オムロンが単独運転防止技術を搭載したパワーコンディショナ制御アルゴリズムを開発

「オムロンでモデルベース デザインを使用する重要な利点は、ハードウェア、ソフトウェア、制御設計の技術者の多人数チームが単一 の環境でプラント モデルと制御システム モデルを使用することで、協力して高度な製品を開発できるという点です。」

課題

停電時に太陽光発電システムが安全に動作できるようにする制御システムを開発する

ソリューション

MATLAB と Simulink によるモデルベース デザインを使用して、電力システムと制御システムのモデル化、シミュレーションの実行、システムの停電への対応の解析を実現

結果

  • 統合テスト時間を半減
  • データ解析が 4 分の 1 の時間で完了
  • 主要なテスト条件のシミュレーションを実行
太陽光発電システムが搭載された家並み。

住宅や企業に設置されている太陽光発電システムは、配電系統によって供給される電力が遮断された場合でも発電し続けます。この状態は単独運転と呼ばれます。単独運転を素早く停止させないと、送電線の修理作業者が、一部の送電線にまだ電力が供給されていると知らずに危険にさらされる可能性があります。従来の単独運転防止技術を利用するとそのようなリスクは軽減されますが、複数のシステムが密集して設置されている場合には相互干渉が発生してメカニズムが機能しなくなる可能性があります。

この問題に対処するために、オムロンは AICOT (単独運転防止技術) を開発しました。この技術を利用すると、何百台もの太陽光発電システムが密集して設置されている場合でも、停電を迅速に検出して単独運転を防ぐことができます。オムロンの技術者は、この特許取得技術の開発に MATLAB®、Simulink®、Simscape Electrical™ を使用しました。

オムロンの技術専門職である馬渕雅夫氏は次のように述べています。「Simscape Electrical を使用することで、停電の開始時に配電網で発生する周波数の変化のモデル化とシミュレーションを行うことができました。MATLAB と Simulink でこのような変化に迅速に対応する制御アルゴリズムを開発し、Simscape Electrical モデルで閉ループ シミュレーションを実行して、このアルゴリズムで高密度領域の太陽光発電システムの安全な動作が確実にサポートされるようにしました。」

課題

政府が定めた標準規格に準拠するために、太陽光発電システムの1台での規格試験では、配電網の障害を 1秒以内に検出することが求められ、複数台のパワーコンディショナの試験では、 5 秒以内に停止しなければなりませんでした。配電網の電圧の変化を監視して単独運転を検出することは困難であり、この手法を使用したソリューションのパフォーマンスは、低下するだけでなく、密集して設置されているパワーコンディショナ間の干渉の影響を受けていました。

オムロンは、電圧の変化ではなく周波数の変化によって停電を検出するコントローラーの設計を目指しました。コントローラーは、再現が困難であるか安全でない条件の下で検証する必要があるため、実際のプラント ハードウェアを使用したコントローラーの開発とテストは実現不可能でした。

オムロンの技術者は、パワーコンディショナや配電網を含む電力システムを正確にモデル化し、停電を検出してパワーコンディショナを停止する制御システムを開発したうえで、制御システムとプラントの閉ループ シミュレーションを同時に実行して設計を検証する必要がありました。

ソリューション

オムロンの技術者は、モデルベース デザインを使用して AICOT 制御システムを開発し、シミュレーションを行いました。

Simscape Electrical の Inductor、Resistor、Capacitor、Switching、Relay の各基本コンポーネントを使用してプラントをモデル化し、Simscape Electrical の Electrical Source ブロックを使用して電力系統をモデル化しました。

また、Simulink と Control System Toolbox™ で障害検出アルゴリズムを含むコントローラーをモデル化し、Stateflow® を使用して CPU の条件分岐および設定をモデル化しました。

このチームでは Simulink を使用して、制御モデルとプラント モデルのシミュレーションを実行しました。それらのモデルで電気的負荷と発電のバランスを調整し、停電発生時の配電網の周波数の変化を解析しました。

このチームでは、実際の装置の測定電圧および電流から有効電力と無効電力を計算する MATLAB スクリプトを開発しました。このスクリプトを使用してコントローラーの出力を検証しました。太陽光発電システムを評価する企業にこのスクリプトを提供して、技術者が障害検出時間をテスト、分析できるようにしました。

完成した AICOT システムでは、単独運転状態を 0.2 秒未満で検出できます。

AICOT 搭載のパワーコンディショナは現在既に量産されています。群馬県太田市のある地区には 554 台が設置されており、合計 2,100 kW を超える発電量を実現しています。この技術は、日本の標準規格に採用され、太陽光発電システムの大量導入が可能となりました。このおかげで、日本の太陽光発電の普及にも貢献しています。

結果

  • 統合テスト時間を半減. 馬渕氏は次のように述べています。従来の開発ワークフローと比べて、モデルベース デザインではずっと初期の段階で設計を評価できるようになりました。開発の早期段階で Simulink によってシミュレーションを実行できたため、最終統合テストの所要時間を 50% 以上短縮できました。」

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  • データ解析が 4 分の 1 の時間で完了. 馬渕氏は次のように述べています。「これまでは、電圧と電流の波形から有効電力と無効電力を計算するのに 4 ~ 5 日かかることがありました。MATLAB を使用してこのタスクを自動化したため、今では結果が 1 日で得られるようになりました。」

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  • 主要なテスト条件のシミュレーションを実行. 馬渕氏は次のように述べています。「実際の電力システムでは設定が難しい条件をテストし、特定したエラーを確実に再現する必要がありました。Simulink と Simscape Electrical で制御モデルとプラント モデルのシミュレーションを実行することで、これらの問題を解決できました。」