ホワイトペーパー

はじめに

今日のスタートアップ企業は、技術的なアイデアを実際の製品に具現化する際に多くの課題に直面しています。

  • 高速化: 開発サイクルを高速化するにはどうすれば良いか。
  • コスト削減: コストを削減して生産性を高めるにはどうすれば良いか。
  • 事業拡大: 製品の構想から市場投入までを実現するにはどうすれば良いか。

その答えは、モデルベースデザイン (MBD、モデルベース開発) です。モデルベースデザインは、エンジニアリング手法の一種で、製品のアイデアからプロトタイプ、およびプロトタイプから量産までの実現を支援することで、スタートアップ企業を成功に導きます。

MathWorks の協力がなければ、2008 Tesla® Roadster を製造することはできませんでした。今回の新しい自動車スタートアップ企業のリソースだけでは実現できなかったはずです。次世代の Tesla 車両の開発に向けて、十分な情報に基づく設計上の意思決定を行えるよう、今後も MATLAB® および Simulink® を活用していきます。」

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モデルベースデザインとは

モデルベースデザインは、開発プロセス全体におけるモデルの体系的な使用を中心に据えています。

モデルは、次の機能を担っています。

  • ブロック線図およびその他グラフィカル要素またはテキスト要素に基づいた設計の視覚的表現。モデルの使用により、データフローでもシステム アーキテクチャでも、設計意図に対する理解が促進されます。
  • 設計の実行可能な仕様。モデルの使用により、複数のドメインにわたるシステム動作のシミュレーションが可能になります。
モニター上の風力タービンモデルを見る人物。

エンジニアは、モデルを使用して、設計トレードオフの評価、継続的な検証と妥当性確認、およびハードウェア実装用のコードの自動生成を行うことができます。

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モデルベースデザインがスタートアップ企業に適している理由

スタートアップ企業では、製品のアイデアが生まれると、そのアイデアが練り上げられることで一連の要件で定義される設計概念へと変化します。そしてこれは、詳細な技術仕様へと急速に発展します。これらの仕様を満たすことのできるプロトタイプの作成は、スタートアップ企業にとって重要です。プロトタイプは、初期段階で製品価値を実証し、社内チームの自信を高め、早期に成功の確証を求める外部投資家から資金を調達する上で役立ちます。モデルベースデザインを使用することで、スタートアップ企業はアイデアからプロトタイプへと速やかに移行できます。

アイデアからプロトタイプへ

すばやくスピードに乗る

アイデアを形にしようとしても、白紙の状態を前にして考えあぐねることもあるでしょう。しかし、モデルベースデザインを使用すれば、ゼロから始める必要はありません。Simulink およびそのアドオン製品には、初めての方にも使いやすい参照例や事前構築済みのブロックが用意されています。

参照例は、新しい設計の開始点として役立ちます。これらの例は、インスリンポンプ、風力発電所、荷物配送ドローンなどの特定の用途や、ほぼすべての産業分野にわたるその他の用途向けに作成されたフルシステムモデルです。

詳細なアルゴリズムを含めるよう設計を変更し、すべての機能を構築する際に、事前構築済みのブロックを直接設計に追加できます。これらは、信号処理アルゴリズムや制御手法など、厳密にテストされ、完全にドキュメント化されたアルゴリズムのモジュールをカプセル化したものです。設計ニーズに合わせて、これらのアルゴリズムの追加、組み合わせ、または変更を行うことができます。

そのままで使用できる、完全にパラメーター化可能なブロックは、グリーン水素製造システムを動かす電解槽や垂直離着陸機を動かすローターなどの、システムのモデリング コンポーネントに適用することもできます。

自動運転のスタートアップ企業である Voyage Auto は、開発プロセスの開始にあたり、参照例を使用しました。

「まず、MATLAB のアダプティブ クルーズ コントロール (ACC) システムの例から始めることにしました。この例には、MPC を使用して設定速度や先行車両からの設定距離を維持できる ACC システムを実装する Simulink モデルが含まれています。3 日後には、ACC 用に生成したコードを車両で実行していました。」

