Lockheed Martin、離散イベントモデルを構築して F-35 機体の性能を予測

「Simulink と SimEvents を使用してモデルを構築し、コンピューター クラスターで離散イベント シミュレーションを実行したことにより、開発と実行にかかる労力を最小限に抑えつつ、F-35 の機体性能を最大限に高めるための多くの機会を迅速に特定することができました。」

課題

F-35 の機体性能の予測による、ライフサイクルコストの最小化とミッション即応性の最大化

ソリューション

Simulink と SimEvents を使用した機体の離散イベントモデルの構築、MATLAB Parallel Server を使用した数千ものシミュレーションの高速化、Deep Learning Toolbox を使用した結果の補間

結果

  • シミュレーションのセットアップ時間を数か月から数時間に短縮
  • 開発作業を削減
  • シミュレーション時間を数か月短縮
フライトの準備が整った F-35。

Lockheed Martin F-35 Lightning II 持続プログラムは、ライフサイクルコストの削減、ダウンタイムの最小化による F-35 機体のミッション即応性の向上、パイロットのトレーニングの支援、および不要な備蓄の回避と部品在庫の確保を実現しています。このプログラムによるこれらの目標の達成は、機体整備のための地上待機時間の推定を含む機体性能の正確な予測が基になっています。

Lockheed Martin のエンジニアは、Simulink®、SimEvents®、Deep Learning Toolbox™、MATLAB Parallel Server™ を使用して、機体性能をモデル化し、256 個のワーカーの計算クラスターでの数万回に及ぶシミュレーションに基づいて予測を行いました。

Lockheed Martin のプロジェクト エンジニアである Justin Beales 氏は、次のように述べています。「Simulink と SimEvents を使用して、F-35 のプログラム全体からのデータを組み込み、数千の部品からなる数千の機体の毎日の運用を、数百の場所で長年にわたってシミュレーションするモデルを作成しました。数千回のモンテカルロ シミュレーションを私たちのクラスターで高速化し、次に Deep Learning Toolbox を使用して結果を補間することで、処理時間を年単位で短縮できます。」

課題

F-35 の機体性能のシミュレーションは、機体やそれを支えるグローバル ロジスティクス システムの複雑性が原因となり、極めて難しいものです。Lockheed Martin は当初、既存のツールを使用した予測の生成を目指していましたが、問題がさらに複雑化することがわかりました。

Lockheed Martin のチームは、詳細かつ簡単に設定されたモデルを開発し、数千通りのパラメーターの組み合わせおよびシナリオの高速シミュレーションに使用することを考えていました。また、実験計画法、機械学習、その他の統計的手法や確率的手法など、高度なテクニックを適用して結果を生成および解析する必要がありました。

ソリューション

Lockheed Martin のエンジニアは、F-35 の機体の高度な Simulink モデルを開発し、SimEvents の離散イベント シミュレーション エンジンを使用してモデルをシミュレーションしました。

また、SimEvents を使用してモデルのコアを構築してエンティティを作成し、MATLAB® コードを含む Attribute Function ブロックを使用してシステムロジックを実装しました。モデルには、部品と機体の性能データや、機体の変更点に関するデータ、メンテナンス上の異常イベント、部品の在庫状況、機体の動作が組み込まれました。

エンジニアは、テストケースおよび国防総省の検証、妥当性確認、認定ガイドラインを使用してモデルを検証しました。

ランダムイベントと実験計画法に基づいたパラメーター変動の両方を使用して、数千回の試験でモンテカルロ シミュレーションを実施しました。結果を迅速に生成するために、チームは Parallel Computing Toolbox™ と MATLAB Parallel Server を使用して、256 個のワーカークラスターで複数のシミュレーションを並列実行しました。

また、Deep Learning Toolbox を使用して、シミュレーション結果に対しニューラル ネットワークの学習を行い、シミュレーション データを補間できるようにしました。

シミュレーションでは、発生したすべてのイベントは Simulink によって記録および保存されました。このデータの後処理を行うために、チームは MATLAB スクリプトを開発し、パフォーマンス メトリクスの計算、アノテーション付き MATLAB プロットの生成、および他のアナリストが使用する Microsoft® Excel ファイルの作成を行いました。

Lockheed Martin はこのモデルを使用して、F-35 持続プログラムをサポートするための機体性能予測を既に行っています。チームは現在、他のプログラムでもこのモデルを使用することを検討しています。

結果

  • シミュレーションのセットアップ時間を数か月から数時間に短縮。Beales 氏は次のように述べています。「旧システムへのデータ入力の設定には数か月を要していました。対照的に、新しいデータセットを含む Simulink と SimEvents のモデルは、設定と実行を 1 日で済ませることができました。」

  • 開発作業を削減。Beales 氏は次のように述べています。「Simulink と SimEvents によって、開発作業を最小化しながら、機体性能の予測機能を飛躍的に高めることができました。」

  • シミュレーション時間を数か月短縮。Beales 氏は次のように述べています。「12 コアのデスクトップ コンピューターではなく、クラスターでシミュレーションを並列実行したことで、20 倍以上早く完了しました。加えて、Deep Learning Toolbox を使用して行った補間によって、実行すべきシミュレーション回数が大幅に減り、CPU 時間をさらに短縮できました。」