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第 1 章

はじめに

無線技術の急速な発展により、世界中のあらゆる場所でユビキタス接続が可能になっています。この ebook では、新しい無線接続のトレンドや設計上の課題、無線エンジニアが MATLAB® および Simulink® を使用して、最新の無線ネットワークを設計、モデル化、シミュレーション、テストする方法について解説します。

無線通信により、高速インターネット接続が可能になります。人々が携帯電話を使って互いにつながったり、自動車が車両通信 (V2X) を使って交通量の多い交差点を通過したり、IoT (Internet of Things) デバイスがスマートファクトリーで通信したりするなど、どのような場合でも接続には無線システムと無線ネットワークが使用されています。

このようなユビキタス接続は、広域ネットワーク (衛星リンク)、セルラー広域ネットワーク (4G、5G、およびそれ以降)、ローカルエリアネットワーク (Wi-Fi)、パーソナルエリアネットワーク (Bluetooth および ZigBee など) を含む、各種の無線技術によって実現されています。

技術の種類を問わず、無線通信エンジニアは、無線接続システムを設計する際に次のような共通の課題に直面します。

  • システムとデバイスの相互運用性に関する標準プロトコルへの準拠の確保
  • アルゴリズム、アンテナ、アレイ、RF トランシーバーの設計の選択肢を統合することによる、マルチドメイン システムのパラメーターの最適化
  • 無線テストの自動化、現実的なチャネルと損失のモデルを使用したハードウェア プロトタイプでの設計の検証

これらの課題に取り組むためには、物理デバイスの構築よりもかなり早い段階で、大規模なモデル化とシミュレーションを使用した設計空間の探索が必要になります。

セクション

ユビキタス接続

MATLAB および無線通信のツールボックスを使用すると、無線接続システムを迅速に設計、モデル化、シミュレーション、テスト、検証、プロトタイピングできます。規格に準拠した波形を生成および分析し、リンクレベルのパフォーマンスを測定するとともに、ゴールデン リファレンス モデルを作成して規格適合性を検証できます。ツールボックスの関数をカスタマイズして独自の技術の実装を加速させ、最新の衛星、5G、LTE、WLAN、Bluetooth 技術を検討することもできます。

以降の章では、こうしたネットワークの設計、モデル化、解析、テストを可能にする関連規格、課題、リソースとともに、各種のユビキタス接続技術について説明していきます。