開発コストの削減およびプロトタイプ構築時間の短縮

多くのアイデアを思い描きながら設計プロセスを開始すると、可能な設計オプションを検討するにつれ幅広い設計空間や膨大な不確かさと向き合うことになります。しかし、多くの場合、スタートアップ企業ならではの時間、予算、人材、およびその他のリソースの制約にも直面することになります。設計の選択肢を形式化して絞り込む際、物理プロトタイプですべてのオプションをテストするのは現実的ではありません。

モデルベースデザインを使用すると、モデルを構築して仮想プロトタイプとしてシミュレーションできます。デジタル設計環境では、大規模な設計検討を作成して、設計オプションを評価し、設計性能を最適化できます。これにより、物理プロトタイプを構築する必要性を大幅に削減できると同時に、予算超過のリスクも軽減できます。

電気スクーターのスタートアップ企業である Ather Energy は、モデル化とシミュレーションを使用して開発を加速させました。

「有望なアイデアは沢山ありましたが、小規模なスタートアップ企業のため、それぞれのテストを行うプロトタイプ構築のための時間、費用、および人員が不足していました。モデルベースデザインにより、シミュレーションを通じて最良のアイデアを特定および検証し、より短期間でフル機能のスクーターの生産を実現できました。物理プロトタイプの構築とテストには通常 2 か月ほどかかりますが、Simscape モデルを使用することで 2 週間で終えることができました」

波力エネルギー技術のスタートアップ企業である Carnegie Clean Energy は、設計上の問題の修正に仮想プロトタイピングおよびシミュレーションを使用して波力発電ファームを完成させました。

「スタートアップ企業としては、システムを構築し、テストや変更作業を行い、再度テストを実施するような開発サイクルを回す余裕はありません。システム全体のスケールモデルを構築するには、コストと時間がかかりすぎます。まずは適切な設計を行うために、当社では、エンジニアリングの労力を仮想プロトタイピングとシミュレーションに充てることにしました。ハードウェア プロトタイプでテストするよりも、シミュレーションを行って問題を検出し、修正する方が簡単で、費用も抑えることができます。」

コードではなく設計に注力

設計の選択肢を確認して仮想プロトタイプを開発したら、設計を物理プロトタイプ上で実行するコードとして実装するにはどのようにすれば良いでしょうか。アルゴリズムを手作業でコーディングして設計をコードに変換することもできますが、この手法は手順が多く、プロセスにエラーや矛盾が生じる場合があります。設計に対する変更は、手作業でコードに実装する必要があり、設計とコード間のトレーサビリティを確立することは困難です。

モデルベースデザインを使用すると、モデルからコードを自動生成できます。設計から機能的プロトタイプで実行するコードへの移行を、数か月ではなく数日で行えます。生成されたコードは効率的で高品質かつ可読性に優れており、設計で完全に追跡可能なため、新しく生成されたコードには常に最新の設計が反映されています。この方法によりソフトウェア開発の高位設計作業に注力できるため、コード生成の活用はスタートアップ企業にとって強力なアプローチとなります。

電動自転車のスタートアップ企業である Ellio は、制御コードを自動生成して組み込みハードウェアをターゲット化することで、プロトタイプ構築を高速化しました。

「Simulink でコントローラーをモデル化した後、Simulink Coder™ を使用して Raspberry Pi® 用のコードを生成することで、実際に動くプロトタイプをたった 1 日で作成しました。チームにコーディングのエキスパートがいなかったこともあり、プロトタイプの自転車上で手作業によるコーディングやソフトウェアのデバッグを行うには、少なくとも 2 週間はかかると見込んでいました。」

手術用ロボティクスのスタートアップ企業である Preceyes は、自動コード生成を使用してソフトウェアを実装することにより、世界初となる眼科手術用ロボットを開発しました。

