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BLDC

台形の磁束分布をもつ三相ブラシレス DC モーター

R2023a 以降

ライブラリ:
Motor Control Blockset / Electrical Systems / Motors

説明

BLDC ブロックは、120 電気角度の位置範囲にわたって一定に保たれる台形逆起電力をもつ三相ブラシレス DC (BLDC) モーターを実装します。このブロックは三相入力電圧を使用して、個々の相電流を調整し、モーターのトルクや角速度を制御できるようにします。

既定では、このブロックは [シミュレーション タイプ] パラメーターを [連続] に設定して、シミュレーション時に連続サンプル時間を使用します。ブロックを固定ステップ シミュレーションで使用する場合は、パラメーターを [離散] に設定します。その後、[サンプル時間 (s)] パラメーターを指定します。

モーターの構造

次の図は、単一の極対があるモーターを示しています。

永久磁石によってモーターの磁場が生成され、これによりモーターの角度に基づく台形の磁束変化率が得られます。

座標軸の規則で、モーターの角度 θr が 0 の場合に a 相と永久磁石の磁束が揃います。

三相正弦波モデルの電気システム

ブロックは標準の dq 基準座標系の代わりに、次の変換方程式によって定義される d’q’ 基準座標系を使用します。

vd'=23((vaRiaEa)cosθe+(vbRibEb)cos(θe2π3)+(vcRicEc)cos(θe+2π3))

vq'=2π3((vaRiaEa)sinθe+(vbRibEb)sin(θe2π3)+(vcRicEc)sin(θe+2π3))

Ea=PωmψaθeEb=PωmψbθeEc=Pωmψcθe

ia=id'cosθeiq'sinθeib=id'cos(θe2π3)iq'sin(θe2π3)ic=id'cos(θe+2π3)iq'sin(θe+2π3)

このブロックは、BLDC モーターの dq 基準座標系および d’q’ 基準座標系で表された次の方程式を実装します。モーターの基準座標系のすべての数量は固定子の A 相を基準としています。

ωe=Pωmddtid'=1Ldvd'+LqLdPωmiq'

ddtiq'=1Lqvq'LdLqPωmid'

Te=1.5P((LdLq)id'iq')+P(ψaθeia+ψbθeib+ψcθeic)

次の表では、これらの方程式で使用されている変数について説明します。

Lq, Ld

q 軸と d 軸のインダクタンス (H)

R

固定子巻線の抵抗 (Ω)

iq', id'

q' 軸と d' 軸の電流 (A)

vq', vd'

q' 軸と d' 軸の電圧 (V)

ωm

モーターの機械角速度 (rad/s)

ωe

モーターの電気角速度 (rad/s)

P

極対数

Te

電磁トルク (Nm)

Θe

電気角 (rad)

Va, Vb, Vc

固定子の A 相、B 相、C 相の電圧 (V)

ia, ib, ic

固定子の A 相、B 相、C 相の電流 (A)

Ea, Eb, Ec

固定子の A 相、B 相、C 相の逆起電力 (V/m/s)

Ψa, Ψb, Ψc

各固定子巻線と鎖交する合計磁束 (Wb)

機械システム

モーターの角速度は次のように求められます。

ddtωm=1J(TeTfFωmTm)dθmdt=ωm

方程式では次の変数を使用します。

J

モーターと負荷を合わせた慣性 (kgm^2)

F

モーターと負荷を合わせた粘性摩擦 (N·m/(rad/s))

θm

モーターの機械角度位置 (rad)

Tm

モーター シャフトのトルク (Nm)

Te

電磁トルク (Nm)

Tf

モーター シャフトの静止摩擦トルク (Nm)

ωm

モーターの機械角速度 (rad/s)

振幅不変 dq 変換

このブロックは次の方程式を使用して、dq と三相振幅が確実に等しくなるようにするための振幅不変 dq 変換を実装します。

[vsdvsq]= 23 [cos(Θda)cos(Θda2π3)cos(Θda+2π3)sin(Θda)sin(Θda2π3)sin(Θda+2π3)][vavbvc]

