高速設定値追従用の PID コントローラーの設計
この例では、PID 調整器を使用してプラント用コントローラーを設計する方法を説明します。
この閉ループ システムの設計要件では、立ち上がり時間 1.5 秒以下、整定時間 6 秒以下の基準入力を追跡します。
この例では、プラントを LTI モデルとして表します。Simulink® モデルの PID Controller ブロックの PID 調整器による調整の詳細については、設定値追従と外乱の抑制のいずれかを優先するための PID コントローラーの調整 (Simulink Control Design)を参照してください。
プラント モデルを作成して PID 調整器を開き、第 1 段階の設計のために PI コントローラーを設計します。
sys = zpk([],[-1 -1 -1],1); pidTuner(sys,'pi')
PID 調整器を起動すると、指定したタイプ (ここでは PI) のコントローラーが自動的に設計されます。コントローラーは、性能 (応答時間) とロバスト性 (安定余裕) との間のバランスを取るよう設計されます。PID 調整器は、システムの閉ループ ステップ応答を、設計されたコントローラーとともに表示します。
ヒント
MATLAB® デスクトップの [アプリ] タブから PID 調整器を開くこともできます。その場合、PID 調整器の [Plant] メニューを使用して、プラント モデルを指定します。
設定値追従の立ち上がり時間と整定時間を調べます。
プロットを右クリックし、
[特性]、[立ち上がり時間]
を選択して、立ち上がり時間をプロット上に青い点でマークします。[特性]、[整定時間]
を選択して、整定時間をマークします。ツールヒントの数値を見るため、各青い点をクリックします。初期 PI コントローラーの設計では、立ち上がり時間が 2.35 秒で整定時間が 10.7 秒となります。どちらの結果も設計要件より遅くなります。
メモ
プロット上のツールヒントの代わりにテーブルに性能のメトリクスを表示すには、[パラメーターの表示] をクリックします。この操作により、性能とロバスト性のメトリクスおよび調整されたコントローラー ゲインを含むディスプレイが表示されます。
[応答時間] スライダーを右にスライドして、応答時間のループ処理の性能を上げます。応答プロットは新しい設計で自動的に更新します。
1.5 秒未満という立ち上がり時間の要件を満たすまで [応答時間] スライダーを動かすと、振動が多くなります。また、パラメーター ディスプレイには新しい応答の整定時間が容認できないほど長いことが示されます。
より速い応答スピードを得るため、アルゴリズムは安定性を得ることができません。
コントローラーのタイプを変更して、応答を改善します。
コントローラーに微分動作を加えると、PID 調整器により多くの自由度が与えられ、希望する応答スピードをもつ適切な位相余裕が可能になります。
[タイプ] メニューで
PIDF
を選択します。PID 調整器は新しい PIDF コントローラーを設計します (利用可能なコントローラーのタイプに関する詳細は PID コントローラーのタイプ を参照してください)。ここで、立ち上がり時間と整定時間は、設計要件を満たします。[応答時間] スライダーを使って、応答に対するさらなる調整をすることができます。自動調整の結果を既定の設定に戻すには、[設計のリセット] をクリックします。
メモ
応答時間ではなく閉ループの帯域幅を調整するには、[領域] ドロップダウン リストから
[周波数]
を選択します。帯域幅は応答時間に対して反比例します。必要に応じて、その他のシステムの応答を解析します。
その他のシステムの応答を解析するには、[プロットの追加] をクリックします。解析するシステム応答を選択します。
たとえば、プラント入力で外乱に対する閉ループのステップ応答を観察するには、[プロットの追加] メニューの [ステップ] セクションで [
Input disturbance rejection
] を選択します。外乱の抑制応答が新しい図に表示されます。利用可能なコントローラーのタイプに関する詳細は PID 調整器での設計の解析 を参照してください。
ヒント
[表示] タブのオプションを使用して、PID 調整器で複数のプロットを表示する方法を変更します。
コントローラーの設計を MATLAB ワークスペースにエクスポートします。
コントローラーの最終的な設計を MATLAB ワークスペースにエクスポートするには、 [エクスポート] をクリックします。PID 調整器は、コントローラーを以下としてエクスポートします。
あるいは、[データ ブラウザー] で右クリック メニューを使用してモデルをエクスポートできます。これを行うには、[データ ブラウザー] タブをクリックします。
次にモデルを右クリックして、[エクスポート] を選択します。