4 つの油圧シリンダーのシミュレーション
この例では、Simulink® を使用して 4 つの油圧シリンダーをもつモデルを作成する方法を示します。同じ基本コンポーネントを使用する 2 つの関連する例、1 つのシリンダーのモデルおよび荷重制約をもつ 2 つのシリンダーのモデルを参照してください。
メモ: これは基本的な水力学の例です。Simscape™ Driveline™ と Simscape Fluids™ を使用して、水力学モデルや自動車のモデルをより簡単に作成できます。
Simscape Fluids は流体システムのモデル化とシミュレーションのためのコンポーネント ライブラリを提供します。これには、ポンプ、バルブ、アクチュエータ、パイプライン、熱交換器のモデルが含まれます。これらのコンポーネントを使用して、フロント ローダー、パワー ステアリング、着陸装置の作動システムといった流体電力システムを開発することができます。Simscape Fluids を使用すると、エンジン冷却システムおよび燃料供給システムも開発できます。Simscape 製品ファミリで利用可能なコンポーネントを使用して、機械システム、電気システム、熱システム、およびその他のシステムを統合することができます。
Simscape Driveline は 1 次元機械システムのモデル化とシミュレーションのためのコンポーネント ライブラリを提供します。これには、ウォーム ギア、遊星歯車、親ねじ、およびクラッチといった回転コンポーネントや並進コンポーネントのモデルが含まれます。これらのコンポーネントを使用すると、ヘリコプターのドライブトレイン、産業機械、車両のパワートレイン、およびその他のアプリケーションにおける機械入力の送信をモデル化できます。エンジン、タイヤ、トランスミッション、トルク コンバーターなどの車載コンポーネントも含まれます。
モデル化
図 1 は、モデルの最上位のブロック線図を示しています。このモデルには 1 つのポンプと 4 つのアクチュエータがあります。同じポンプ圧 (p1
) で各シリンダー アセンブリが駆動され、その流量の合計がポンプに負荷をかけます。4 つの制御バルブはそれぞれ個別に制御可能ですが、アクティブ サスペンション システムの場合がそうであるように、4 つすべての制御バルブが同じコマンド (オリフィス面積がゼロから 0.002 sq.m.
へと線形増加) を受信します。
モデルを開いてシミュレーションを実行
このモデルを開くには、MATLAB® 端末に「sldemo_hydcyl4
」と入力します (MATLAB ヘルプを使用している場合は、ハイパーリンクをクリックします)。モデル ツール バーの [再生] ボタンをクリックしてシミュレーションを実行します。
このモデルは、MATLAB ワークスペースの Simulink.SimulationOutput オブジェクト out
に関連データのログを作成します。信号のログ データは sldemo_hydcyl4_output
という構造体の out 内に格納されます。ログが作成された信号には青いインジケーターが付きます (モデルを参照)。詳細については、信号ログ データの表示およびアクセスを参照してください。
図 1: 4 つのシリンダーのモデルとシミュレーション結果
モデルの説明
ポンプ流量は 0.005 m3/sec
(1 つのシリンダーのモデルとちょうど同じ) から始まり、t=0.05 sec
で 0.0025 m3/sec
まで減少します。パラメーター C1
、C2
、Cd
、rho
、および V30
は、1 つのシリンダーのモデルと同じです。しかし、K
、A
、および beta
の個々の値を仮定することにより、4 つのシリンダーはそれぞれ異なる遷移応答を示します。以下の表は、4 つのアクチュエータの特性を示しています。
---------------------------------------------------------------- Parameter | Actuator1 Actuator2 Actuator3 Actuator4 ----------------|----------------------------------------------- Spring Constant | K K/4 4K K Piston Area | Ac Ac/4 4Ac Ac Bulk Modulus | Beta Beta Beta Beta/1000 ---------------------------------------------------------------- Beta = 7e8 Pa [fluid bulk modulus] K = 5e4 N/m [spring constant] Ac = 1e-3 m^2 [cylinder cross-sectional area]
面積とバネ定数の比はすべてのピストンで同じであるため、定常状態出力もすべて同じはずです。各アクチュエータ サブシステムの主要な時定数は、以下に比例します。
(これは次元解析から得られた結果です)。したがって、ピストン アセンブリ 2 はアセンブリ 1 よりも多少速いと予想できます。ピストン アセンブリ 3 は 1 または 2 よりも遅いと予想されます。ピストン アセンブリ 4 は体積弾性率 Beta がかなり低い (空気の場合と同様) ため、ピストン 4 はピストン 1 よりも反応が遅いと予想されます。
結果
図 2: 4 つのシリンダーの例でのピストン位置
図 3: ポンプ供給圧 p1
t=0
での最初の流入は、4 つのアクチュエータによって圧力のインパルスとして確認されます。ポンプ圧 (p1
) は最初こそ高いものの、4 つのシリンダーからの流量需要が大きいため、急速に低下します。初期の過渡特性には (4 msec
頃)、明らかに異なる応答によって各アセンブリ ユニットの個々の動的特性が識別されます。
パラメーター値で予測したとおり、アクチュエータ 2 はアクチュエータ 1 よりも速く反応します。これに比べて、3 番目と 4 番目のピストンは、同じ距離でより多くの作動流体を必要とするため、反応が大幅に遅れます。ケース 3 の場合、断面積が大きいため、ピストンが押しのける容積もより大きくなります。ケース 4 の場合、押しのけられる容積はケース 1 と同じですが、続けて圧縮されるため、より多くの流体を必要とします。
ポンプ圧がシリンダー内のレベルに下がると、動作の違いはわかりにくくなります。個々の応答がシステム全体の応答へと一体化され、コンポーネント間の流量バランスが保持されます。t=0.05 sec
で、ポンプ流量は平衡に近いレベルまで減少し、アクチュエータの流量は、ほぼゼロになります。個々の定常ピストン位置は、設計から予測したとおり、同じです。
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