[iaibic]=   [cos(Θda)sin(Θda)cos(Θda2π3)cos(Θda+2π3)sin(Θda2π3)sin(Θda+2π3)][isdisq]

方程式では次の変数を使用します。

Θda

回転子の a 軸に対する dq 固定子電気角 (rad)

vsq, vsd

固定子の q 軸と d 軸の電圧 (V)

isq, isd

固定子の q 軸と d 軸の電流 (A)

va, vb, vc

固定子の電圧の a 相、b 相、c 相 (V)

ia, ib, ic

固定子の電流の a 相、b 相、c 相 (A)

台形の磁束変化率

永久磁石によって回転子の磁場が生成され、これにより回転子の角度に基づく台形の磁束変化率が得られます。次の図は、三相 BLDC モーターの三相の磁束変化率を示しています。

端子

入力

すべて展開する

モーター シャフトにかかる負荷トルク Tm (N·m 単位)。

依存関係

この端子を有効にするには、[機械入力構成] パラメーターを [トルク] に設定します。

モーターの角速度 ωm (rad/s 単位)。

依存関係

この端子を有効にするには、[機械入力構成] パラメーターを [角速度] に設定します。

固定子の端子電圧 VaVbVc (V 単位)。

出力

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バス信号には次のブロック計算が含まれます。

信号 説明変数単位

IaStator

固定子相電流 A

ia

A

IbStator

固定子相電流 B

ib

A

IcStator

固定子相電流 C

ic

A

IdSync

d' 軸電流

id'

A

IqSync

q' 軸電流

iq'

A

VdSync

d' 軸電圧

vd'

V

VqSync

q' 軸電圧

vq'

V

MtrSpd

モーターの機械角速度

ωm

rad/s

MtrPos

モーターの機械角度位置

θm

rad

MtrTrq

電磁トルク

Te

N·m

MtrHall

ホール センサー出力

--

BackEMF

モーターで生成された逆起電力Ea, Eb, Ec

V/m/s

a 相、b 相、c 相の電流 iaibic (A 単位)。

モーターのトルク Tmtr (N·m 単位)。

依存関係

この端子を有効にするには、[機械入力構成] パラメーターを [角速度] に設定します。

モーターの角速度 ωmtr (rad/s 単位)。

依存関係

この端子を有効にするには、[機械入力構成] パラメーターを [トルク] に設定します。

パラメーター

すべて展開する

ブロック オプション

次の表は、機械入力構成をまとめたものです。

機械入力構成作成される入力端子作成される出力端子

トルク

LdTrq

MtrSpd

角速度

Spd

MtrTrq

プログラムでの使用

ブロック パラメーター値をプログラムで設定するには、set_param 関数を使用します。

ブロック パラメーター値をプログラムで取得するには、get_param 関数を使用します。

パラメーター: port_config
値: Torque (既定値) | Speed
データ型: character vector

既定では、このブロックはシミュレーション時に連続サンプル時間を使用します。単精度ターゲットのコードを生成する場合は、パラメーターを [離散] に設定します。

離散シミュレーション用の積分のサンプル時間 (秒単位)。

依存関係

このパラメーターを有効にするには、[シミュレーション タイプ][離散] に設定します。

パラメーター

モーターの極対 P

固定子の相あたりの抵抗 Rs (Ω 単位)。

d 軸における固定子のインダクタンス Ld (H 単位)。

q 軸における固定子のインダクタンス Lq (H 単位)。

永久磁石の鎖交磁束定数 λpm (Wb 単位)。

回転子の慣性 J (kg.m^2 単位)

粘性減衰 F (N·m/(rad/s) 単位)

静止摩擦 Tf (N·m 単位)

初期値

初期 d 軸電流 id' (A 単位)。

初期 q 軸電流 iq' (A 単位)。

モーターの初期角度位置 θm0 (rad 単位)。

モーターの初期角速度 ωm0 (rad/s 単位)。

依存関係

このパラメーターを有効にするには、[機械入力構成][トルク] に設定します。

バージョン履歴

R2023a で導入