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iqcoef2imbal

補償器係数の、振幅と位相の不均衡への変換

構文

[A,P] = iqcoef2imbal(C)

説明

[A,P] = iqcoef2imbal(C) は、補償器係数 C を同等の振幅および位相の不均衡に変換します。

例

補償器からの I/Q 不均衡の推定

iqcoef2imbal を使用して、所定の複素数係数の振幅と位相の不均衡を推定します。係数は、IQImbalanceCompensator の関数 step からの出力です。

レイズド コサイン送信フィルターを作成して、64-QAM 信号を生成します。

M = 64;
txFilt = comm.RaisedCosineTransmitFilter;

ランダム 64 値シンボルを変調してフィルター処理します。

data = randi([0 M-1],100000,1);
dataMod = qammod(data,M);
txSig = step(txFilt,dataMod);

振幅と位相の不均衡を指定します。

ampImb = 2; % dB 
phImb = 15; % degrees

指定された I/Q 不均衡を適用します。

gainI = 10.^(0.5*ampImb/20);
gainQ = 10.^(-0.5*ampImb/20);
imbI = real(txSig)*gainI*exp(-0.5i*phImb*pi/180);
imbQ = imag(txSig)*gainQ*exp(1i*(pi/2 + 0.5*phImb*pi/180));
rxSig = imbI + imbQ;

受信信号の強度を正規化します。

rxSig = rxSig/std(rxSig);

comm.IQImbalanceCompensator System object™ を使用して、I/Q 不均衡を除去します。複素数係数を出力引数として使用できるように、補償器オブジェクトを設定します。

hIQComp = comm.IQImbalanceCompensator('CoefficientOutputPort',true);
[compSig,coef] = step(hIQComp,rxSig);

補償器係数の最後の値から、不均衡を推定します。

[ampImbEst,phImbEst] = iqcoef2imbal(coef(end));

推定した不均衡値を指定されたものと比較します。よく一致していることがわかります。

[ampImb phImb; ampImbEst phImbEst]

ans = 2×2

    2.0000   15.0000
    2.0178   14.5740

入力引数

C — 補償器係数

複素数値スカラーまたはベクトル

I/Q 不均衡を補正するために使用される係数。複素数値のベクトルとして指定されます。

例: 0.4+0.6i

例: [0.1+0.2i; 0.3+0.5i]

データ型: single | double

出力引数

A — 振幅の不均衡

実数値のベクトル

振幅の不均衡 (dB)。C と同じ次元の実数値ベクトルとして返されます。

P — 位相の不均衡

実数値のベクトル

位相の不均衡 (度)。C と同じ次元の実数値のベクトルとして返されます。

詳細

I/Q 不均衡の補正

関数 iqcoef2imbal は comm.IQImbalanceCompensator System object™ のサポート関数です。

スケールと回転の係数 G、補償器係数 C および受信信号 x を与えると、補正された信号 y は次の形になります。

$$y=G\left[x+C\mathrm{conj}(x)\right].$$

行列の形では次のように書き直すことができます。

$$Y=RX,$$

ここで、X は不均衡な信号 [X_I, X_Q] を表す 2 行 1 列のベクトル、Y は補償器の出力 [Y_I, Y_Q] を表す 2 行 1 列のベクトルです。

行列 R は次のように表されます。

$$R=\left[\begin{array}{cc}1+\mathrm{Re}\left\{C\right\}& \mathrm{Im}\left\{C\right\}\\ \mathrm{Im}\left\{C\right\}& 1-\mathrm{Re}\left\{C\right\}\end{array}\right]$$

補償器が I/Q 不均衡を完全に除去するためには、$$X=KS$$ であるため、R = K^-1 です。ここで、K は 2 行 2 列の行列で、その値は振幅と位相の不均衡により決まり、S は理想の信号です。次の形式の行列 M を定義します。

$$M=\left[\begin{array}{cc}1& -\alpha \\ \alpha & 1\end{array}\right]$$

M と M^-1 はいずれも係数 G に対応するスケール行列および回転行列と考えられます。K = R^-1 であるため、積 M^-1 R K M は単位行列で、M^-1 R は補償器の出力を表し、K M は I/Q 不均衡を表します。係数 α は以下となるように選択されます。

$$KM=L\left[\begin{array}{cc}{I}_{gain}\cos ({\theta }_I)& Q_{gain}\cos ({\theta }_Q)\\ I_{gain}\sin ({\theta }_I)& Q_{gain}\sin ({\theta }_Q)\end{array}\right]$$