「MATLAB と Simulink を使用したため、コントローラーのローレベル アーキテクチャを自分でプログラムする必要はありませんでした。最初のリリースを 1 人で開発したソフトウェア エンジニアにとって、これは大きな利点でした。MATLAB と Simulink がなければ、エンジニアが 1 人でこの作業をできるとは思えません。」

医用技術のスタートアップ企業である Bigfoot Biomedical は、シミュレーションと自動コード生成を使用してインスリン投与システムを開発しました。

「モデルベースデザインを使用することで、複雑さに対応する必要がなくなり、大規模なプログラムの構築やデバッグではなく、システムやアルゴリズムのモデル化とシミュレーションに時間をかけることができました。」

プロトタイプから量産へ

スタートアップ企業にとって、機能的プロトタイプの開発は、投資家、サプライヤー、および顧客に対して製品価値を説明する上で役立ちます。しかし、スタートアップ企業が大規模な商業的成功を収めるには、製品を概念実証の状態 (機能、品質、および性能は限定される場合が多い) から量産可能な状態に移行させる必要があります。モデルベースデザインは、スタートアップ企業のプロトタイプから量産への迅速な移行を支援します。

一度のモデル化で、どこにでも展開可能

プロトタイプから量産に移行すると、より強力なハードウェアを活用して性能を高めたり、よりコスト効率が良く一般的に利用可能なハードウェアを使用して量産コストを下げたりするために、ハードウェアの変更が必要になる場合が多々あります。ハードウェア要件の変更は、スタートアップ企業にとって課題です。異なるハードウェア プラットフォームとソフトウェアの統合には、社内にハードウェアの専門知識が必要なだけでなく、ソフトウェアの変更も求められます。

モデルベースデザインを使用すると、マイクロコントローラー用の C/C++ コード、FPGA/ASIC 用の Verilog/VHDL コード、PLC 用のストラクチャード テキスト、または GPU 用の CUDA® コードなど、モデルから移植可能なコードを生成して異なるハードウェアをターゲットにできるため、ハードウェアからソフトウェア開発を切り離すことができます。MathWorks は、主要なハードウェアベンダーと提携して、これら複数のプラットフォームにわたりハードウェア統合をサポートしています。

Simulink を、自動コード生成と CPU、GPU、PLC、FPGA デバイスなどの異なるハードウェアに接続した図。

Simulink を使用して、移植可能な量産コードを自動的に生成します。

コード生成のサポートおよびハードウェア統合のサポートにより、一度設計をモデル化すれば、すべてのサポート対象のハードウェア ターゲットに展開できるようになります。これにより、ハードウェアの専門知識は必要なくなるため、ハードウェアの仕様の理解や、新製品に適応させるための既存アルゴリズムの再コーディングではなく、設計作業に注力することができます。

エネルギー貯蔵システムのスタートアップ企業である Stem は、モデルベースデザインを使用して、マイクロコントローラー ハードウェアから制御ソフトウェア開発を切り離しました。

「モデルベースデザインにより、ハードウェアを用意する前にコントローラー ソフトウェアを開発できました。最初のボードが納入されたときには、制御アルゴリズムはすでに完成しており、5 日後には Embedded Coder で生成したコードを使用して電力を供給していました。」

モーション シミュレーターのスタートアップ企業である Dynisma は、各種のマイクロコントローラーやハードウェアシステムをターゲットにできるよう設計を拡張しました。

「現場には 3 種類の製品があるにもかかわらず、同じソフトウェアを使用して、3 種類のコントローラーと 3 種類のシステムに展開できます。」

欠陥を最小限に抑えて品質を確保

プロトタイピングから量産段階へ移行する際に重要な点は、欠陥を最小限に抑えて製品の品質を確保することです。しかし、スタートアップ企業の場合、エラーの発見が開発プロセスの後期になりがちです。これらのエラーには大幅な手戻りが必要になり、修正に時間とコストを要します。

