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bearingFaultBands

スペクトル特徴抽出用にボール ベアリングまたはローラー ベアリングの故障特性周波数周辺の周波数帯域を生成

R2019b 以降

説明

FB = bearingFaultBands(FR,NB,DB,DP,beta) は、ローラー ベアリングまたはボール ベアリングの故障特性周波数帯域 FB を物理パラメーターを使用して生成します。FR はシャフトまたは内輪の回転速度、NB はボールまたはローラーの数、DB はボールまたはローラーの直径、DP はピッチの直径、beta は接触角 (度単位) です。FB の値は FR と同じ暗黙的な単位をもちます。

Illustration of ball bearing assembly. The outside and the inside circles are the outer and inner races, respectively. The balls are between the two races.

FB = bearingFaultBands(___,Name,Value) では、1 つ以上の名前と値のペアの引数を使用して追加のパラメーターを指定できます。

[FB,info] = bearingFaultBands(___) は、生成された故障周波数帯域 FB に関する情報を含む構造体 info も返します。

出力引数のない bearingFaultBands(___) は、生成された故障周波数帯域 FB の棒グラフをプロットします。

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この例では、ピッチの直径が 12 cm で 8 つの転動体をもつベアリングについて考えます。各転動体の直径は 2 cm です。内輪が 25 Hz で駆動される間、外輪は静止状態を保ちます。転動体の接触角は 15 度です。

上記のベアリングの物理的寸法から、bearingFaultBands を使用して周波数帯域を構成します。

FR = 25;
NB = 8;
DB = 2;
DP = 12;
beta = 15;
FB = bearingFaultBands(FR,NB,DB,DP,beta)
FB = 4×2

   82.6512   85.1512
  114.8488  117.3488
   71.8062   74.3062
    9.2377   11.7377

FB は 4 行 2 列の配列として返されます。周波数帯域幅は FR の 10% (既定の設定) の 2.5 Hz です。FB の 1 列目に F-W2 の値が格納され、2 列目にそれぞれの欠陥特性周波数のすべての F+W2 の値が格納されます。

この例では、各ローラーが 7.5 mm の 11 個のローラーをもつマイクロ ローラー ベアリングについて考えます。ピッチの直径は 34 mm、接触角は 0 度です。シャフト回転数を 1800 rpm と想定して、ローラー ベアリングの周波数帯域を構成します。'Domain' を 'frequency' と指定して、FR と同じ単位で周波数帯域 FB を取得します。

FR = 1800;
NB = 11;
DB = 7.5;
DP = 34;
beta = 0;
[FB1,info1] = bearingFaultBands(FR,NB,DB,DP,beta,'Domain','frequency')
FB1 = 4×2
104 ×

    0.7626    0.7806
    1.1994    1.2174
    0.3791    0.3971
    0.0611    0.0791

info1 = struct with fields:
        Centers: [7.7162e+03 1.2084e+04 3.8815e+03 701.4706]
    FaultGroups: [1 2 3 4]
         Labels: {'1Fo'  '1Fi'  '1Fb'  '1Fc'}

次に、名前と値のペア 'Sidebands' を使用して内輪と転動体の欠陥周波数の側波帯を含めます。

[FB2,info2] = bearingFaultBands(FR,NB,DB,DP,beta,'Domain','order','Sidebands',0:1)
FB2 = 8×2

    4.2368    4.3368
    5.6632    5.7632
    6.6632    6.7632
    7.6632    7.7632
    1.7167    1.8167
    2.1064    2.2064
    2.4961    2.5961
    0.3397    0.4397

info2 = struct with fields:
        Centers: [4.2868 5.7132 6.7132 7.7132 1.7667 2.1564 2.5461 0.3897]
    FaultGroups: [1 2 2 2 3 3 3 4]
         Labels: {'1Fo'  '1Fi-1Fr'  '1Fi'  '1Fi+1Fr'  '1Fb-1Fc'  '1Fb'  '1Fb+1Fc'  '1Fc'}

生成された故障帯域 FB から、faultBandMetrics コマンドを使用してスペクトル メトリクスを抽出できます。

この例では、ピッチの直径が 12 cm で 8 つの転動体をもつ破損したベアリングについて考えます。各転動体の直径は 2 cm です。内輪が 25 Hz で駆動される間、外輪は静止状態を保ちます。転動体の接触角は 15 度です。

上記のベアリングの物理的寸法から、bearingFaultBands を使用して故障周波数帯域を可視化します。

FR = 25;
NB = 8;
DB = 2;
DP = 12;
beta = 15;
bearingFaultBands(FR,NB,DB,DP,beta)

Figure contains an axes object. The axes object with title Fault Frequency Bands, xlabel Frequency contains 8 objects of type patch, text.

