数値的な調整結果の解釈
systune
または制御システム調整器を使用して制御システムを調整する場合、調整された制御システムが設計要件をどの程度満たしているかの概要を示すレポートが提供されます。これらのレポートを解釈するには、調整アルゴリズムが調整目標を満たすためにシステムをどのように最適化するかを理解する必要があります (要件が満たされない箇所とその度合いを確認できるよう、調整目標とシステム応答の可視化も提供されます。これらのプロットの使用方法の詳細については、調整目標の可視化を参照してください)。
調整目標のスカラー値
調整ソフトウェアは各調整目標を正規化されたスカラー値に変換し、これらの値を制約 (厳密な目標) するか、最小化 (柔軟な目標) します。fi(x) および gj(x) が、それぞれ柔軟な目標と厳密な目標のスカラー値を表すとします。ここで、x は調整する制御システムの調整可能なパラメーターのベクトルです。調整アルゴリズムは、次の最小化問題を解きます。
を条件として、 に対して を最小化します。
xmin と xmax は、制御システムの自由パラメーターの最小値と最大値です。(各タイプの要件の評価に使用される特定の関数の詳細については、各調整目標のリファレンス ページを参照してください。)
柔軟な調整目標と厳密な調整目標の両方を使用する場合、ソフトウェアは、次の形式をもつ一連の部分問題として最適化を解決します。
ソフトウェアは乗算器 α を調整して、部分問題の解決が元の制約付き最適化問題の解決へと収束するようにします。
調整ソフトウェアは、各調整目標の最終のスカラー値を報告します。fi(x) または gj(x) の最終値が 1 より小さい場合、対応する調整目標は満たされています。1 より大きい値は、調整目標が少なくともいずれかの条件について満たされていないことを意味します。たとえば、周波数領域制約を記述する調整目標は、一部の周波数で満たされていても、他の周波数では満たされない場合があります。値が 1 に近いほど、その調整目標は達成に近づきます。したがって、これらの値によって、調整されたシステムが要件をどの程度満たしているかについての概要を把握できます。
ソフトウェアが提供する最適化された調整目標値の形式は、調整に制御システム調整器とコマンド ラインのどちらを使用するかによって異なります。
コマンド ラインでの調整結果
systune
コマンドは、調整されたパラメーター値をもつ制御システム モデルまたは slTuner
インターフェイスを返します。systune
はまた、fi(x) と gj(x) の最善の値を、それぞれベクトル値の出力引数 fSoft
および gHard
として返します。詳細については、systune
のリファレンス ページを参照してください (調整目標の最終値を個別に取得するには、evalGoal
を使用します)。
既定では、systune
によってコマンド ウィンドウに調整目標の達成された最善の最終値が表示されます。たとえば、設定点の追従と外乱の抑制の PID 調整の例では、1 つの柔軟な要件 (R1
) と 2 つの厳密な要件 (R2
および R3
) を使って systune
が呼び出されます。
T1 = systune(T0,R1,[R2 R3]);
Final: Soft = 1.12, Hard = 0.99988, Iterations = 143
この表示は、厳密な調整目標の最大の最適値が 1 より小さいことを示しており、よって厳密な目標の両方が満たされています。柔軟な目標の値は 1 よりわずかに大きく、柔軟な目標をほぼ満たしていることがわかります。調整目標プロットを使用して、調整目標のどの領域にどの程度違反しているかを確認できます (調整目標の可視化を参照)。
最適化の進捗と値についての追加の情報を取得するには、systune
の info
出力を使用できます。調整中に systune
で追加の情報が表示されるようにするには、systuneOptions
を使用します。
制御システム調整器での調整結果
制御システム調整器では、 をクリックすると、アプリによって fi(x) と gj(x) の最善の達成値をまとめた調整レポートが作成されます。制御システムを調整した直後に調整レポートを表示するには、制御システム調整器の右下隅にある [調整レポート] をクリックします。
調整レポートには、アルゴリズムで取得された fi(x) と gj(x) の最終値が表示されます。
[厳密な目標] 領域には、最小化された gi(x) の値とどれが達成されたかが示されます。[柔軟な目標] 領域には、最小化された fi(x) の値の最大値が [最悪値] として表示され、すべての要件の値がリストされます。この例では、厳密な目標が満たされ、柔軟な目標はほぼ満たされています。コマンド ラインの場合と同様、調整目標プロットを使用して、調整目標に違反している箇所とその度合いを確認できます (調整目標の可視化を参照)。
ヒント
最後に実行した調整のレポートはいつでも表示できます。[調整] タブで [調整] をクリックし、
[調整レポート]
を選択します。
調整結果の改善
調整の結果が設計要件を適切に満たしていない場合、調整目標セットを変更して結果を改善します。以下に例を示します。
必須要件である調整目標を厳密な目標として指定します。または、絶対要件ではない調整目標を柔軟な目標として指定して緩和します。
周波数領域の目標を適用する周波数範囲を制限します。
制御システム調整器では、調整目標ダイアログ ボックスの [周波数範囲の目標を適用] フィールドを使用します。
コマンド ラインでは、
TuningGoal
オブジェクトのFocus
プロパティを使用します。
調整の結果が設計要件を満たしている場合、調整された制御システムの検証の説明に従って調整された制御システムを検証できます。
参考
systune
| systune (for slTuner)
(Simulink Control Design) | viewGoal
| evalGoal