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通信システム性能における熱ノイズの影響

この例では、RF Blockset™ Circuit Envelope ライブラリを使用して、スーパー ヘテロダイン RF 受信機の熱ノイズをモデル化し、通信システムのノイズ指数 (NF) とビット エラー レート (BER) に対する影響を測定する方法を示します。Friis の式と RF Blockset Noise Testbench を使用してパラメーターが計算される Communications Toolbox™ 参照モデルを使用して結果を検証します。

RF 受信機システム アーキテクチャ

Modulator サブシステムおよび Channel サブシステムは、以下をモデル化する Communications Toolbox ブロックで構成されます。

  • ランダムなビットの QPSK 変調された波形

  • スペクトルを制限するためのレイズド コサイン パルス整形フィルター

  • 自由空間パス損失

薄い紫色で示す RF 受信機サブシステムは、以下の RF Blockset ブロックで構成されます。

  • Inport ブロック。複素入力波形を基準インピーダンスが [Source impedance] と等しい RF システム内の使用可能なパワーに変換し、入力変調波形を 2.1 GHz の RF 搬送波に割り当てます。

  • ノイズ源。シミュレーションのすべての搬送周波数に対する RF システムのノイズ フロアを設定します。このアクションは、マスクの [Noise distribution] オプションで [White] が選択されている場合にブロックで実行されます。ノイズ パワー スペクトル密度レベルの設定には、値 4*K*T*50 が使用されます (K はボルツマン定数、T は室温の 290 ケルビンに設定、50 オームはシステムの基準インピーダンス)。

  • ノイズ指数とゲインを指定したカスケード型の RF 増幅器と RF 復調器のブロック。これらのブロックで有効化されるのはノイズ劣化要因だけです。Demodulator ブロックのイメージ除去フィルターはマスク チェックボックスを使用して有効化され、その他のマスク パラメーターでエッジが 2.0 GHz と 2.2 GHz のバンドパス フィルターが定義されます。このフィルターで、RF と LO の周波数の差の絶対値として定義される中間周波数 (IF) への 2.6 GHz を中心とする熱ノイズのダウン コンバージョンやノイズを含む他の搬送周波数の折り返しを防止します。このイメージ除去フィルターを削除すると、IF に対するノイズの影響が Friis の式で与えられる推定を上回り、BER が悪化します。

  • Outport ブロック。[Sensor type] パラメーターは Power[Carrier frequencies] は IF 周波数、[Output] パラメーターは Complex baseband に設定されています。これらのブロック設定により、RF システムで後続の Communication Toolbox システム ブロックへの複素ベースバンド通信信号の供給が有効になります。

  • Configuration ブロック。モデルのシミュレーションの条件を設定します。モデルの RF Blockset セクションにはノイズ劣化要因しか含まれていないため、正確なシミュレーションを行うには、Configuration ブロックの [Fundamental tones] で Inport の搬送波 (RF) の周波数を 5e8 Hz、復調器のローカル発振器 (LO) の周波数を 1.6e9 Hz に設定し、[Harmonic order]1 にします。シミュレーションの搬送周波数を調べるには、Configuration ブロックの [View] ボタンを使用します。

  • RF 受信機のブロックはいずれも 50 オームに整合されます。ノイズのシミュレーションに対するインピーダンスの不一致による影響については、RF Noise Modeling (RF Blockset) を参照してください。

赤色で示す参照システムは、以下で構成されます。

  • 熱ノイズ フロアおよび増幅器と復調器のブロックのノイズの両方を含む Communications Toolbox の Receiver Thermal Noise ブロック。増幅器と復調器のブロックによるノイズを正しく組み合わせるために Friis の式が使用されます。この計算は、モデルのプリロード コールバック関数にあります。

  • RF 受信機の組み合わされたゲインをモデル化する Simulink の Gain ブロック。

  • ベースバンドのフィルターと復調器は、受信した信号を処理します。

RF 受信機の Circuit Envelope シミュレーション

[シミュレーション][実行] を選択します。

Error Rate Calculation ブロックは、システムおよび参照の BER を計算します。BER が定常状態に近づくときに BER を観察するには、全体のシミュレーション時間を長くします。この例では、定常状態のビット エラー レートは約 1e-4 です。