モデルベースデザインを使用すると、要件や早期の設計検証からシステム統合テストに至るまで、開発プロセスの主要な段階ごとに解析、確認、およびテストを実行するツールを利用することにより、設計の検証と妥当性確認を継続的に実行できます。

シミュレーションを使用して、時間とリソースを物理テストから仮想テストに移行させることで、早期に検証作業を行うことができます。この「シフトレフト」により、装置や物理プロトタイプに関連するテスト費用を削減でき、現実世界の条件下で製品をテストする前に、すべてのカテゴリのエラーを排除できます。また、仮想テストでは、起こりうる事象に関する質問に回答したり、実際の運用環境では再現が困難あるいは不可能なテストシナリオやエッジケースのシミュレーションを行うこともできます。

完全な V&V ワークフローのサポート
要件のトレーサビリティ 意図しない設計の動作を防止
要件のモデル化 要件の形式化および妥当性確認
規格への準拠 設計が規格のガイドラインを満たすことを確認
形式的検証 設計の堅牢性が高く要件を満たしていることを証明
コンポーネントおよびシステムテスト シミュレーションベースのテストで設計が要件を満たしていることを確認
back-to-back テスト SIL および PIL の等価性確認とテストを実行
カバレッジ解析 設計が MIL、SIL、PIL で完全にテストされたことを検証
テストの自動生成 カバレッジ解析や back-to-back テストなどのためにテストを生成
静的コード解析 コードが規格を満たしており、ランタイムエラーが存在しないことをチェック
ハードウェアインザループ (HIL) テスト 物理システムをリアルタイム ターゲット コンピューターでエミュレーションすることにより制御をテスト

電動オートバイのスタートアップ企業である BPG Motors は、シミュレーションベースのテストを使用して製品上の問題を特定し、製品のプロトタイプから試作へ移行しました。

「Uno をプロトタイプから試作へ移行する際に、Simulink の活用範囲を広げ、実際のハードウェアで実験するには、コストや安全面に問題がある場合や、時間がかかる場合のある Uno の諸要素をモデル化し、シミュレーションしています。」

「また、Simulink シミュレーションは、アナログ デジタル コンバーター (ADC) の欠陥の特定にも役立ちました。Simulink の基本的な ADC ブロックを使用して、性能に影響を及ぼす制御アルゴリズムのデッドスポットを特定できる、単純なモデルを構築してシミュレーションしました。」

無人航空システムのスタートアップ企業である Airnamics は、初飛行の前にシステムの仮想テストを行うことにより、ソフトウェアのバグのほとんどを除去しました。

「飛行制御システムの性能のうち、信頼性と安全性は最も重要だと考えています。安易な方法をとると事故につながるため、それはできません。」

「モデルベースデザインにより、システムのすべての部分に対して地上で仮想テストを行うことができます。以前はバグの特定に数週間かかり、その解決のために飛行テストを繰り返し行う必要がありましたが、シミュレーションによりバグ修正を数時間で完了できました。初飛行の前に、制御ソフトウェアのバグの 95% 以上を発見できました。その結果、安全性も信頼性も高く、高品質の製品を完成させることができました。」

認証の取得

航空宇宙自動車医療機器、および再生可能エネルギーなどの産業分野におけるセーフティクリティカルなアプリケーションを開発するスタートアップ企業では、システムのソフトウェアが厳密なテストに合格するだけでなく、国際規格組織や業界ワーキンググループが定める機能安全規格に準拠する必要もあります。スタートアップ企業にとって、認証ワークフローに使用する適切なツールや、従うべき適切なプロセスの選定は、簡単なことではありません。

モデルベースデザインには、モデルやモデルから生成したコードが業界標準に準拠しているかどうかを確認するツールが用意されています。

さらに、IEC Certification Kit は、ツール適格性確認アーティファクト、認証書、テストスイートを提供し、トレーサビリティ マトリクスを生成します。このキットを使用すると、Embedded Coder®、HDL Coder™、および Polyspace® 製品ファミリなどのコード生成および検証ツールの適格性の確認や、ISO® 26262、IEC 61508、EN 50128、ISO 25119、および IEC 62304 や EN 50657 などの関連する規格に対する組み込みシステムの認証を合理化できます。キットには、認証機関 TÜV SÜD による、サポート対象の製品および規格についての認証書と評価レポートが含まれています。