プロットから、ベアリング固有の次の振動周波数がわかります。

  • ケージの欠陥周波数 Fc は 10.5 Hz。

  • ボールの欠陥周波数 Fb は 73 Hz。

  • 外輪の欠陥周波数 Fo は 83.9 Hz。

  • 内輪の欠陥周波数 Fi は 116.1 Hz。

この例では、ピッチの直径が 12 cm で 10 個の転動体をもつボール ベアリングについて考えます。各転動体の直径は 0.5 cm です。内輪が 25 Hz で駆動される間、外輪は静止状態を保ちます。ボールの接触角は 0 度です。データセット bearingData.mat には、ベアリング振動信号についてのパワー スペクトル密度 (PSD) とそれぞれの周波数データが table に格納されています。

まず、ボール ベアリングの物理的特性を使用して最初の 3 つの側波帯を含むベアリング周波数帯域を構成します。

FR = 25;
NB = 10;
DB = 0.5;
DP = 12;
beta = 0;
FB = bearingFaultBands(FR,NB,DB,DP,beta,'Sidebands',1:3)
FB = 14×2

  118.5417  121.0417
   53.9583   56.4583
   78.9583   81.4583
  103.9583  106.4583
  153.9583  156.4583
  178.9583  181.4583
  203.9583  206.4583
  262.2917  264.7917
  274.2708  276.7708
  286.2500  288.7500
      ⋮

FB は一次周波数とそれらの側波帯を含む 14 行 2 列の配列になります。

PSD データを読み込みます。bearingData.mat の table X には、1 列目に PSD、2 列目に周波数グリッドがそれぞれ cell 配列として格納されています。

load('bearingData.mat','X')
X
X=1×2 table
          Var1                Var2      
    ________________    ________________

    {12001x1 double}    {12001x1 double}

table X の PSD データと FB の周波数帯域を使用してスペクトル メトリクスを計算します。

spectralMetrics = faultBandMetrics(X,FB)
spectralMetrics=1×43 table
    PeakAmplitude1    PeakFrequency1    BandPower1    PeakAmplitude2    PeakFrequency2    BandPower2    PeakAmplitude3    PeakFrequency3    BandPower3    PeakAmplitude4    PeakFrequency4    BandPower4    PeakAmplitude5    PeakFrequency5    BandPower5    PeakAmplitude6    PeakFrequency6    BandPower6    PeakAmplitude7    PeakFrequency7    BandPower7    PeakAmplitude8    PeakFrequency8    BandPower8    PeakAmplitude9    PeakFrequency9    BandPower9    PeakAmplitude10    PeakFrequency10    BandPower10    PeakAmplitude11    PeakFrequency11    BandPower11    PeakAmplitude12    PeakFrequency12    BandPower12    PeakAmplitude13    PeakFrequency13    BandPower13    PeakAmplitude14    PeakFrequency14    BandPower14    TotalBandPower
    ______________    ______________    __________    ______________    ______________    __________    ______________    ______________    __________    ______________    ______________    __________    ______________    ______________    __________    ______________    ______________    __________    ______________    ______________    __________    ______________    ______________    __________    ______________    ______________    __________    _______________    _______________    ___________    _______________    _______________    ___________    _______________    _______________    ___________    _______________    _______________    ___________    _______________    _______________    ___________    ______________

         121               121            314.43          56.438            56.438          144.95          81.438            81.438          210.57          106.44            106.44          276.2           156.44            156.44          407.45          181.44            181.44          473.07          206.44            206.44          538.7           264.75            264.75          691.77          276.75            276.75          723.27          288.69             288.69           754.61           312.69             312.69           817.61           324.62             324.62           848.94           336.62             336.62           880.44           13.188             13.188           31.418           7113.4    

spectralMetrics は、FB の各周波数範囲の計算されたピーク振幅、ピーク周波数、および帯域パワーを含む 1 行 43 列の table になります。spectralMetrics の最後の列は、FB の 14 個のすべての周波数全体で計算された合計帯域パワーです。

入力引数

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シャフトまたは内輪の回転速度。正のスカラーとして指定します。FR は、bearingFaultBands で周辺の故障周波数帯域を生成する基本周波数です。FR はヘルツまたは 1 分あたりの回転数で指定します。

