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Closed-Loop PID Autotuner ブロックを使用した非同期機のフィールド オリエンテッド コントローラーの調整

この例では、Closed-Loop PID Autotuner ブロックを使用して 1 回のシミュレーションのみで非同期機 (ASM) のフィールド オリエンテッド制御 (FOC) を調整する方法を説明します。

フィールド オリエンテッド制御の紹介

この例では、非同期機 (ASM) のフィールド オリエンテッド制御 (FOC) を Simscape™ Electrical™ Power Systems コンポーネントを使用して Simulink® でモデル化します。モデルは Simscape の例に基づいています。

mdl = 'scdfocasmPIDTuning';
open_system(mdl)

フィールド オリエンテッド制御 (FOC) は三相固定子電流をベクトルとして制御します。FOC は、時間および速度に依存する三相システムを 2 つの時不変座標系に変換する投影に基づいています。これらの変換は、Clarke 変換、Park 変換、およびそのそれぞれの逆変換です。これらの変換は Controls サブシステム内のブロックとして実装されます。

AC モーターの制御に FOC を使用する利点には次が含まれます。

  • トルクと磁束を個別に直接制御

  • 過渡状態および定常状態を正確に管理

  • DC モーターと比べて同様の性能

Controls サブシステムは 4 つすべての PI コントローラーを含みます。外側のループの PI コントローラーはモーターの速度を調整します。外側のループの磁束 PI コントローラーは固定子の磁束を調整します。内側のループの PI コントローラー 2 つは d 軸と q 軸の電流を個別に制御します。外側のループの速度 PI コントローラーからのコマンドは、q 軸に直接送られてトルクを制御します。d 軸のコマンドは ASM では非ゼロになり、これは外側のループの磁束 PI コントローラーの結果です。

既存の PI コントローラーのゲインは次のようになります。

  • 速度の PI コントローラーのゲインは P = 65.47 および I = 3134.24。

  • 磁束の PI コントローラーのゲインは P = 52.22 および I = 2790.51。

  • d 軸の PI コントローラーのゲインは P = 1.08 および I = 207.58。

  • q 軸の PI コントローラーのゲインは P = 1.08 および I = 210.02。

コントローラー ゲインは Data Store Memory ブロックに格納されており、外部から各 PID ブロックへ提供されます。コントローラーの調整プロセスが完了すると、新規の調整ゲインが Data Store Memory ブロックに書き込まれます。この構成ではシミュレーション中にコントローラー ゲインをリアルタイムで更新することが可能です。

Closed-Loop PID Autotuner ブロック

Closed-Loop PID Autotuner ブロックでは、一度に 1 つの PID コントローラーを調整することができます。このブロックは閉ループ実験の実行中に正弦波摂動信号をプラント入力に挿入し、プラント出力を測定します。実験が停止されると、ブロックは目的の帯域幅付近の少数の点で推定したプラントの周波数応答に基づく PID ゲインを計算します。この FOC ASM モデルでは、4 つの PI コントローラーそれぞれに Closed-Loop PID Autotuner ブロックを使用できます。

このワークフローは、Closed-Loop PID Autotuner ブロックを使って再調整する初期コントローラーがある場合に適用されます。この方法の利点は次のとおりです。

  1. 実験中に予期しない外乱が生じた場合、既存のコントローラーによりこれが抑制され、安全な操作が確保されます。

  2. 既存のコントローラーは、摂動信号を抑制することによってプラントを定格操作点付近で実行し続けます。

シミュレーションとリアルタイム アプリケーションの両方に Closed-Loop PID Autotuner ブロックを使用する場合、次に注意します。

  • プラントは漸近的に安定 (つまりすべての極が厳密に安定) であるか、積分でなければなりません。自動調整器ブロックは不安定なプラントでは動作しません。

  • 既存のコントローラーのフィードバック ループは安定でなければなりません。

  • プラントの周波数応答をリアルタイムでより正確に推定するには、実験中に FOC ASM モデル内のすべての外乱の発生を最小限にします。自動調整器ブロックは、プラント出力が挿入された摂動信号のみへの応答であると仮定します。

  • 実験中はフィードバック ループが閉じているため、既存のコントローラーは挿入された摂動信号も抑制します。閉ループ実験を使用する利点は、コントローラーによってプラントが定格操作点付近で実行され、安全な操作を維持できることです。欠点は、ターゲット帯域幅が現在の帯域幅からかけ離れていると、周波数応答の推定の精度が低下することです。

自動調整器とプラントおよびコントローラーの接続

FOC ASM モデルに示されるように、4 つすべての PI コントローラーについて PID ブロックとプラントの間に Closed-Loop PID Autotuner ブロックを挿入します。start/stop の信号によって閉ループ実験が開始および停止されます。実験が実行されていない場合、Closed-Loop PID Autotuner ブロックは 1 のゲインのブロックのように動作し、u in 信号が u out に直接渡されます。