前述したエネルギー貯蔵システムのスタートアップ企業である Stem も、電力システムのシミュレーションを使用して、製品テストに合格し、IEEE® 1547 認証を短期間で取得しています。

「モデルベースデザインのおかげで、認証取得までの期間を通常よりも 25% 短縮できました。PowerStore は電力網と相互作用するため、特に分散型リソースと電力システムの相互接続に対する IEEE 1547 認証を受ける必要があります。初期設計では不合格となった認証テストをシミュレーションし、コントローラーモデルに変更を加え、コードを再生成し、翌日にはテストに合格しました。」

設計を次世代製品で再利用

初回発売時の最初の成功を基に後続の製品を開発する場合、モデルベースデザインを使用して、新しい設計においても以前の反復作業で得た設計モデルを再利用できるようにすることで、次世代製品の開発を高速化できます。また、ニーズの異なる顧客を獲得するために製品の規模を拡大する場合も、簡単に設計バリアントを作成および管理できます。

パワー エレクトロニクス機器の会社 VONSCH は、設計モデルを再利用することにより、小規模なエンジニアリング チームにもかかわらず新製品を短期間で発売しました。

「FOTO CHARGER 製品では、MPPT アルゴリズムや数多くの Simulink モデルを FOTO CONTROL から再利用しました。MATLAB と Simulink により、研究開発のスピードを 3 倍高速化できただけでなく、必要に応じて他のハードウェア プラットフォームに切り替えられる柔軟性も得られました。」

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スタートアップ企業がモデルベースデザインを採用する方法

段階的導入

モデルベースデザインを使用することで見込まれる利益があるとしても、スタートアップ企業は多くの場合、新しい開発プロセスを導入するリスクを考慮します。このことは、新しいプロセスを試験的に導入したり、新しいツールを習得したりする専任スタッフがいない小規模なスタートアップ企業では特に顕著です。

成功したスタートアップ企業は、モデルベースデザインを段階的に導入することで、このリスクを軽減してきました。通常は単一のプロジェクトから開始し、現行の手法を使用する場合と比較して、モデルベースデザインを使用することで達成可能な早い段階での成果を特定します。モデルベースデザインの導入を成功させるためには、プロジェクトの進行を遅らせることなく、以下のように段階的に進めていきます。

  1. プロジェクトの小さい部分で実験する。
  2. 最初に成功したモデル化に基づき構築する。
  3. モデルを使用して特定の設計上の問題を解決する。
  4. 基本に忠実に取り組む。
  5. MathWorks のエキスパートの経験を活用する。

小規模チームによるモデルベースデザイン採用の経験や手法については、ホワイトペーパー「エンジニアリング チームがモデルベースデザインを採用する方法」をご覧ください。

Océ のエンジニアリング チームは 3 人体制ですが、MathWorks トレーニングのサポートを利用して 1 ~ 2 週間でモデルベースデザインを導入しました。

「Simulink Coder や Stateflow® を使用した経験はありませんでした。しかし、MathWorks トレーニングコースを 1 ~ 2 週間受講したことで、非常に複雑なシナリオも問題なく記述できるようになりました。」

投資利益率 (ROI) の測定

モデルベースデザインを導入すると、システム エンジニアリング フェーズ、開発フェーズ、およびテストフェーズにおいて大幅なコスト削減につながります。モデルベースデザインを採用した組織では、従来の手法と比較して、20 ~ 60% のコスト削減を実現しています。

従来の開発手法に対してモデルベースデザインの導入により想定されるコスト削減効果を定量化する方法については、ホワイトペーパー「モデルベースデザインの投資利益率 (ROI) の測定」をご覧ください。