RF 受信機のノイズ指数とゲインの計算

RF Blockset Circuit Envelope 環境でノイズとゲインをモデル化するには、次の手順に従います。

  • Configuration ブロック ダイアログで [Simulate noise] を選択します。

  • システムの RF Amplifier ブロックと RF Mixer ブロックの [Noise figure (dB)] パラメーターを指定します。この例における RF 受信機の次の仕様は、Friis の式に従って 9.16 dB の組み合わされたノイズ指数を生成します。LNA のゲインは 20 dB、LNA のノイズ指数は 9 dB、復調器のゲインは -5 dB、RF 復調器のノイズ指数は 15 dB です。

$$G_1 = 100 \mbox{ (20 dB)}$$

$$G_2 = 0.316 \mbox{ (-5 dB)}$$

$$F_1 = 7.94 \mbox{ (9 dB)}$$

$$F_2 = 31.62 \mbox{ (15 dB)}$$

$$F_{sys} = F_1 + \frac{F_2 - 1}{G_1} = 8.25$$

$$NF_{sys} = 10\log_{10}{F_{sys}} = 9.16 \mbox{ dB}$$

$$G_{sys} = G_1 \mbox{ dB} + G_2 \mbox{ dB} = 15 \mbox{ dB}$$

RF Blockset Noise Figure Testbench

RF Blockset Noise Figure Testbench は、システムのノイズ指数の測定を簡略化したものです。ノイズ指数のテスト システムを設定するには、RF Noise Figure Testbench を新しいモデルに挿入します。モデル プロパティのコールバック PreLoadFcn の設定を新しいモデルのモデル プロパティのコールバック InitFcn にコピーします。

上記のモデルの RF Blockset ブロックで構成されるシステムの場合、前にパラメーターを設定した LNA ブロックと Demodulator ブロックを新しいモデルにコピーします。テストベンチにはノイズ フロアを設定する Noise source が含まれています。

  • テストベンチの Stimulus 端子を LNA の In 端子に接続し、Demodulator の Out 端子をテストベンチの Response 端子に接続します。Display ブロックをテストベンチの NF 端子に接続して、測定された Noise figure を表示できます。

  • テストベンチのマスク パラメーターを設定します。前の例と同様に、RF の [Input frequency (Hz)]2.1 GHz、IF の [Output frequency (Hz)].5 GHz です。この例では、[Baseband bandwidth (Hz)] として 10e6 Hz を選択しています。テストベンチを構成するためのその他の情報はマスクの手順で提供されます。

上記のモデルの Communications Friis システムの場合、前にパラメーターを設定した Combined Noise ブロックと Gain ブロックを新しいモデルにコピーします。テストベンチにノイズ フロアを設定するノイズ源が含まれているため、Combined Noise ブロックの [Add 290K antenna noise] チェックボックスを選択解除する必要があります。

  • テストベンチの接続点に RF Blockset ブロックが必要になるため、RF Blockset ブロックは Outport、Inport、および Configuration の 3 つになります。Inport ブロックと Outport ブロックのタイプの設定は Power です。通信の分岐は搬送周波数に依存しないため、これらのブロックの搬送周波数と基本波トーンは同じにする必要があり、どちらも 2.1 GHz に設定されます。Outport の [Output] パラメーターは Complex Baseband です。精度を確保するため、Configuration ブロックの [Step size] は、テストベンチのベースバンド帯域幅である 10 MHz の少なくとも 8 倍の大きさの Envelope bandwidth ([Step size]1/80e6 秒) にしなければなりません。

Noise Figure Testbench の実行

[シミュレーション][実行] を選択します。

例の検証

RF ブロック マスクの選択を使用して追加の RF モデル劣化要因を含めることができます。インピーダンスの不一致、非線形性、LO 絶縁などです。

参考

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