ベアリングのボールまたはローラーの数。正の整数として指定します。

ボールまたはローラーの直径。正の整数として指定します。

ベアリングのピッチの直径。正のスカラーとして指定します。DP は、ベアリング回転時にボールまたはローラーの中心が通る円の直径です。

ボールまたはローラーの軸に対して垂直な平面と 2 つの軌道を結ぶ線との間の接触角 (度単位)。正のスカラーとして指定します。

名前と値の引数

オプションの引数のペアを Name1=Value1,...,NameN=ValueN として指定します。Name は引数名で、Value は対応する値です。名前と値の引数は他の引数の後に指定しなければなりませんが、ペア自体は順不同で構いません。

R2021a 以前は、名前と値をそれぞれコンマで区切り、 Name を引用符で囲みます。

例: ...,'Harmonics',[1,3,5]

含められる基本周波数の高調波。'Harmonics' と正の整数のベクトルで構成されるコンマ区切りのペアとして指定します。既定値は 1 です。'Harmonics' は、基本周波数の高調波をさらに含めて周波数帯域を構成する場合に指定します。

含められる基本周波数とその高調波の周辺の側波帯。'Sidebands' と非負の整数のベクトルで構成されるコンマ区切りのペアとして指定します。既定値は 0 です。'Sidebands' は、基本周波数とその高調波の周辺の側波帯を含めて周波数帯域を構成する場合に指定します。

定格故障周波数を中心とする周波数帯域幅。'Width' と正のスカラーで構成されるコンマ区切りのペアとして指定します。既定値は基本周波数の 10% です。故障帯域がオーバーラップしないように、'Width' で大きな値を指定することは避けてください。

故障帯域周波数の単位。'Domain' と 'frequency' または 'order' のいずれかで構成されるコンマ区切りのペアとして指定します。次のように選択します。

  • FBFR と同じ単位で返す場合は 'frequency'

  • FB を内輪の回転数 FR に対する相対的な回転数として返す場合は 'order'

負の定格故障周波数を周波数原点で折り返す必要があるかどうかを指定する logical 値。'Folding' と true または false のいずれかで構成されるコンマ区切りのペアとして指定します。'Folding' を true に設定すると、faultBands は負の定格故障周波数の絶対値を取得して周波数原点で折り返し、折り返された故障帯域が常に正の周波数範囲に収まるようにします。折り返された故障帯域は [max(0, |F|W2), |F|+W2] として計算されます。ここで、W は名前と値のペア 'Width'、F はいずれかの定格故障周波数です。

出力引数

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故障周波数帯域。N 行 2 列の配列として返されます。ここで、N は故障周波数の数です。FBFR と同じ単位で返されます。'Domain' の値に応じてヘルツまたは次数のいずれかになります。生成された故障周波数帯域から、faultBandMetrics を使用してスペクトル メトリクスを抽出します。生成された故障帯域 [FW2, F+W2] の中心は次のとおりです。

  • 外輪の欠陥周波数 Fo とその高調波

  • 内輪の欠陥周波数 Fi とその高調波および FR の側波帯

  • 転動体 (ボール) の欠陥周波数 Fb とその高調波および Fc の側波帯

  • ケージ (トレーン) の欠陥周波数 Fc とその高調波

W は周波数帯域の幅です。名前と値のペア 'Width' を使用して指定できます。ベアリングの周波数の詳細については、アルゴリズムを参照してください。

FB の故障周波数帯域に関する情報。次のフィールドをもつ構造体として返されます。

  • Centers — 中心の故障周波数

  • Labels — それぞれの周波数を示すラベル

  • FaultGroups — 関連する故障周波数を識別する故障グループ番号

アルゴリズム

bearingFaultBands は、それぞれのベアリング特性周波数を次のように計算します。

  • 外輪の欠陥周波数、Fo=NB2FR(1DBDPcos(β))

  • 内輪の欠陥周波数、Fi=NB2FR(1+DBDPcos(β))

  • 転動体 (ボール) の欠陥周波数、Fb=DP2DBFR(1[DBDPcos(β)]2)

  • ケージ (トレーン) の欠陥周波数、Fc=FR2(1DBDPcos(β))

参照

[1] Chandravanshi, M & Poddar, Surojit. "Ball Bearing Fault Detection Using Vibration Parameters." International Journal of Engineering Research & Technology. 2. 2013.

[2] Singh, Sukhjeet & Kumar, Amit & Kumar, Navin. "Motor Current Signature Analysis for Bearing Fault Detection in Mechanical Systems." Procedia Materials Science. 6. 171–177. 10.1016/j.mspro.2014.07.021. 2014.

[3] Roque, Antonio & Silva, Tiago & Calado, João & Dias, J. "An approach to fault diagnosis of rolling bearings." WSEAS Transactions on Systems and Control. 4. 2009.

バージョン履歴

R2019b で導入