ウォータールー大学、モデルベースデザインを使用した燃料電池技術の開発により賞を獲得

「Simulink なしでは、同等の詳細レベルで実行可能な仕様を開発したり、モデルベースデザインをこれほど幅広く活用する方法はなかったと思います。」

課題

SUV を再設計して性能を犠牲にせずに燃料効率を最適化

ソリューション

MathWorks 製品とモデルベースデザインを使用して、燃料電池車の推進システムの設計とテストを実施

結果

  • コミュニケーションが容易に
  • 設計期間を大幅に短縮
  • 革新的なテクノロジー
Challenge X でデモンストレーションを行うウォータールー大学。

General Motors および米国エネルギー省主催のコンテストである Challenge X では、北米の 17 の学生チームが Chevrolet Equinox を再設計し、車両性能や安全性を犠牲にしない排出ガスおよび燃料消費の削減に挑戦しています。

ウォータールー大学代替燃料チーム (UWAFT) は、燃料電池を搭載した車両の設計で、3 年間のコンテストの初年度総合 1 位に輝きました。また、UWAFT は、車両設計とサブシステム制御のためのモデルの作成、シミュレーション、および解析における優れた功績が評価され、MathWorks Crossover to Model-Based Design Award も受賞しました。

UWAFT の指導教員を務めた Roydon Fraser 教授は次のように語ります。「パワートレインに燃料電池を採用したチームは、私たちだけでした。MathWorks のモデルベースデザイン用ソフトウェアにより、車両システム設計のプロトタイピングおよびシミュレーションに要する時間を削減できただけでなく、燃料電池技術の実現可能性を確立することができました。」

課題

Challenge X の初年度は、車両設計が主なテーマとなっています。参加チームはモデルベースデザイン (MBD、モデルベース開発) を用いてパワートレインの設計とテストを 10 か月以内に完了し、5 つの重要なレポートを提出する必要があります。

ウォータールー大学のチームは、要件定義から実装までプロジェクト全体にわたってモデルベースデザインを使用できる設計ソフトウェアを探しました。そのソフトウェアによりモデルの再利用を促進することで、制御手法の開発を迅速化する必要があります。また、すぐに使い始められ、チームメンバーが作業内容を簡単に共有できるものでなければなりません。

ソリューション

UWAFT のキャプテン、Matthew Stevens 氏は次のように語ります。「MathWorks のツールによって、さまざまなパワートレインをシミュレーションし、正確なプラントモデルを開発し、制御手法をテストし、設計全体を検証することができました。」

MathWorks は、MATLAB®、Simulink®、Stateflow®、そして Simulink ベースのモデリングプログラムである PSAT のトレーニングを提供しました。Stevens 氏は次のように述べています。「学習曲線が短い製品、あるいは学生がすでにトレーニングを受けている製品を選定することが、チームの成功に不可欠でした。MathWorks のツールは設計プロセスの複数の段階で利用できるため、学生が覚える必要のあるソフトウェア プログラムの数が最小限で済みました。」

UWAFT は、燃料、テクノロジー、パワートレインのサイズを比較するために、400 件以上の PSAT シミュレーションを開発しました。Optimization Toolbox™ と高度な実験計画法により、構成要素のサイズと車両性能の関係を理解し、その後最適なパワートレインを決定することができました。

UWAFT は Simulink を用いて、エンジン、バッテリー、燃料電池、DC/DC コンバーターをもつ燃料電池電力システムのプラントモデルを開発しました。

MATLAB、Simulink、Stateflow、Control System Toolbox™ により、燃料電池から得られる電力量を決定するハイブリッド制御手法 (HCS) を開発することができました。特定のドライブサイクルにおける燃料電池とバッテリーの最適な近似を見つけるために、MATLAB が役立ちました。

DC/DC コンバーターは、燃料電池の電圧を上昇させ、燃料電池からの電力を制御します。Simscape Electrical™ を使用して、PI コントローラーで制御されている回路のモデル化を行いました。チームは、MATLAB でボード線図と極-零点配置図を用いて回路の周波数応答と安定性を調査しました。シミュレーションによって、正しい動作を検証し、回路の効率を判定し、インダクタなどの構成要素の値と定格を計算することができました。

燃料電池はオンとオフが切り替わるため、不連続関数が生成されます。これは、従来の手法では最適化が困難です。そのため、UWAFT は最適な制御ベンチマークを見つけるために、関数が連続である必要のない Global Optimization Toolbox を使用しました。また、Deep Learning Toolbox™ を使用して、燃料電池スタック内の膜の水和をモデル化しました。

チームは Embedded Coder® を用いて車両全体の UWAFT サテライト コントローラーをターゲット化し、組み込みコントローラーを使用したオンターゲット ラピッド プロトタイピングを行いました。

現在はパワートレインの構成要素をテストし、車両の制御手法をさらに洗練させ、高度な燃料電池を車両に組み込み、軽量化の可能性を調査しています。

「コンテスト全体を通して、他の MathWorks 製品もぜひ利用したいと思っています。また、願わくば将来の仕事でも多くのプロジェクトで活用したいと考えています」と Stevens 氏は述べています。

結果

  • コミュニケーションが容易に。MATLAB と Simulink の環境によって、チームメンバーが容易にショートカットやヒントを交換し、作成したモデルや得られた結果を相互にメールで共有してさらなる作業を行うことができるようになり、作業効率が向上しました。

  • 設計期間を大幅に短縮。Stevens 氏は次のように述べています。「特に Simulink があったおかげで、UWAFT はモデルベースデザインを使用して 4 種類の異なる燃料を比較し、堅牢性の高い燃料電池 SUV と制御手法を 10 か月未満で設計できました。トレーニング時間も含めたこのような短期間での設計はまさに偉業です。Simulink がなければ、初年度の課題を終わらせるだけで 3 年間のコンテストの最後までかかってしまったでしょう。」

  • 革新的なテクノロジー。Stevens 氏は次のように語っています。「私たちの最終製品は、未来の航続距離と効率のニーズを達成しつつ現代の車両に比肩する性能を実現する、学生の設計による初の燃料電池車になると信じています。」