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制御システム調整器でのフィードバック ループのクイック ループ調整

この例では、要件を取得する調整目標を明示的に作成することなく、指定された帯域幅および指定された安定余裕を満たすように制御システムの Simulink® モデルを制御システム調整器で調整する方法を説明します。同様のアプローチを使用して、MATLAB® でモデル化された制御システムのクイック ループ調整を行うことができます。

この例は、制御システム調整器[クイック ループ調整] オプションが、交差周波数、ゲイン余裕および位相余裕の仕様から調整目標を生成する方法を示します。このオプションでは、ループ整形アプローチを使用して調整するために、SISO または MIMO フィードバック ループを迅速に設定できます。この例では、[クイック ループ調整] オプションを使用した後で、制御システムに対してさらなる調整要件を追加する方法も説明します。

[クイック ループ調整]looptune コマンドと同等の制御システム調整器の機能です。

調整のためのモデルの設定

Simulink モデルを開きます。

openExample('rct_distillation')

このモデルは、2 入力 2 出力のプラント G で再現された、蒸留塔を表しています。調整可能な要素はデカップリング ゲイン行列 DM と 2 つの PI コントローラー (PI_L および PI_V) です (このモデルの詳細については、蒸留塔の分離コントローラーを参照してください)。

目標は ry の間の MIMO フィードバック ループを 0.1 ~ 0.5 rad/s の帯域幅に調整することであると仮定します。また、7 dB のゲイン余裕と 45 度の位相余裕が必要であるとします。[クイック ループ調整] オプションを使用すると、この目標のために制御システム調整器を迅速に構成することができます。

制御システム調整器を開きます。Simulink モデル ウィンドウの [アプリ] ギャラリーで、[制御システム調整器] をクリックします。

調整するブロックを指定します。制御システム調整器[調整] タブで、 [ブロックの選択] をクリックします。[調整ブロックの選択] ダイアログ ボックスで、[ブロックの追加] をクリックします。その後、調整用の DMPI_L および PI_V を選択します (調整ブロックの選択の詳細については、制御システム調整器で調整するブロックの指定を参照してください)。

モデルをターゲットの帯域幅および安定余裕に調整できるようになりました。

クイック ループ調整の目標の指定

[調整] タブで、[新規目標][クイック ループ調整] を選択します。

クイック ループ調整の場合、制御システムのプラント部分をコントローラーから分離するアクチュエータ信号とセンサー信号を識別しなければなりません (クイック ループ調整を目的とした場合、コントローラーは制御システムのプラント以外の部分にあたります)。アクチュエータ信号はプラントを駆動するコントローラー出力またはプラント入力です。センサー信号はコントローラーにフィードバックされるプラント出力の測定値です。この制御システムでは、アクチュエータ信号はベクトル信号 u で表され、センサー信号はベクトル信号 y で表されます。

[クイック ループ調整] ダイアログ ボックスの [アクチュエータ信号の指定 (制御)] の下で、アクチュエータ信号 u を追加します。同様に、[センサー信号の指定 (測定)] の下でセンサー信号 y を追加します (調整のための信号の指定の詳細については、対話型調整の目標の指定を参照してください)。

[目的の目標] の下の [ターゲット ゲイン交差領域] フィールドに、ターゲットの帯域幅の範囲 [0.1 0.5] を入力します。目的のゲイン余裕と位相余裕を対応するフィールドに入力します。

[OK] をクリックします。制御システム調整器は、ダイアログ ボックスに入力した目的の目標を取得する調整目標を自動的に生成します。

自動作成された調整目標の確認

この例では、制御システム調整器がループ整形目標と余裕目標を作成します。[クイック ループ調整] ダイアログ ボックスで極配置の設定を変更している場合、極目標も作成されています。

[目標の管理] をクリックして自動作成された目標を確認します。既定では、この目標はアクティブであり、柔軟な調整目標として指定されています。

調整目標をダブルクリックすると、自動的に計算および入力されたパラメーターを確認することができます。また、調整目標のグラフィカルな表現も確認できます。[調整] タブで、LoopTuning1_LoopShapeGoal プロットを確認します。

ターゲットの交差範囲は、積分器の開ループ ゲイン プロファイルをもつループ整形目標として表されます。グラフの影付きの部分は、許容された交差範囲が [クイック ループ調整] ダイアログ ボックスで指定したように [0.1 0.5] rad/s であることを示しています。

同様に、LoopTuning1_MarginsGoal プロットで余裕要件が取得されます。

モデルの調整

[調整] をクリックし、自動作成された調整目標を満たすようにモデルを調整します。調整目標のプロットで、要件が満たされていることを確認できます。

他のシステム応答を確認するための追加のプロットを作成するには、制御システム調整器での応答プロットの作成を参照してください。

設計要件の変更

クイック ループ調整を使用した後で設計要件を変更する場合、自動作成された調整目標を編集して、モデルを再度調整することができます。また、追加の調整目標を作成することもできます。

たとえば、応答をプラント入力で適用された外乱に制限する要件を追加します。出力 ydL および dV でのステップ コマンドに対する応答が適切に減衰するように制限し、20 秒未満での整定および 4 を超えない振幅を実現します。[新規目標][ステップ外乱の抑制] を選択し、[ステップ抑制目標] ダイアログ ボックスに適切な値を入力します (調整目標の作成の詳細については、対話型調整の目標の指定を参照してください)。

これらすべての調整目標を満たすために、モデルを再調整できるようになりました。

参考

(Simulink Control Design)

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