ここで、L は定数です。この形から、I_gain、Q_gain、θ_I および θ_Q を取得できます。所定の位相の不均衡 Φ_Imb に対して、同相および直交角度は次のように表されます。

$$\begin{array}{c}{\theta }_I=-\left(\pi /2\right)\left({\Phi }_{Imb}/180\right)\\ {\theta }_Q=\pi /2+\left(\pi /2\right)\left({\Phi }_{Imb}/180\right)\end{array}$$

したがって、 cos(θ_Q) = sin(θ_I) および sin(θ_Q) = cos(θ_I) であるため、次のようになります。

$$L\left[\begin{array}{cc}{I}_{gain}\cos ({\theta }_I)& Q_{gain}\cos ({\theta }_Q)\\ I_{gain}\sin ({\theta }_I)& Q_{gain}\sin ({\theta }_Q)\end{array}\right]=L\left[\begin{array}{cc}{I}_{gain}\cos ({\theta }_I)& Q_{gain}\sin ({\theta }_I)\\ I_{gain}\sin ({\theta }_I)& Q_{gain}\cos ({\theta }_I)\end{array}\right]$$

I/Q 不均衡は次のように表されます。

$$\begin{array}{c}KM=\left[\begin{array}{cc}{K}_{11}+\alpha K_{12}& -\alpha K_{11}+K_{12}\\ K_{21}+\alpha K_{22}& -\alpha K_{21}+K_{22}\end{array}\right]\\ =L\left[\begin{array}{cc}{I}_{gain}\cos ({\theta }_I)& Q_{gain}\sin ({\theta }_I)\\ I_{gain}\sin ({\theta }_I)& Q_{gain}\cos ({\theta }_I)\end{array}\right]\end{array}$$

したがって次のようになります。

$$\left(K_{21}+\alpha K_{22}\right)/\left(K_{11}+\alpha K_{12}\right)=\left(-\alpha K_{11}+K_{12}\right)/\left(-\alpha K_{21}+K_{22}\right)=\sin ({\theta }_I)/\cos ({\theta }_I)$$

この方程式は、変数 α を求める 2 次方程式、すなわち D₁α² + D₂α + D₃ = 0 として記述できます。ここで、

$$\begin{array}{c}{D}_1=-K_{11}{K}_{12}+K_{22}{K}_{21}\\ D_2=K_{12}^2+K_{21}^2-K_{11}^2-K_{22}^2\\ D_3=K_{11}{K}_{12}-K_{21}{K}_{22}\end{array}$$

|C| ≤ 1 の場合、この 2 次方程式は以下の解をもちます。

$$\alpha =\frac{-D_2-\sqrt{D^2-4D_1{D}_3}}{2D_1}$$

それ以外の場合、|C| > 1 であれば、解は次の形をとります。

$$\alpha =\frac{-D_2+\sqrt{D^2-4D_1{D}_3}}{2D_1}$$

最後に、振幅の不均衡 A_Imb と位相の不均衡 Φ_Imb が求められます。

$$\begin{array}{c}{K}^{\prime }=K\left[\begin{array}{cc}1& -\alpha \\ \alpha & 1\end{array}\right]\\ A_{Imb}=20{\log }_{10}\left({K^{\prime }}_{11}/{K^{\prime }}_{22}\right)\\ {\Phi }_{Imb}=-2{\tan }^{-1}\left({K^{\prime }}_{21}/{K^{\prime }}_{11}\right)\left(180/\pi \right)\end{array}$$

メモ

• C が実数で |C| ≤ 1 の場合、位相の不均衡は 0 で振幅の不均衡は 20log₁₀((1–C)/(1+C)) です。

• C が実数で |C| > 1 の場合、位相の不均衡は 180° で振幅の不均衡は 20log₁₀((C+1)/(C−1)) です。

• C が虚数の場合、A_Imb = 0 です。

拡張機能

C/C++ コード生成
MATLAB® Coder™ を使用して C および C++ コードを生成します。

バージョン履歴

R2014b で導入

参考

関数

• iqimbal | iqimbal2coef

オブジェクト

• comm.IQImbalanceCompensator