電気自動車のスタートアップ企業である Vanderhall Motor Works は、モデルベースデザインを導入し、エンジニアの人数が限られている状況にもかかわらず、1 年足らずで全電動ユーティリティ タスク ビークル (UTV) を開発しました。

「通常であれば、車両制御システムのソフトウェア開発は、大規模なコーディングチームが長い年月をかけて行います。電気自動車の市場は変化が激しいため、従来の方法で開発していたら、まだ製品構想を夢見ている段階で、競合他社に先を越されていたでしょう。」

MathWorks スタートアップ プログラム

MathWorks スタートアップ プログラムでは、条件を満たしたスタートアップ企業に対し、スタートアップ優待価格、アプリケーション エンジニアによるサポートとテクニカルサポート、現地語によるトレーニング オプション、トレーニング クレジット 50% 割引のほか、テクノロジーや製品を紹介する共同マーケティングの機会が提供されます。MathWorks が提供する広範なサポートおよびリソースは、社内に大企業と同程度の専門知識やリソースを持たないスタートアップ企業にとって特に有益です。

自律型輸送用ヘリコプターのスタートアップ企業である RangeAero は、MathWorks アプリケーション エンジニアリング チームとの共同作業によりモデルベースデザイン ツールを導入し、複雑な問題を解決しました。

「RangeAero のテクニカルチームは、MathWorks のアプリケーション エンジニアリング チームとの共同作業により、ツールの使用方法を学び、複雑なアプリケーションに応用しました。ワークフローの設定に必要なツールボックスに関してサポートが必要なとき、MathWorks のチームとはいつでも連絡が取れました。」

自律型トラクターのスタートアップ企業である Monarch Tractor は、モデルベースデザインを導入し、MathWorks スタートアップ プログラムのサポートを得て新型車両を市場に投入しました。

「Monarch Tractor は MathWorks スタートアップ プログラムの支援により、初期車両開発、実車両を用いたアーキテクチャのテストを経て、農業従事者の方々にいち早く最初のトラクターをお届けすることができました。」

MathWorks アクセラレータ プログラム

MathWorks アクセラレータ プログラムは、スタートアップ企業とその開発を推進するアクセラレータとの提携を支援します。スタートアップ企業は、通常の法人のお客様と同様に特定分野の専門家によるテクニカルサポートやガイダンスを利用できるほか、業界で認められたソフトウェアに無料でアクセスできます。

インドのアクセラレータである Forge は、MathWorks アクセラレータ プログラムと提携し、スタートアップ企業が開発にモデルベースデザインおよび技術計算ツールを導入できるようにしました。

「適切な製品を適切に構築するには、適切な技術サポートを活用することが重要です。Forge では、業界をリードする技術企業との提携を通じてこのサポートを実現しています。MathWorks と提携したことで、私たちのスタートアップ企業は MATLAB や Simulink などの業界標準のツールを活用できるようになりました。」

記事:

Dayananda Sagar Entrepreneurship Research & Business Incubation Foundation (DERBI Foundation) からインキュベーション サポートを受けたスタートアップ企業の Xfinito Biodesigns は、MathWorks のサポートを利用して、糖尿病性神経障害を治療するこれまでにない医療機器を開発しました。

「技術指導プログラムと私たちが持つ MATLAB および Simulink の経験により、インテリジェントな開発を高速化できました。」

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モデルベースデザインでの成功

気候変動の課題に対処する再生可能エネルギーシステムを構築すること、陸、海、空における輸送の未来を定義すること、あるいは新しい医療機器により生活の質を高めることなど、多くの産業分野において、スタートアップ企業は、モデルベースデザインを使用して即時の目に見える成果を継続的に達成しています。

段階的な導入手法および MathWorks のサポートにより、スタートアップ企業はモデルベースデザインの導入を成功させ、迅速かつコスト効率良くイノベーションを実現することで、アイデアから量産へと事業を拡大することができます。