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干渉のモデル化

この例では、Communications Toolbox™ を使用したベント パイプ衛星通信リンクの干渉のモデル化について説明します。

はじめに

信号干渉とは、目的の信号に望ましくない信号が加わることであり、多くの通信システムにおける一般的な問題です。干渉の例をいくつか示します。

  1. 同じまたは類似の周波数帯域に 5G と LTE の波形が共存しているために一方の波形がもう一方の波形に干渉する

  2. モバイル デバイスにおいて第 2 基地局からの信号が第 1 基地局からの信号に干渉する

  3. 地上の受信アンテナが隣接衛星のビームから有意な信号レベルを受信する際にダウンリンクの隣接衛星干渉が生じる

  4. 強いアップリンク信号を衛星が第 2 地上局から受信して再ブロードキャストする際に干渉が生じる

このような干渉シナリオをモデル化することで、それらによるシステム パフォーマンスへの影響を解析して緩和措置を設計できます。

システム設定

この例では、ベント パイプ衛星通信リンクをモデル化し、アップリンクの干渉シナリオをモデル化する方法を示します。ベント パイプ リンクは、地上局から衛星へのアップリンク (リピーターとして機能) と別の地上局へのダウンリンク (ビット レベルの処理は行わない) で構成されます。衛星トランスポンダーは第 2 基地局から一次信号と干渉信号を受信します。結合された信号が衛星によって再ブロードキャストされ、地上局で受信されて処理されます。

Multiband Combiner ブロックは、一次信号と干渉信号をベースバンドで結合する効率的な手法を提供します。Multiband Combiner ブロックは、2 つの信号を内挿することで、干渉シナリオをモデル化するための周波数シフト後に結果として得られる信号のサンプル レートでエイリアシングが生じないようにします。その後、指定された周波数シフトを信号に適用し、それらを 1 つの信号に結合します。このブロックで、さまざまな量のスペクトルのオーバーラップをモデル化し、さまざまな重大度の干渉をシミュレートできます。詳細については、Multiband Combinerブロックのリファレンス ページを参照してください。

システム シミュレーション

Tx Signal Spectrum のスコープで示されているように、2 つのベースバンド信号の帯域幅はそれぞれ 500 kHz です。Multiband Combiner ブロックの [Frequency offsets] パラメーターは、100 kHz のスペクトルのオーバーラップをモデル化するように設定されています。このスペクトルのオーバーラップは、衛星トランスポンダーと地上局の受信機で受信した信号のスペクトルを示す Rx Signal Spectrum で示されています。

ビット エラー レート 0 は、この量の干渉ではシステム性能が低下しないことを示します。また、地上局の受信機の Received Signal Constellation は、一次信号の基準 QPSK コンスタレーションの周りに低い RMS EVM で密集しています。

2 つの信号間のスペクトルのオーバーラップを増やして干渉の影響を大きくします。ビット エラー レートが非ゼロで、受信信号コンスタレーションが高い RMS EVM で拡散していることから、干渉が大きくなるとシステム性能が低下することがわかります。

まとめとその他の調査

この例は、多くの無線通信システムで一般に見られる信号干渉をモデル化する手法を示したものです。Multiband Combiner ブロックは、さまざまな干渉シナリオをシミュレートするために必要な、内挿、周波数シフト、信号結合の処理を包含します。このモデルを使用して、ほかにも次の方法で干渉を調べることができます。

  1. 帯域幅が異なるベースバンド信号を使用する

  2. 'Interfering Signal' サブシステムのスイッチを使用して干渉をアクティブ/非アクティブにする

  3. モデル化するベースバンド信号を 2 つより多くして干渉信号を 1 つより増やす

  4. Signal Aggregator ブロックのパラメーターを適宜設定してさまざまな量の干渉をモデル化する

  5. 衛星トランスポンダーと地上局の受信機の干渉の影響を最小限にするさまざまな方法をモデル化する

Multiband Combiner ブロックを試行し、場合により、特定の干渉シナリオに合わせて必要な処理を変更します。[Output sample rate options] パラメーターを 'Auto' に設定すると、Multiband Combiner ブロックは、元の信号の周波数成分を周波帯域にシフトした後に歪まないように入力信号を内挿します。また、Multiband Combiner ブロックを使用する前にベースバンド入力信号を目的のレートに内挿し、[Output sample rate options] パラメーターを 'Specify via property' に、[Output sample rate] を 'Input sample rate' と同じ値に設定して、組み込み内挿を無効化することもできます。この例では 2 つの信号を使用していますが、連結して行列にすれば任意の数の入力信号をブロックで処理できます。

マルチバンド信号の生成の例では、Multiband Combiner ブロックと同様の処理を MATLAB® で実行するための comm.MultibandCombiner System object™ について説明しています。

信号に対する隣接および同一チャネル干渉の影響をモデル化するには、隣接および同一チャネル干渉の例を参照してください。