4 つの PI コントローラーをもつマシン側コンバーターの元の制御構造を参照します。

制御構造を変更するには、Closed-Loop PID Autotuner ブロックをそれぞれの PI コントローラーに組み込みます。マシン側コンバーターの変更された制御構造を参照します。

自動調整器ブロックの設定

Closed-Loop PID Autotuner ブロックをプラント モデルと PID ブロックに正しく接続したら、調整と実験の設定を指定します。

[調整] タブには 2 つの主要な調整設定があります。

  • ターゲットの帯域幅 - コントローラーの望ましい応答速度を指定します。この例では、内側のループの電流制御に 5000 ラジアン/秒、外側のループの制御に 200 ラジアン/秒を選択します。

  • ターゲットの位相余裕 - コントローラーの望ましいロバスト性を指定します。この例では、内側のループの電流制御に 70 度、外側のループの制御に 90 度を選択します。

[実験] タブには 3 つの主要な実験設定があります。

  • プラント タイプ - プラントが漸近的に安定か、または積分であるかを指定します。この例では FOC ASM モデルは安定です。

  • プラントの符号 - プラントが正と負のどちらの符号をもつかを指定します。定格操作点でのプラント入力における正の変化によって、プラントが新しい定常状態に達したときにプラント出力に正の変化が生じる場合、プラントの符号は正になります。それ以外の場合、プラントの符号は負です。プラントが安定の場合、プラントの符号はその DC ゲインの符号に等しくなります。プラントが積分の場合、プラントの符号は、プラント出力が増加し続ける場合は正、減少し続ける場合は負になります。この例では、FOC ASM モデルのプラントの符号は正です。

  • 正弦波振幅 - 挿入される正弦波の振幅を指定します。この例では、内側のループのコントローラーに 0.25、外側のループのコントローラーに 0.01 を選択して、プラントが飽和制限内で必ず正しく励起されるようにします。励起の振幅が大きすぎたり小さすぎたりすると、周波数応答の推定結果が不正確になります。

カスケード フィードバック ループの調整

Closed-Loop PID Autotuner ブロックは一度に 1 つの PI コントローラーのみを調整するため、FOC ASM モデルにある 4 つのコントローラーを個別に調整しなければなりません。最初に内側のループのコントローラーを調整してから、外側のループのコントローラーを調整します。

  • d 軸の電流コントローラーは 3.5 ~ 3.55 秒の間で調整。

  • q 軸の電流コントローラーは 3.6 ~ 3.65 秒の間で調整。

  • 磁束コントローラーは 3.7 ~ 4.7 秒の間で調整。

  • 速度コントローラーは 4.8 ~ 5.8 秒の間で調整。

各 PI コントローラーの調整後、Data Store Memory ブロックによってコントローラー ゲインが更新されます。

ノーマル モードでの自動調整器ブロックのシミュレーション

この例では FOC ASM モデルが Simulink で作成されています。4 つすべてのコントローラーが 1 回のシミュレーションで調整されます。さらに、コントローラーを調整する前と後の速度応答間で応答が比較されます。テスト対象のシナリオは、加速プロセスおよびトルク負荷の変化 (1 p.u. の振幅) を含みます。

FOC ASM モデルのシミュレーションは、モーターのパワー エレクトロニクス コントローラーのサンプル時間が小さいため、通常はコンピューター上で数分かかります。

sim(mdl);
logsout_autotuned = logsout;
save('AutotunedSpeed','logsout_autotuned');

次の図はシミュレーション結果全体を示しています。

上図のグレーの領域は、調整中の 3.5 ~ 5.8 秒の間の電流と速度の応答を示しています。電流とモーター速度の変化は非常に小さいものです。モーター速度は、自動調整プロセスが開始する前に定格の 1600 rpm に達しています。

4 つの PI コントローラーは新しいゲインで調整されています。

  • 速度の PI コントローラーのゲインは P = 158.8 および I = 2110。

  • 磁束の PI コントローラーのゲインは P = 129.3 および I = 1732。

  • d 軸の PI コントローラーのゲインは P = 1.611 および I = 627.6。

  • q 軸の PI コントローラーのゲインは P = 2.029 および I = 829.9。

自動調整プロセスの前と後に同じ回転子速度指令値とトルク負荷が適用されています。Closed-Loop PID Autotuner ブロックを使用してコントローラーが調整される前と後の、定格 1600 rpm に対する回転子速度誤差をプロットします。速度誤差の曲線は、コントローラーの性能を並べて比較できるように時間が揃えられています。

scdfocasmPIDTuningPlotSpeed

コントローラーを調整した後、加速中およびトルク負荷が変化するときの非同期モーターの速度応答は過渡応答がより高速になり、定常状態誤差がより小さくなります。

bdclose(mdl)

参考

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