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第 3 章

セルラー接続

セルラー接続によって、コミュニケーション方法は一変しました。最新世代のセルラー接続は 5G NR (5G New Radio) と呼ばれ、これは数十億台もの接続デバイスのデジタル エクスペリエンスを統一するものです。この5G NRは、現在の 4G LTE システムよりもはるかに高速かつ低遅延で、信頼性の高いセルラー接続を実現できます。5G の対応レンジは、モバイル ブロードバンド サービスから次世代の自動運転車や接続された IoT デバイスまで多岐にわたり、5G NR の次の 3 つのユースケースで定義されています。

  • eMBB (enhanced mobile broadband: 高速大容量)
  • URLLC (ultra-reliable low-latency communications: 超高信頼低遅延)
  • mMTC (massive machine type communications: 多数同時接続)

5G では、それ以前とは大幅に異なるアーキテクチャ、無線アクセス技術、物理層アルゴリズムが必要です。これらの新しい物理層対応技術のうち、主要なものは次のとおりです。

  • 信号帯域幅の拡張とレイテンシ短縮のための、スロット長の短縮につながるサブキャリア間隔の拡大など、柔軟性の高い複数のニューメロロジー
  • データ用の LDPC や制御情報用の極座標コードなど、新しいチャネル コーディング アルゴリズムの使用
  • サブ 7 GHz とミリ波周波数で使用するチャネルモデル
  • スペクトル効率を高める Massive MIMO の使用

5G セルラー接続システムの設計には、いくつかの物理層 (PHY) の課題とユースケースがあります。

セクション

波形生成とテスト

設計検証用のゴールデン リファレンスを使用するには、規格に完全準拠した波形を簡単に利用できることが不可欠です。システムが規格に準拠していることを確認するには、NR-TM (New Radio test model) や FRC (fixed-reference channels) など、3GPP 仕様で指定された規定の波形を生成する必要があります。また、完全にカスタマイズされたアップリンク波形とダウンリンク波形の生成が必要になる場合もあります。5G 信号を無線で送信した後には、波形を解析して、品質指標を取得する必要があります。5G Toolbox™ の 5G Waveform Generator アプリを使用して、簡単かつ対話的に波形を生成およびテストできます。

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エンドツーエンドのリンクレベルのシミュレーション

システム設計者は、5G システムの性能を予測およびカスタマイズし、設計が標準仕様を満たしているかどうかを確認する必要があります。送信機、チャネルモデル、RF 損失、受信機を組み込んだエンドツーエンドのシミュレーションを設定し、スループットなどの性能指標を解析する必要があります。5G Toolbox には 5G リンクレベルの実装に対応した MATLAB のオープンソースコードが用意されているため、こうしたパラメーターすべてについて設計空間の探索がより簡単かつ柔軟になります。

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システムレベル シミュレーション

5G システムの設計者と運用者は、5G NR ネットワーク内の複数のユーザー間で共有される時間-周波数リソースを最適化する必要があります。各種のデータ トラフィック モデル、MAC スケジューリング計画、PHY アルゴリズムを使用してネットワーク性能を評価する必要があります。また、セル間干渉の影響を解析し、全体的なスループット、スケジューリングの公平性、スペクトル効率、その他の基準を測定する必要があります

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ビームマネージメント

5G NR システムは、ミリ波(24.25 GHz~52.6 GHz) を使用できます。このような周波数では、送信信号の経路損失と侵入損失が大きくなります。ビームフォーミングは、ゲインを改善し、より高い周波数での信号の受信品質を高める上で不可欠です。ビームマネージメントは、最適なビームペア (送信ビームと受信ビーム) を確立および維持して良好な接続を実現する重要な手順です。たとえば、基地局は、散乱環境で異なる方向に複数のチャネル状態情報基準信号 (CSI-RS) リソースを送信し、基準信号受信電力 (RSRP) の測定値に基づいて基地局をモバイルユニットに接続する最適な送信ビームを選択できます。

ビーム マネージメント、セルラー接続