)

参照

[1] Wilkinson, G. N., and C. E. Rogers. "Symbolic description of factorial models for analysis of variance." J. Royal Statistics Society 22, pp. 392–399, 1973.