BuildingIQ、大規模ビルの HVAC エネルギーを予測して最適化するアルゴリズムを開発
課題
予測最適化によって大規模商業ビルの HVAC エネルギー コストを最小限に抑えるリアルタイム システムを開発する
ソリューション
MATLAB を使用して、大規模なデータセットを解析および可視化し、高度な最適化アルゴリズムを実装し、運用クラウド環境でアルゴリズムを実行する
結果
- ギガバイト単位のデータを解析して可視化
- アルゴリズムの開発速度が 10 倍高速化
- 最良のアルゴリズム手法を迅速に特定
オフィスビル、病院、およびその他の大規模商業ビルは、世界で消費されるエネルギーの約 30% を占めています。このようなビルの暖房、換気、および空調 (HVAC) システムは、変化する気象パターン、変わりやすいエネルギー コスト、建物の熱的特性を考慮していないため、多くの場合は非効率です。
BuildingIQ は、通常動作時に HVAC のエネルギー消費量を 10 ~ 25% 削減するクラウドベースのソフトウェア プラットフォームである Predictive Energy Optimization™ (PEO) を開発しました。PEO は、オーストラリアの国立科学機関である連邦科学産業研究機構 (CSIRO) と共同で開発されました。その高度なアルゴリズムと機械学習手法は、MATLAB® に実装されており、短期的な天気予報やエネルギー コストの変化の兆候に基づいて HVAC の動作を継続的に最適化します。
「CSIRO は、MATLAB を使用して初期のテクノロジーを開発しました。当社では、MATLAB を使用し続けています。MATLAB は、アルゴリズムのプロトタイプ作成や高度な数学的計算の実行に利用できる最良のツールです」と BuildingIQ の主任データ サイエンティスト Borislav Savkovic 氏は述べています。「MATLAB によって、実世界のノイズや不確実性に確実に対処する運用レベルのアルゴリズムにプロトタイプ アルゴリズムを直接移行することができました。」
課題
BuildingIQ では、電力計、温度計、HVAC 圧力センサーなどのさまざまなソースからのデータ、さらには天候データやエネルギー コスト データなど、ギガバイト単位の情報を継続的に処理できるアルゴリズムを開発する必要がありました。1 つのビルで数十億ものデータ ポイントが生じることも多く、このデータを効率的にフィルター処理、加工、および可視化するツールがサイエンティストやエンジニアには必要でした。
また、最適化アルゴリズムを実行するためには、ビルの熱や電力のダイナミクスに対する正確な数学モデルを作成する必要もありました。アルゴリズムで、この計算モデルを使用して、エネルギー コストを最小限に抑えながら居住快適性を維持するという制約のある最適化を実行することになります。
BuildingIQ には、数学モデルの開発、最適化と機械学習手法のテスト、アルゴリズムのプロトタイプ作成、および運用 IT 環境へのそれらの展開を迅速に行う方法が必要でした。
ソリューション
BuildingIQ では、MATLAB を使用して、予測エネルギー最適化アルゴリズムの開発と展開を迅速化しました。
最適化のワークフローは MATLAB で開始され、BuildingIQ のエンジニアが数十億のデータ ポイントから成る 3 ~ 12 か月間の温度、圧力、および電力データをインポートして可視化します。また、Statistics and Machine Learning Toolbox™ を使用して、スパイクやギャップを検出し、Signal Processing Toolbox™ のフィルター処理機能を使用して、センサー障害や他のソースによって発生したノイズを除去します。BuildingIQ のエンジニアは、Optimization Toolbox™ の最小二乗適合機能を使用して、MATLAB で開発した数学モデルをノイズが除去されたデータに適応させました。この測定および検証 (M&V) モデルによって、周囲の温度および湿度が HVAC システムの消費電力と関連付られます。
モデル化プロセスの一環として、Statistics and Machine Learning Toolbox の SVM 回帰、混合ガウス モデル、および k 平均クラスタリング機械学習アルゴリズムを使用して、データを区分し、冷暖房プロセスに対するガス、電気、蒸気、および太陽光発電の相対的な寄与度を決定します。
チームは、各ゾーンの屋内温度およびビルの総消費電力量に対する HVAC システムと周囲条件の影響を表現する PEO モデルを MATLAB で構築します。また、Control System Toolbox™ を使用して、HVAC 制御システムの極と零点を解析して、全体の消費電力を推定し、各ゾーンがその指定値に収束するまでの時間を決定します。
BuildingIQ のエンジニアは、Optimization Toolbox と PEO モデルを使用して、多数のパラメーターおよび非線形コスト関数や制約を用いた多目的の最適化を実行し、リアルタイムでエネルギー効率を継続的に最適化します。これらの最適化では、次の 12 時間にわたる、予測される天候およびエネルギー価格を考慮し、最適な HVAC の指定値を特定します。運用中は、クラウド内の Java® ソフトウェアによって、1 日を通して定期的に MATLAB の最適化アルゴリズムが呼び出されます。
毎日、BuildingIQ は、BuildingIQ PEO プラットフォームがなかった場合にクライアントが HVAC エネルギーに対して支払うことになる費用を表す基準エネルギー コストを M&V モデルに基づいて計算します。節約は、10% ~ 25% になります。
結果
- ギガバイト単位のデータを解析して可視化. 「MATLAB によって、業務で扱う大規模なデータセットを簡単に処理して可視化できます」と Savkovic 氏は述べています。「散布図、2D グラフと 3D グラフなどを作成して、当社のシステムがどのように成果を上げているかを効果的に示すことができます。」
- アルゴリズムの開発速度が 10 倍高速化. 「MATLAB でアルゴリズムを開発すると、Java で開発するよりも 10 倍速くなり、信頼性も高くなります」と Savkovic 氏は述べています。「私たちは、データをフィルター処理し、極と零点を調べ、非線形最適化を実行し、さらにその他多数のタスクを実施する必要があります。MATLAB では、これらの機能はすべて統合されており、信頼性も高く、商業的に検証済みです。」
- 最良のアルゴリズム手法を迅速に特定. 「MATLAB により、新しい手法をすばやくテストして、当社のデータに最適な手法を見つけることができます」と Savkovic 氏は述べています。「たとえば、当社では、逐次二次計画法を選択する前に複数の最適化手法をテストし、複数のクラスタリング機械学習アルゴリズムを試しました。さまざまな方法をすばやく調査できることは非常に大きな利点です。」